ピットブルという犬種の名をここ最近耳にされた方も多いのではないでしょうか。千葉県の一般家庭で飼われていたピットブルが脱走したことで、知名度が上がったこの犬種。
闘犬として知られており、警戒を促すためにニュースでとりあげられていましたが、実際のピットブルにはどのような特徴があるのでしょうか。また、闘犬として知られるピットブルを一般家庭で飼うことが現実的なのかご紹介します。
注意
本稿で取り上げる画像の一部で、スパイクチョークチェーンが用いられている場合がありますが、その他のチョークチェーンを含め、これらの使用は推奨しません。
チョークチェーンは取り扱いが非常に難しく、犬自身を怪我させてしまうこともある危険な首輪です。万一、ご使用になられる際は、これらに精通したプロの指導のもと、適切な訓練を受けた上で利用するようにしましょう。
この記事の目次
ピットブルという犬種は存在しない?
様々な考え方がありますが、ピットブルという犬種は実際には存在せず、筋肉質で体や頭が大きいなどの身体的特徴を持つ犬の総称として用いられています。
ピットブルで表されることが多い犬種はこちらです。
- アメリカン・ピット・ブル・テリア
- アメリカン・スタッフォードシャー・テリア
- スタッフォードシャー・ブル・テリア
この中でも特にアメリカン・ピット・ブル・テリアのことをピットブルと呼ぶことが多く、今回の記事ではこのアメリカン・ピット・ブル・テリアについて詳しく紹介していきます。
アメリカン・ピット・ブル・テリアの歴史
アメリカン・ピット・ブル・テリアは名前の通り、アメリカで誕生しました。イギリスのスタッフォードシャー・ブル・テリアと、現在は絶滅している闘犬用のブルドッグなどとの交配により、闘犬として生み出されたのが始まりです。
比較的メジャーな犬種ではありますが、2022年4月現在、アメリカンケンネルクラブおよびジャパンケンネルクラブでは犬種として公認されていません。
ピットブルの3つのタイプと外見的特徴
ピットブルの中にも、体型や性格の傾向が異なる3タイプが存在します。
- ショータイプ:ドッグショーに出場することを目的とし、骨格・毛色・毛並み・毛量・性格・歩き方など、犬種の特性がしっかりと出るように交配される
- ブリータイプ:家庭犬タイプともいわれ、家庭で飼育しやすいように、闘犬としての攻撃性を取り除き、温和な性格の個体同士で交配される。アメリカンブリーという犬種としても知られている
- 闘犬タイプ:闘犬として攻撃性の高い個体同士で交配される(現在では闘犬は広い地域で禁止されている)
3タイプで体重や体高に違いはありますが、いずれも中型犬に分類されます。平均サイズは体高は約41~56cm、体重は約14~36kgです。筋肉質で引き締まった体が特徴的です。
ピットブルの性格
ピットブルは、飼い主への忠誠心、服従心、指示を聞きそれに対応する力に優れています。また、前述のタイプによっては温和で愛情深い性格を持った子たちも多い傾向があります。
ただし、基本的には闘犬として生まれた犬種です。攻撃性は闘犬として生み出された時よりは減ってきているとされていますが、本来は攻撃性を持った犬種であることを絶対に忘れてはいけません。
知らない人や犬を見て強く興奮をしたり、何かの外的要因で攻撃性が現れることも十分に考えられます。
一般家庭で飼うことは可能か
可能といえば可能です。ですが、安易に見た目的なカッコよさなどから気軽な気持ちで飼おうとするのは絶対にオススメしません。
すべての犬に共通して言えることではありますが、犬も動物です。いくら飼い主が注意をしていても、何をきっかけに攻撃性が出てくるかわかりません。
もともと闘犬であったピットブルの噛む力はとても強く、人も大怪我をする可能性が十分にあります。また、運動量も非常に多く、毎日の散歩やエネルギーの発散は重要になります。
その他にも、しっかりとピットブルの特性を理解した上での飼育が非常に重要です。ブリーダーから迎える場合は親犬の性格などを見てから考えるのも良いかもしれません。
飼育する上での5つの注意点
もしピットブルをお迎えすることになった場合、注意いただきたいことを紹介します。
①トレーニングは子犬の時期から必ず
トレーニングを何もせずに成長をした場合には、大きな事故やケガに繋がりやすくなります。本来は飼い主の指示を聞いて対応することが得意な犬種ですので、プロのトレーナーの力も借りながら、適切なトレーニングを子犬の時期から行いましょう。
また、多くの状況や人、物などに慣れておくことも非常に大切です。先日脱走してしまったピットブルは動物病院が恐くて逃げたという報道もありました。
すべての犬に言えることですが、多くのことに慣れておくことで、愛犬にかかるストレスを減らし、人から見たときに問題行動とされる行動が出にくくなります。
②エネルギーの発散は毎日必ず
体力も非常にあります。しっかりとエネルギーの発散ができていないと、ストレスがたまり噛みや吠えといった行動が出やすくなります。個体差もありますが1回のお散歩で2時間程、それを1日2回は行ってあげたいところです。
さらには、室内でも飼い主とのおもちゃ遊びやおやつ探しなど、エネルギー発散の機会を作ってあげることも大切です。
③他の犬に要注意
他の犬を見ると興奮しやすい傾向がある子が多いです。
興奮せずに落ち着いていられるトレーニングも非常に大切ですが、愛犬が他の犬の方へ行きたがる様子があっても安易に近づけないようにしましょう。相手の犬の反応や愛犬の性格によっては、事故につながる可能性もあります。
他の犬と仲良くなることを目指すよりも、どんな犬がいても気にせずに通り過ぎることができる力を身に付けることをオススメします。
④小さいお子さんに要注意
小さいお子さんの予想できない動きや叫び声などは、犬が攻撃的な行動に出るきっかけになりやすいです。
特に、愛犬のピットブルが小さいお子さんに慣れていない場合は細心の注意が必要です。「赤ちゃんの時から見ているから大丈夫」や「いつも仲良しだから大丈夫」といった驕りから悲劇的な事故が起きる可能性も十分にあり得ます。
実際にアメリカで一緒に暮らしていた4歳の子供が、突然ピットブルに襲われて命を落とすというショッキングな事故も比較的最近起きています。小さいお子さんと同じ空間で過ごすときは、飼い主が必ず側にいて、安全管理をする必要があります。
⑤何がおきても飼い主の責任
元々持った攻撃性から、ピットブルと検索するとネガティブな事件の記事なども多く見られます。ピットブルからすれば本能として行動した結果であり、事故が起きる原因は事故を防げなかった飼い主にあると言っていいでしょう。
事故が起きないように、愛犬の性格や得意・不得意をしっかり把握し、対処できる力を身に付け、迎えたその日から最期まで、愛犬も人も安全で安心して過ごせる努力を他の犬種以上にする必要があります。
そこまで頑張ることはできない、また、その自信がないと思うのであれば、ピットブルを飼うことは諦めた方がお互いに幸せな生活が送れることでしょう。
まとめ
ピットブルの恐さを少々強調した記事になってしまいましたが、しっかりとトレーニングをし、愛犬に適した飼育環境を作ってあげれば、家庭犬としての魅力も十分にあります。
もちろん迎えるには慎重な検討が必要ですが、人懐こく、がっしりした体で、「なでて~」とアピール姿は、その見た目とのギャップも相まって、とても愛おしい気持ちになります。
恐がられやすいピットブルですが、かわいい一面もちゃんとあることを最後にお伝えしておきます。