愛犬の眼がいつもより開いてなかったり、ショボショボしてると感じたことはありますか?そのような様子が見られたら、場合によっては失明につながることもありますので、少しでも愛犬の眼に違和感があったらすぐに動物病院へ相談するようにしましょう。
今回は犬の羞明を引き起こす疾患について解説します。
この記事の目次
羞明とは?
「羞明(しゅうめい)」とは、痛みなどによって眼が開けられない、眼がショボショボしているような状態を指します。電球などの明るいものを見た時のように、眩しそうに眼を細める表情が見られます。
明らかに見た目で異常がわかるため、発見したときに心配になる方も多いかもしれません。また、羞明以外にも、眼瞼痙攣や縮瞳(しゅくどう:瞳孔が収縮した状態)も同時に見られることも多いです。これらはいずれも眼痛を示す所見でもあります。
犬の羞明で考えられる疾患
眼瞼炎(がんけんえん)
【症状】
眼瞼結膜の充血や浮腫、眼の不快感。過剰な流涙や眼を擦ることによる角膜損傷所見として羞明や眼瞼痙攣が見られることもある。
【原因】
アレルギーや感染(細菌、真菌、寄生虫)による眼瞼皮膚疾患、外傷、腫瘍、免疫介在性など。
【備考】
真菌、寄生虫、免疫介在性によるものでは他部位の皮膚(四肢や顔面など)にも症状が現れていることが多い。
麦粒腫(ばくりゅうしゅ)
【症状】
眼瞼皮膚表面の腫脹、眼瞼縁の紅斑、膿性眼脂、結膜充血、羞明、眼瞼痙攣など。
【原因】
ツァイス腺やマイボーム腺など、眼瞼縁に存在する脂肪を分泌する組織の化膿性炎症による。多くは黄色ブドウ球菌が原因となる。
【備考】
いわゆる「ものもらい」のことで、数週間以上にわたり病態が継続することもある。
乾性角結膜炎
【症状】
膿性眼脂、眼瞼痙攣、羞明、結膜充血、結膜浮腫など。
【原因】
涙液水成分が不足することによる。涙液分泌を抑制する因子として感染症(ジステンパーウイルス)、慢性眼瞼結膜炎、先天性(ヨークシャー・テリア、チワワなど)、免疫介在性(アメリカン・コッカー・スパニエル、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル、パグ、シーズーなど)、外傷、甲状腺機能低下症、糖尿病などが挙げられる。
【備考】
犬で多いのは免疫介在性で、好発犬種は注意が必要。
結膜炎
【症状】
結膜充血、結膜浮腫、眼脂、流涙、羞明など。
【原因】
原発性として感染性、アレルギー性、濾胞性(慢性的抗原刺激による)、免疫介在性、外傷性、寄生虫性などが挙げられる。また他の眼疾患から波及することもある。
【備考】
原因は多岐にわたるため、適切な診断によって適切な治療を選択する必要がある。
表在性点状角膜炎
【症状】
流涙、羞明、眼瞼痙攣など。
【原因】
明確な病因はわかっていないが免役介在性疾患、もしくはジストロフィー(栄養障害、発育不良の意味)の一種と考えられている。
【備考】
ミニチュア・ダックスフント、シェットランド・シープドッグに多く、日本ではパピヨンに多い傾向にある。
角膜潰瘍
【症状】
結膜充血、流涙、羞明、角膜浮腫など。
【原因】
外傷、慢性的な角膜への物理的刺激(睫毛異常、眼瞼内反、眼瞼外反など)による。パグやチワワなどの眼が大きい犬種が、「散歩中に草むらに顔を突っ込んだ後から様子がおかしい」という主訴での来院も多く見られる。
【備考】
潰瘍の深さによって分類されるが、それぞれで治療の方法や予後が異なる。また細菌の二次感染を防ぐためにも、傷が浅いうちに治療する必要がある。
前部ぶどう膜炎
【症状】
羞明、眼瞼痙攣、流涙、結膜充血、角膜浮腫、縮瞳など。
【原因】
半数は原因不明だが、半数は感染症(子宮蓄膿症など)、腫瘍(リンパ腫、悪性黒色腫など)、代謝性(糖尿病、高血圧、高脂血症)、免疫介在性(水晶体起因性ぶどう膜炎、ぶどう膜皮膚症候群)、外傷、角膜潰瘍などが原因となる。
【備考】
眼だけでなく、全身疾患の一症状としてぶどう膜炎が見られることもあるため、注意が必要。特に子宮蓄膿症やリンパ腫などの疾患は生命予後に関わる。
緑内障
【症状】
眼圧上昇に伴う眼瞼痙攣、羞明、角膜浮腫、結膜充血、視覚障害など。また急激に眼圧が上昇する時には食欲不振や元気消失が見られることもある。
【原因】
原発性(眼圧上昇を引き起こすような先行疾患がないもの)は遺伝性が報告されている。続発性では水晶体疾患(水晶体脱臼、白内障)、ぶどう膜炎、眼内腫瘍、網膜剥離などが原因疾患となる。
【備考】
眼圧の上昇は視神経障害を引き起こし、一度失明すると視覚は回復しない。好発犬種は柴、アメリカン・コッカー・スパニエル、シーズー、ビーグルなどで、これらの犬種は定期的に眼圧測定を行うと早期発見に繋がる。
まとめ
眼の違和感は、生活する上で非常に邪魔なものです。ヒトでも実際、眼にゴミが入ると痛くて他のことは考えられなくなりますよね。愛犬に羞明の症状が見られた場合はすぐに原因を取り除く、あるいは症状を緩和させてあげる必要があります。
また、羞明以外にも眼脂や充血などの他の眼症状、あるいは食欲低下などの全身症状がないかもしっかりチェックしておくと診察がスムーズかもしれません。気になることがあれば気軽に動物病院まで相談してくださいね。