暖かくなり、フィラリア予防の季節になってきました。
犬を飼ったことのある方にとっては当たり前のフィラリア予防ですが、もしかしたら誤った自己判断で愛犬を命の危険にさらしてしまっているかもしれません。
本記事ではフィラリアの基本的な知識と、フィラリアの正しい予防方法をお伝えします。
この記事の目次
フィラリア(犬糸状虫)とは
フィラリアは犬の肺動脈や右心系に寄生する寄生虫で、蚊によって媒介されます。一般的に、気温が15度を超えると蚊の吸血が始まると言われているので、春先頃に予防薬を投与し始める方も多いと思います。
フィラリアは心臓に寄生するため、感染が成立すると命に関わることも少なくありません。
治療にも時間を要するため、できる限り予防したい感染症の一つです。
フィラリアの体内での成長
蚊に刺されたときにフィラリアの子虫が犬の体内に侵入します。
体内に侵入したフィラリアの子虫は、犬の皮下織、筋肉、脂肪組織、漿膜下で2〜3ヵ月をかけて成長します。その後、静脈に入り、心臓に達します。
フィラリア薬ってどんな薬?
フィラリア薬が開発される数十年前までは、フィラリア感染症で亡くなる犬がたくさんいましたが、予防薬ができてからは犬の平均寿命が大幅に伸びました。
フィラリア薬を開発したのは日本の科学者である、大村智さん。2015年にノーベル生理学・医学賞を受賞したことは、ご存知の方も多いかもしれません。ノーベル賞を受賞するほどですから、フィラリア薬がどんなに大切かお分りいただけるでしょう。
フィラリア薬の効果
フィラリアは蚊によって媒介されますので、蚊に刺されないことこそが最大の予防となります。しかし、これは現実的に不可能です。
そこで、フィラリア薬を用いて、蚊に刺されてもフィラリアに感染しないようにすることが必要不可欠です。
ここで注意したいのは、予防薬はフィラリアから体をバリアするものではないということ。あくまでも1ヵ月に1回投与することで、犬の体内に侵入してしまったフィラリアの子虫を駆虫することが目的です。
フィラリア薬の投与の仕方
各製薬会社で様々なフィラリア予防薬が販売されていますが、フィラリア予防薬は「要指示医薬品」ですので、動物病院で処方してもらいます。
血液の中にフィラリアの幼虫がいる状態でフィラリア薬を投与すると、犬がショックを起こして死に至る危険性もあるので、必ず動物病院で血液検査を行ってから投与をしましょう。
フィラリア薬は基本的に錠剤タイプですが、錠剤を嫌がる場合はチーズなどに包んで与えてみましょう。
フィラリア薬の投与期間
フィラリア薬は、フィラリアの生活環の子虫と呼ばれる段階にしか効果がありません。フィラリアの子虫が血管内に入る前に駆除する必要があるため、1ヵ月ごとにフィラリア薬を投与し、フィラリアの侵入を定期的にリセットしなければいけません。
つまり、フィラリア薬は蚊が出現する時期に投与を開始し、蚊が出現しなくなってから1ヵ月後まで続ける必要があるということです。
この+1ヵ月を忘れてしまうと、蚊のいない冬の時期にフィラリアが成長し、心臓に感染してしまいます。
フィラリア予防のよくある間違い
フィラリア予防について、間違った自己判断は愛犬の命取りになります。決して自分で判断をせず、動物病院で獣医師とよく相談しましょう。
フィラリア予防について、よくある質問についてまとめました。
マンションの高層階に住んでいるから蚊には刺されない?
外出した人の衣服に付いてくる、エレベーターに乗ってくるなどによって、高層階であっても蚊がいることは多くあります。
散歩の際に蚊に刺されることもあるので、居住環境に関わらずフィラリアの予防は必須です。
動物病院で検査を受けなくてもフィラリア薬の投与を始めてよい?
前述した通り、フィラリア薬の投与前には、成虫の感染がないか予め血液検査をする必要があります。
心臓にフィラリアの感染が成立している場合、成虫から生まれたフィラリアの幼虫が血中に存在する可能性があります。
このときにフィラリア薬を投与すると、幼虫の急激な死滅によってアナフィラキシーを起こす場合があり、非常に危険です。
去年の薬が余っているからと、検査をせずに投薬を開始するのは止めましょう。
飲み忘れの期間があるけど、投薬を再開して大丈夫?
蚊によって体内に侵入したフィラリアの子虫は早ければ2か月ほどで血管内に移動します。
こうなるとフィラリア薬は効きにくくなってしまいます。
前回の投薬から間隔が空いている場合は獣医師の指示を仰ぎ、定期的に検査をしながら慎重に投薬する必要があります。
まとめ
今回は、犬のフィラリア感染症について詳しくお伝えしました。
フィラリア感染症は命に関わることもありますが、感染の経緯や薬の効果を知ることで、正しく予防できます。
フィラリア予防薬の投与は、かかりつけの獣医師によく相談し、指示に従いながら、大切な愛犬の命を守りましょう。