今年の冬、筆者が飼っている10歳のダックスフンドが、椎間板ヘルニアになってしまいました。
初めは「すぐに手術」と言われ、大きな動物病院を紹介してもらったのですが、色々なことを検討する中で、手術をやめて「鍼灸治療」に切り替えました。
今回の記事では、発症をしてからの経過や、治療方法を切り替えた経緯、実際に鍼灸治療を行った結果など、筆者の実体験をご紹介します。進行が進んでしまった椎間板ヘルニアの治療は手術だけではないことを、犬の飼い主のみなさんに知っていただければ幸いです。
この記事の目次
発症〜椎間板ヘルニアと診断されるまで
発症日
朝からぐったりし、元気がない。排便の回数が少なく、排便の態勢をとってもなかなか出せないことから、初めは便秘を疑う。
今考えると、この時排便ができなかったのは、後ろ足が痛くて踏ん張ることができなかったためだと考えられる。
発症後1日目
歩いたときに後ろ足がもたつく様子が見られるようになり、だんだんと両足を引きずり出し、夕方には完全に歩けなくなる。椎間板ヘルニアを確信するも、かかりつけの動物病院が休業日だったため、受診は明朝に見送る。
2日目
午前、病院にて椎間板ヘルニア・ステージ3と診断。
進行が早く、進行性脊髄軟化症を発症してしまうと危険なため、早く手術をした方が良いと言われる。2日後に大きな動物病院での手術前検査を予約してもらう。下半身の麻痺により排尿障害があったので、動物病院でカテーテルを使って出してもらう。足の皮膚をつねっても、全く反応を示さず、すぐにステージ4に進行。排便は自分でできて食欲はあるものの、嘔吐してしまい、ぐったりした様子。
手術をやめ、鍼灸治療に切り替える
獣医師さんに「すぐに手術した方がいい」と言われたものの、10歳のシニア犬ということもあり、遠くの病院まで慣れない電車で通い、全身麻酔で手術を受けさせることには少し抵抗がありました。
手術前検査を翌日に控える中で色々と調べるうちに、「鍼灸治療」という方法に出会います。たまたま家の近くに、鍼灸治療をやっている動物病院があったので、夕方に急いで行ってみました。
情報量も少なく、手術をやめて治療を切り替えることには非常に迷いがありました。しかし、鍼灸医の先生には「椎間板ヘルニアにかかって、鍼で歩けるようにならなかった犬はいない」と言われたため、その言葉に賭けてみることに。
3日目
鍼灸治療に切り替えることを決意し、翌日の手術前検査はキャンセルした。
早速、夜7時ごろに鍼灸治療をしてもらう。するとなんと、夜中の2時頃、トイレにて自力でおしっこを出せるようになった。
感覚麻痺、排尿障害が徐々に回復
おしっこが自分で出せないというのは、犬にとってもストレスですし、飼い主としても非常に心配なので、2度の鍼灸治療で排尿障害が早期に回復したことは非常によかったと思います。
4〜5日目
立つことはできないが、この日も座ったままなら少しずつ自分でおしっこを出せる。ただし、量が少ないため、自宅で1日1回カテーテルで排尿。
6日目
何度か足を引きずりながら自分で少し移動してしまう。感覚を取り戻しつつあるのだろうが、「絶対安静」と言われているので、動かないよう常に見張っていることに。
7日目
2度目の鍼灸治療へ。おしっこを大量に出せるようになり、カテーテルは全く必要なくなった。
週1ペースで鍼灸治療を続ける
その後は約1ヶ月ほど、週に1回のペースで鍼灸治療をしに動物病院に通いました。
少しずつ下半身の感覚を取り戻してきて、歩きたい気持ちになって来るようでしたが、1ヶ月間は「絶対安静」と言われ、なるべくベッドから一歩も出さないようにします。
「バギーに乗せて外に連れて行くくらいは大丈夫かな?」と思いましたが、それもNGでした。とにかく動かさないこと。これが大切です。
犬のストレス解消のために・・・
犬にとっては、感覚が戻ってきているのに歩けない、歩いてはいけないことで、ストレスが溜まってくる。
とは言え、おもちゃで遊んであげることもできないので、おやつを入れたコングを手で持って、体が動かないように注意しながら与えたりした。
リハビリ開始!
