国歌や国旗のように法律で定められているものではありませんが、日本の国花は「桜」と「菊」、国鳥は「キジ」とされていることをご存じの方も多いのではないでしょうか。同じように、世界や日本には国犬(くにいぬ)が存在します。
今回は、日本と世界の国犬とその国のペット事情を紹介していきます。
この記事の目次
動物福祉先進国の「イギリス」
犬との関わりや歴史が深く、多くの犬種が生まれたイギリスは、世界で最も原産国犬を輩出している国です。
ヨーロッパは他の国・地域と比べて、アニマルウェルフェア(動物福祉)への意識が高いと言われていますが、中でもイギリスでは、アニマルウェルフェア関連の法整備が進んでおり、動物愛護団体の活動も活発で、アニマルウェルフェア先進国とされています。
国犬は「ブルドッグ」
イギリス王室でも愛された「ウェルシュ・コーギー・ペンブローク」は、エリザベス女王が長年愛した犬種であり、「ロイヤルドッグ」とも呼ばれ、イギリスの代表的な犬種の一つです。
しかし、イギリスの国犬が「ブルドッグ」であることは、あまり知られていないかもしれません。ブルドッグは、「勇気」「不屈」「忍耐」の象徴として、イギリス海軍のマスコットにもなっています。
ペットを飼う人が多い「フランス」
フランスは2020年に行われた世論調査によると、何らかの動物を飼っている家庭が50.5%にものぼり、「ペット大国」と呼ばれています。
2022年の時点では犬が約800万頭、猫が約1400万頭飼育されていて、猫の飼育頭数の方が多い国ではありますが、他のヨーロッパ諸国と同様に、犬との結びつきや歴史が深い国でもあります。
国犬は「プードル」
世界的に人気が沸騰している「フレンチ・ブルドッグ」もフランス原産ですが、フランスの国犬は日本でも大人気の「プードル」です。美しく優雅な容姿がフランスのイメージとぴったり合うのではないでしょうか。
愛らしい見た目に反して元々は猟犬で、フランス語でプードルを表す「caniche(カニッシュ)」は「カモを獲る犬」という意味の言葉が由来となっています。
動物に関する法律が厳しい「スイス」
スイスは世界で最も厳しい動物保護法を設けている国の一つで、憲法レベルで動物の尊厳を定めている動物福祉先進国です。
犬のしつけにも非常に熱心な国で、以前は法律で犬のしつけが義務化されていましたが、「義務化しなくても飼い主が自主的にドッグスクールに通う」という理由から撤廃された経緯があります。
国犬は「セント・バーナード」
そんなスイスの国犬は「セント・バーナード」です。セント・バーナードはアルプス山中で遭難救助犬として活躍してきた歴史があります。
同じスイス原産の犬にはよく似た容姿の「バーニーズ・マウンテン・ドッグ」がいます。どちらも大型犬ですが、性格は比較的穏やかで優しい傾向があります。
動物保護施設が充実している「ドイツ」
ドイツは動物福祉先進国の一つで、「ティアハイム」と呼ばれる動物保護施設が国内に多数存在しており、犬の飼い主には「犬税」を課して飼い主の責任の自覚を持たせるなど、動物と真剣に向き合う姿勢が印象的です。
犬のしつけにも熱心で、「犬と子供はドイツ人に育てさせろ」という言葉があるほどです。
国犬は「グレート・デーン」
ドイツというと警察犬などで活躍している「ジャーマン・シェパード・ドッグ」のイメージが強いかもしれませんが、国犬は超大型犬の「グレート・デーン」です。巨体ながら穏やかな性格で、「優しい巨人」とも称されています。
猫好きが多い国「ロシア」
世界的に見るとペットを飼育している人の中では犬の飼育率がもっとも高くなりますが、ロシアでは犬を飼っている人は34.7%なのに対し、猫を飼っている人は61.3%を占めています。
ロシア人が猫好きな理由には、「戦時中に猫達がネズミを駆除し、伝染病からロシアの人々の命を守ったという歴史的背景から、猫が大切にされている」という説や「寒冷な気候のため犬の散歩に出るのが難しい」という説があります。
国犬は「ボルゾイ」
ロシアの国犬は、ロシア帝国時代に王侯貴族が飼育する高級な犬であった「ボルゾイ」です。
視覚を頼りに狩りをする「サイトハウンド」と呼ばれる種類の狩猟犬で、走るスピードも非常に早く、時速50kmを超えることもあります。
ペットを飼う人が少ない「日本」
東アジアは世界各国と比較すると、ペットの飼育率が低い地域です。その中でも韓国、香港、日本の3カ国は特に低いとされています。
日本ではペットを飼っていない人が71.7%を占め、飼育率が一番高い犬でも12.8%しか飼育されていません。その背景には、共働き世帯の増加や住宅事情が影響していると考えられています。
国犬は「狆(ちん)」
日本原産の犬の中で飼育頭数が圧倒的に多いのが「柴犬」ですが、国犬は「狆」です。犬公方と呼ばれた徳川綱吉の頃には、江戸城内で飼われていました。
また、皇族や高級武士、資産家の商家などの富裕層に寵愛されていた歴史があります。
まとめ
国犬とは、政府などによって公式に認められたものと、そうでない非公式なものがあり、どんな理由で国犬とされるようになったのか、具体的な情報は残っていない場合があります。日本の国犬とご紹介した「狆」も非公式かつ仮公認のもので、国犬は「秋田犬」とされることもあります。
また、国犬はその国を代表する犬が多いですが、必ずしも飼育頭数が多い犬種とは限りません。むしろ、歴史的な結びつきに関連する場合が多く、その国の文化や歴史を反映する意味合いがあることも興味深いところです。
世界の国犬を知り、その観点から国の歴史や文化を考えると、その国の新たな一面が見えてくるかもしれません。