「愛犬の吠えや咬み付きなどの困った行動に対して、どのようにしつけをすれば良いのか分からない…。」そんな時、ネットで解決策を調べる飼い主は多いでしょう。
しかし、実際の環境や犬の性格はそれぞれ異なるため、ネットの情報だけでは解決が難しいこともありますよね。
となると、実際に信頼できる専門家に直接相談したいと思うこともあると思います。しかし、犬のしつけの専門家とは、実際にどこにいる誰のことなのでしょうか?犬の訓練士?それともドッグトレーナー?これらの専門家にはどのような資格があり、どのような違いがあるのかを皆さんは理解できていますか?
今回は、そのようなお悩みをお持ちの方が適切な人に相談できるよう、犬のしつけを行う資格とその特徴について整理をしています。この記事をヒントに、愛犬に合ったドッグトレーナーを見つけられると良いですね。
この記事の目次
国内で最も歴史あるJKC訓練士
国内で家庭犬の訓練士として最も知られている資格が、1949年創立と歴史ある一般社団法人ジャパンケネルクラブ(JKC)公認の訓練士でしょう。
JKC公認訓練士は、「犬のしつけと訓練、飼い主のモラル向上、犬と愛犬家が楽しめるドッグスポーツの提供、犬を通しての社会貢献」などを掲げており、家庭犬訓練や警察犬訓練、災害救助犬などの育成をしています。
JKCは、ドッグショーや訓練競技会を定期的に開催しており、訓練士資格取得のためには競技会で良い成績を残すことが条件になっています。そのため、競技会で活躍している方がとても多いのが特徴です。
災害救助犬や警察犬の訓練士
嗅覚など犬の優れた能力を活かして特定の目的に特化した仕事をする犬を育成しているのが、災害救助犬や警察犬の訓練士です。資格は日本警察犬協会の他、いくつかの団体で発行されています。
災害救助犬や警察犬は、災害時などの非日常な環境であってもしっかりと任務を遂行しなければなりません。そういった訓練のノウハウを活かして家庭犬のしつけも行っている訓練士は、犬という動物の特徴を熟知して特定の行動を犬に教えることに長けているのが特徴と言えるでしょう。言い換えれば、特別な訓練のノウハウを生かしたトレーニングができるということでもあります。
専門学校や団体の認定ドッグトレーナー
専門学校のドッグトレーナー課や、社会人向けの養成スクールなどでもドッグトレーナーの資格を発行しています。通信教育で資格を取得できるところもあるようで、同じドッグトレーナーという資格でも知識やスキルのレベルにはかなりの差があります。
また、ドッグトレーナーによって得意分野も異なります。例えば、咬むなどの問題行動に豊富な実績があるドッグトレーナー、アジリティなどのドッグスポーツが得意なドッグトレーナー、海外の最新トレーニング方法を用いるドッグトレーナーなどが挙げられます。
こういった得意分野や特徴など、ドッグトレーナーとしてどのような実績・経験があるのかを事前に確認することで、ご自身の愛犬のお悩みに合ったドッグトレーナーを選ぶことができるでしょう。
国際的な倫理観のCPDT-KA
国際的なドッグトレーナー資格の代表格といえば、米国の団体「Certification Council for Professional Dog Trainers(CCPDT)」が発行しているCertified Professional Dog Trainer-Knowledge Assessed(CPDT-KA)です。
日本国内でも筆記試験を実施しており、それに合格すると資格が付与されます。試験内容は動物行動学や犬の生態についてだけでなく、レッスン中の飼い主への接し方など実践的な問題も出題されます。
また、受験するためには、すでにドッグトレーナーとしての経験が300時間以上必要で、さらに動物や人に対する倫理規程に署名することも要求されます。
このCPDT-KA受験条件の倫理規程は、「体罰だけでなく犬が不快に感じるような方法はその他のあらゆる方法を検討した上で最後の手段としてのみ用いる」というドッグトレーナーとしての方針が明記されています。
犬に関する知識はもちろん、ドッグトレーナーとしての経験が豊富で、国際的なレベルでの倫理観も持ち合わせているのがCPDT-KAのドッグトレーナーの特徴です。
犬にストレスをかけないドッグトレーナーを選ぼう
どこまでが「トレーニング」だと思いますか?
最近では、スマホの普及により、簡単に動画が撮影できるようになり、またTwitterやYouTubeなどで、簡単に動画を拡散できるようになりました。その中には、「しつけ」と称し、一見すると体罰ではないか?とも思えるような行為が収められている動画もあります。
そして、多くの場合は、それらは賛否両論を巻き起こすことになります。つまり、それは「犬をぶったり叩いたりする体罰はよくない」と思われる方が多いということを物語っているということです。
それでは、犬のリードを強く引っ張ったり大きな声で叱りつけるのはどうでしょうか?どこまでの強要が「しつけ」であり、どこからが「体罰や虐待」にあたるのでしょうか?
これらを「しつけ」として捉えられる飼い主であれば、その程度は必要な場合もあると考えているということでしょう。しかし、できれば愛犬にはそういった叱り方はして欲しくないという飼い主も多いのではないでしょうか?
世界に広がる犬に優しいトレーニング
近年、動物の福祉(アニマル・ウェルフェア)が世界的に重視されるようになり、体罰などの身体的な刺激だけでなく、大きな声や音で叱ったり威圧的な態度をとるなどの精神的な刺激であっても、犬が不快に思うことは極力避けるべきだ、という考え方が広まっています。
日本でもそうした考えが広がりつつありますが、日本国内で発行されている訓練士・ドッグトレーナーの資格保持者は、実際にどの程度犬が嫌がる方法でトレーニングをするのかは人によってかなり違いがあるのが現状です。
適切なドッグトレーナー選びを
あなたが安心して愛犬のしつけを任せることができる訓練士・ドッグトレーナーを探すためには、資格だけでなく具体的にどの程度犬が嫌がる方法を使ってトレーニングするのかも事前に確認することをお勧めします。トレーニングで嫌な思いをしてしまった犬は、ストレスが溜まったり、怖がりになってしまうことも十分に考えられます。
先程の問いの続きになりますが、どこまでが「しつけ」であり、どこからが「体罰」になるのか、統一的で明確な基準がないのが現状です。そこで、実際に愛犬のトレーニングに関する方針を決めるのは、飼い主の皆さんの役割になってきます。愛犬に合ったドッグトレーナーを選択する上でも、事前に話を良く聞き、自分の考え方と合っているか、トレーニング内容がどのようなものなのかをよく確認することが非常に重要になってくるのではないでしょうか。
大切な犬のためのドッグトレーナー選びに、本記事が少しでもお役に立てば幸いです。