鍼灸治療を始めてから1ヶ月が経つと、獣医師さんからは「そろそろリハビリを始めましょう」と言われました。
絶対安静の期間は本当に動けませんが、リハビリが始まると、本人が歩きたいだけ歩かせて良いことに。
通院の間隔が開き、自宅でお灸も
回復して来ると、週1回だった通院のペースは、2週間、1ヶ月に1回に短縮。
代わりに、自宅で簡単なお灸ができるようレクチャーしてもらう(上画像)。
少しずつお散歩もできるように
お散歩は、アスファルトの上などは抱っこやバギーで通るが、ウッドチップが敷き詰めてある柔らかめの道では、少しずつゆっくりと歩かせて行く。
おやつを使って足を跨がせるリハビリ
しっかりと後ろ足を使って歩く練習をするため、おやつを使って飼い主の足を跨がせるリハビリも開始。完全に後ろ足まで跨ぎきってから、おやつを少しずつ与える。
治療開始から約2ヶ月、走れるように!
鍼灸治療を開始してから2ヶ月が経つと、若干もたつきながらも、走り回れるまでに回復しました。
感覚麻痺になるまで進行していた椎間板ヘルニアが鍼灸だけでここまで回復するとは、正直信じがたい気持ちでしたが、犬も非常に嬉しそうに動き回っており、散歩も以前と同じようにできるようになったのです。
その後
椎間板ヘルニアを発症をしてから7ヶ月が経ちましたが、その後も月に1度の通院を続けており、再び歩けなくなるようなことは今のところ一度もありません。
はしゃぎすぎて足を滑らせてしまった時に、若干足がもたつく様子がみられましたが、通院の間隔を一時的に短くしてもらうと、またすぐにちゃんと歩けるようになりました。
実際に経験して感じた鍼灸治療の特徴
1. 犬の体への負担が小さい
特に高齢犬や持病のある犬の場合、手術そのものが難しいことも多いため、手術を諦めてしまう飼い主さんも少なくありません。
その点、切らずに治療でき、麻酔の必要がない鍼灸治療は、犬の体への負担が小さいのが最大の特徴です。
2. 一度にかかる費用が安い
椎間板ヘルニアの手術をした場合、重症度にもよりますが、検査費用や入院費用も含めて30万円以上かかることも珍しくありません。
一方の鍼灸治療は、こちらも場合によりますが、筆者の犬では、1回目の治療が初診料含めて1万円以内におさまりました。
ただし、手術に比べて鍼灸治療の場合は、一度ですぐに治るわけではありません。走れるようになるまでの約2ヶ月の間に7〜8回程度通院し、飲み薬代や家で使うお灸代なども含め、なんだかんだで10万円程度かかったと思います。
3. 通い続けることで、予防になる
椎間板ヘルニアは、手術をしても再発する可能性があります。
鍼灸治療でももちろん再発の可能性はありますが、月1回程度の通院を続けることで、再発の予防効果があります。
月1回の通院と、漢方薬を飲み続けることにより、確かに出費はかさみますし、時間もとられます。しかし、手術をした場合でもサプリメントを飲み続ける犬は多いですし、再発してまた手術をすることを考えれば、長期的に見ても鍼灸治療のメリットはあると言えるでしょう。
まとめ
今回は、椎間板ヘルニアの手術をやめて鍼灸治療に切り替え、走れるまでに回復した筆者の犬の実体験をご紹介しました。
もちろん、手術にも鍼灸治療にも、それぞれにメリットとデメリットがあり、どちらの方が優れているとは言えません。
しかし、ペットの鍼灸治療についてはまだあまり認知されておらず、まして下半身が一度麻痺した犬が、鍼灸治療だけで走れるようになるなど、知らなければ思ってもみないことでしょう。
今回の記事を通して、ペットにおける椎間板ヘルニアの治療方法のひとつとして、鍼灸治療があることを知っていただき、治療の選択肢を広げていただければ幸いです。