皆さんは牧場で活躍する「ハーディング・ドッグ」という犬たちについてご存じでしょうか。彼らは非常に高い知能と優れた運動能力を備えており、難しい作業をこなし、畜産業の現場で重要な役割を果たしています。
今回は、ハーディング・ドッグの仕事内容や、様々なハーディング・ドッグの中から代表的な6犬種をご紹介いたします。
この記事の目次
「ハーディング・ドッグ」ってどんな犬?
ハーディング・ドッグとは、主に牧場で羊や牛などの家畜を特定の場所に移動させる役割を果たす犬のことを指します。彼らは飼い主の指示に従って群れを方向転換させたり、群れからはみ出た家畜を群れに戻したりと、高度な作業をこなしています。
※実際に羊を移動させる様子は、こちらの動画をご覧下さい。
牧場で活躍する犬には、「ガーディング・ドッグ」と呼ばれる犬もいます。ガーディング・ドッグはオオカミやコヨーテなどの外敵から家畜を守る役割を担っています。ハーディング・ドッグが機敏に動く小型~中型犬が多い一方で、ガーディング・ドッグは体の大きい大型犬が活躍しています。
ちなみに、牧場で働く犬には「牧羊犬」と「牧畜犬」がいます。両者は一般的に、対象とする家畜の種類によって区別されます。牧羊犬は羊を対象にするのに対し、牧畜犬は羊以外の家畜を対象に作業する犬を指します。
知能が高く運動神経抜群な「ボーダー・コリー」
牧羊犬と言えば、最初に思い浮かぶのはおそらくボーダー・コリーでしょう。
この犬種は非常に賢く、優れた身体能力を持つことで知られています。名前の「ボーダー」は国境を意味し、イギリスのイングランドとスコットランドの国境付近で活躍したことが由来となっています。
体高は約53cm前後で、体重は14~22kgほどのやや大きめの中型犬です。見知らぬ人や他の犬にはあまり興味を示しませんが、家族に対しては非常に愛情深く、鋭い観察眼を持っており、人間との協力作業を好む傾向があります。
短い足でも活発に動く「ウェルシュ・コーギー・ペンブローク」
ウェルシュ・コーギーには、「ペンブローク」と「カーディガン」という2つの種類があります。日本でよく見かけるのは、カーディガンより一回り小さい「ペンブローク」です。
イギリスのウェールズ原産とされるこの犬種は、主に牛、羊、ポニーなどを追いかけて移動させる牧畜犬として活躍していました。この際、家畜のかかとを咬んで誘導していたため、体高が高い個体では家畜に後ろ足で蹴られる可能性がありました。そのため、脚の短い個体を選んで繁殖させたことで、現在のような胴長短足の体型になったとされています。
美しくエレガントな「ラフ・コリー」
一般的に「コリー」といえば、このラフ・コリーを指します。『名犬ラッシー』という映画やテレビ番組で人気を博したことでも知られる、イギリスのスコットランド北部原産の牧羊犬です。
ラフ・コリーと外見が似ている犬種としては、短毛の「スムース・コリー」や、より小型の「シェットランド・シープドッグ」などがいて、どちらもラフ・コリーと同じくハーディング・ドッグです。
体高は56~61cmで、体重は22~30kgの大型犬ですが、賢く穏やかな性格を持っており、しつけにはあまり苦労しないとされています。一方で、真っすぐな長毛のダブルコートを持つため抜け毛が多く、美しくエレガントな被毛を維持するには、日々のお手入れが欠かせません。
がっしり骨太な体格の「オーストラリアン・キャトル・ドッグ」
オーストラリアン・キャトル・ドッグは、イギリスからオーストラリアに渡った開拓民により生み出された犬種だとされています。主に牛を追う牧畜犬で、強靭なスタミナと高い運動能力を持ち合わせています。賢く従順な性格を持ちながらも、同時に独立心が強く、頑固な一面も見受けられます。
体重は約20kg前後の中型犬で、筋肉質で骨太ながっしりとした体つきをしています。比較的丈夫な犬種とされており、かつて29歳まで生き、長寿犬としてギネス記録に認定されていたオーストラリアン・キャトル・ドッグは、約20年ものあいだ牧畜犬として働き続けました。
キリッとした顔がかっこいい「オーストラリアン・ケルピー」
オーストラリアン・ケルピーは、日本ではあまり知られていない犬種ですが、原産国のオーストラリアでは人気の高い犬種で現役の牧羊犬や家庭犬として親しまれています。体高は46~51cm、体重は11~21kgの短毛の中型犬で、賢く陽気でエネルギーに満ちあふれています。
この犬種は、オーストラリアに入植したスコットランド人により作り出され、「ケルピー」という名前はスコットランドに伝わる伝説の水の精を意味します。
筋肉質で引き締まった体つきに、しっかりと立った三角形の耳と、キリッとしたきつねのような顔立ちが特徴です。
賢く機敏なモップ犬「プーリー」
プーリーはハンガリー原産の牧羊犬で、その独特なドレッドヘアーが目を引き、まるでモップが歩いているようなユーモラスな姿が魅力です。プーリーはハンガリー語で「リーダー」を意味し、羊の誘導のみならず、オオカミなどの外敵から家畜を守るガーディング・ドッグの役割もこなしています。
よく似た容姿を持つ犬種に「コモンドール」がいますが、こちらもハンガリー原産の牧羊犬です。このような被毛は、ハンガリーの厳しい寒さや家畜を襲う外敵から体を守る役割をしています。
プーリーはその見た目からは運動が得意そうには見えませんが、賢く活発で訓練能力も高く、ハンガリーでは警察犬としても活躍しています。
まとめ
ハーディング・ドッグたちの中から、厳選して6つの犬種をご紹介しました。
彼らはその活躍の歴史から、吠え癖や咬み癖が出る可能性がありますが、一方で賢さと高い訓練能力を兼ね備えています。適切なしつけやトレーニングをして、運動欲求や作業欲求を満たしてあげれば、犬とアクティブに活動したい人にとっては最高のパートナーとなるでしょう。
今回ご紹介しきれなかった犬種もいますので、ハーディング・ドッグに興味を持たれた方は、ぜひご自身でも詳しく調べてみてください。