【獣医師監修】猫の避妊・去勢の4つのメリットと注意点

2024.04.23
【獣医師監修】猫の避妊・去勢の4つのメリットと注意点

新しく猫を飼うとき、健康管理を考える上で重要なのが避妊と去勢についてです。これらは全身麻酔が必要な処置であり、猫の負担を考えるとなかなか踏み切れないという飼い主さんも多いでしょう。

猫における避妊と去勢のメリット及びデメリットを正しく理解することが、猫の健康を管理する第一歩です。本記事では猫の避妊と去勢について解説していきます。

この記事の目次

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メリット① 望まない妊娠を回避できる

猫の避妊・去勢のメリットとデメリット
屋外に猫(特にメス猫)を出す習慣がある、多頭飼育でオスとメスが混合しているなどの場合、予期しない形で子猫を授かってしまうことがあります。

飼えなくなったという理由で動物保護センターに引き取られる猫の数は、年々減少しているとはいえまだ少ないとは言えません。不幸な事態にならないように予め避妊・去勢をしておくことが重要です。

猫の繁殖能力

猫の発情期は日照時間によって決まり、日が長くなる2〜4月にやってきます。

一方で、猫は交尾排卵動物であり、交尾をすればほぼ確実に妊娠します。これは発情期に限らず、条件(栄養状態、人工光の状態、子育て中でないなど)が揃えば一年中妊娠できるということです。これがヒトや犬と大きく異なる点の一つです。

猫の殺処分数

2018年度には全国で10,523頭の成猫と20,234頭の子猫が殺処分されました。これらの数字は、予期せぬ妊娠及び望まない妊娠の数を少なからず反映しています。また、増えすぎた地域猫の数も含まれるでしょう。

さくら猫

自治体や公益財団法人どうぶつ基金により、地域猫の避妊や去勢の助成金の申請が行える場合があります。

街中で耳に切れ込みの入った猫を見かけたことはありませんか?これらの猫を「さくら猫」といい、右耳に切れ込みのある猫は去勢済みのオス、左耳に切れ込みのある猫は避妊済みのメスであることを表しています。

飼い猫や地域猫の避妊・去勢の助成金についてはこちらをご覧ください。

さくら猫についての詳細はこちらの記事もご覧ください。

どうぶつ基金
https://www.doubutukikin.or.jp/

メリット② 発情期のストレスを軽減できる

猫の避妊・去勢のメリットとデメリット
発情期には過度な興奮や、人や物に体を擦りつけるなどの行動の変化が見られます。

発情期に交尾ができないことは、それ自体がストレスになる場合もあります。繁殖を考えていないのであれば、このような無用なストレスの原因は無くしておくのがいいでしょう。

メリット③ 発情期の行動を変えられる

猫の避妊・去勢のメリットとデメリット
猫の発情期には、飼い主を悩ませる行動がいくつかあります。

発情に伴う問題行動は避妊・去勢により抑制できますが、個体差もありますので、問題行動が無くならない場合もあることは知っておくべきでしょう。

大きな声で鳴くことを改善

発情したメス猫はオスを呼ぶために独特な大きな声で鳴きます。オス猫もまた、他のオスにこっちに来ないよう大きな声で鳴きます。

猫は夜行性なので特に夜に鳴くことが多くなり、一晩中鳴いていることもあります。これは生理的な行動なので、手術をしない限り、叱ってもしつけても直ることはありません。

また、精神安定薬やマタタビを使用することもありますが、猫の健康を考えるとオススメしません。特にマタタビは過剰に与えると呼吸困難に陥ることがあるため注意しましょう。

不適切な排尿改善

マーキングのためにトイレ以外の場所で排尿することを減らせます。

特にオス猫は縄張主張のため、尿を後ろに撒き散らす「スプレー」と呼ばれる行動を取ります。ニオイもキツく、飼い主にとっては頭を悩ませる行動の一つですので、手術による改善が期待されます。

放浪癖の改善

外にいる他の猫につられて外出することが減ります。

オス猫の場合は攻撃性も減少することがあるので、外に出たとしてもケンカの回数を抑えられるでしょう。

メリット④ 生殖器系の病気の予防できる

猫の避妊・去勢のメリットとデメリット
猫の健康を考える上で、病気の予防は欠かせません。どんな病気を予防できるのか、見ていきましょう。

避妊によって予防できる病気

性ホルモンが影響しているとされている乳腺腫瘍の発生を抑制できます。

また、手術によって卵巣や子宮を摘出するため、メス特有の病気である卵巣疾患や子宮疾患の確実な予防が可能です。

去勢によって予防できる病気

精巣摘出によって、精巣腫瘍などの精巣疾患の予防が可能です。

また、性ホルモンによる前立腺疾患の発生率を下げることができます。

避妊/去勢手術の推奨時期は?

猫の避妊・去勢のメリットとデメリット
性成熟を迎えるのが、オスで生後約6〜10ヵ月、メスで生後約6〜12ヵ月とされています。よって手術はオスで生後6〜10ヵ月程度、メスで生後6〜8ヵ月程度が望ましいでしょう。

成長には個体差があるので、体重の増加具合などを見ながら、かかりつけの獣医師と相談しましょう。

避妊/去勢の手術について

手術は全身麻酔が必須です。健康な個体でしたら麻酔のリスクは少ないですが、それでも事故が起きる可能性があることは理解しておきましょう。

避妊手術に関しては、動物病院によっては腹腔鏡での手術が可能です。傷口が小さくなるメリットがあるので検討してみてはいかがでしょうか。また、マイクロチップを挿入するなら、麻酔をかけるこの機会に同時に行うことをオススメします。

マイクロチップに関する記事はこちらの記事をご覧ください。

避妊/去勢手術後の注意点

猫の避妊・去勢のメリットとデメリット
手術の後にはいくつか注意すべきことがあります。生活習慣の変更もあるので、手術前にしっかり確認しておきましょう。

肥満になりやすくなる

発情にかかるエネルギーが無くなり、代謝が落ちるために太りやすくなります。肥満は糖尿病を始めとする多くの疾患のリスク因子です。

また猫の場合、高い所に飛び上がれなくなるなど、運動量の低下によって肥満が助長されるといったループに陥る可能性があります。

手術をした後は、カロリーを抑えた避妊・去勢後用のフードに変更しましょう。

尿石症のリスクが上がる

腎臓や膀胱内で結石が形成され、泌尿器症状を呈するものを尿石症といいます。

特にオス猫では形成された結石が尿道に閉塞する可能性が高いです。さらに避妊・去勢によって内臓脂肪が付きやすい体質になっていると、脂肪で尿道が圧迫されて狭くなり、尿道閉塞のリスクがより高くなります。

避妊・去勢後用のフードには結石ができにくくなる成分が入っているため、肥満防止と同様にフードを変更しましょう。

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まとめ

猫の避妊・去勢のメリットとデメリット
避妊・去勢手術にはメリットが多くありますが、一方で注意しなければならない点もあり、そう簡単に決められるものではありません。

手術をすることによる負担はもちろんありますが、手術をしないことでかかりやすくなる病気もあり、どちらを選択するかは最終的に飼い主が決めることになります。

しかし、野放図に猫が繁殖している今の状況には、問題を感じてほしいところではあります。もし、あなたの愛猫が妊娠・出産をしたとしたら、責任をもって新しく生まれた命の全てを守りきれますか?

愛する猫にとって何が最善なのか、家族とよく検討してみてください。

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