日本では2000年代の初め頃から、小型犬が根強い人気を誇っています。特に大都市では住宅事情も相まって、小型犬を見かける機会が多いのではないでしょうか。
近年、犬に対する意識の高まりから、きちんとしつけられた小型犬を見かけることが増えました。その一方で、「小型犬は気が強い」、「小型犬はよく吠える」といった声も聞かれ、小型犬の方がしつけしづらいと考える人もいます。
この記事では、小型犬は本当にしつけにくいのか、2010年にウィーン獣医大学のチームが行った研究を元に解説していきます。
参考
Behaviour of smaller and larger dogs: Effects of training methods, inconsistency of owner behaviour and level of engagement in activities with the dog
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0168159110000262
この記事の目次
飼い主から見た小型犬の性格
はじめに、小型犬の飼い主が感じる愛犬の性格について見ていきましょう。
この研究では、体重20kg未満を小型犬、20kg以上を大型犬と定義づけ、犬の飼い主を対象にアンケート調査を実施しました(回答数1,276件)。
その結果、小型犬は飼い主から「服従性が低く」、「攻撃的で興奮しやすく」、「不安で怯えやすい」と評されていることがわかりました。
また、他の研究により、小型犬は大型犬に比べて活動的かつ衝動的な傾向があり、メスの犬は体が小さいほど咬みつくリスクが高いことも示されています。
小型犬と大型犬の行動の違い
飼い主からは、服従的でなく、攻撃的で、不安になりやすいと見られている小型犬ですが、客観的に見た行動はどうなのでしょうか。この研究により、小型犬と大型犬の間には、次のような3つの大きな行動の違いがあることが示されました。
1.小型犬は服従性が低い
「スワレ」「オイデ」といった一般的なコマンドに対して、それほど確実な反応を示さなかった。
2.小型犬の方が攻撃的で興奮しやすい
見知らぬ人、訪問者、または他の犬に対して吠えたり唸ったりする確率が高かった。
3.小型犬の方が不安で怯えやすい
慣れない状況や雷や花火などの大きな音に驚きやすく、見知らぬ人がいると緊張する傾向があった。
これらは、もちろん全ての小型犬に当てはまるわけではありません。当然ですが、飼い主の指示をきちんと聞き、どんな環境でも落ち着いた態度でいられる子もたくさんいます。
しかし、小型犬にはこのような傾向が見られ、また、こういった行動を取りやすくなる原因もあるということです。
小型犬がしつけにくいのはなぜ?
この研究では、小型犬と大型犬の行動の違いが遺伝的要因によるものか、それとも飼い主の接し方によるものかについても言及しています。
その中で、小型犬の飼い主は大型犬の飼い主に比べて、「犬との関わりに一貫性がなく」、「トレーニングや遊びの頻度が低い」と指摘しています。
「犬との関わりに一貫性がない」とは、同じいたずらをしたとしても、ある時は叱り、ある時は許す、といった具合に、ルールやコマンドなどが一貫していない場合を指します。
また、大型犬はきちんとしつけられなかった場合の影響が大きいため、トレーニングの機会が増えます。さらに、運動量も大型犬の方が多く必要とする傾向があるため、飼い主と遊ぶ機会も多くなります。
このような理由から、小型犬は大型犬に比べると「トレーニングや遊びの頻度が低い」傾向にあります。
これらを踏まえると、小型犬がしつけにくいと思われている原因は、小型犬自体に問題があるのではなく、飼い主の接し方に問題があると言えるのです。
小型犬のしつけはどうするべきか
小型犬は問題行動を起こしても、大型犬ほど重視されない傾向があります。例えば、すれ違う人に吠えかかる場合でも、小型犬と大型犬では迫力や恐ろしさが全く異なります。
小型犬の場合は、小さい犬がキャンキャン吠えていると軽く捉え、飼い主の中にはその行動を止めさせない人もいます。しかし、このように犬の攻撃性を見過ごしていると、他者を咬んでしまうなど重大な結果につながりかねません。
また、「不安で怯えやすい」という面だけでなく、「攻撃的で興奮しやすい」という面も、社会化不足や小型犬特有の体の小ささによる不安感が原因となっている可能性があります。
小型犬のしつけのポイント
ここまでの結果を踏まえて、小型犬のしつけは以下のポイントを押さえましょう。
必要以上に犬を抱っこしない
犬を常に抱っこしていると、飼い主と一緒でなければ不安を感じる子になってしまうことがあります。また、抱っこばかりでは様々なものや環境に慣れさせる社会化の機会が減ってしまいます。
大型犬と同じルールでしつけをする
飛びついたり攻撃的に吠えたりしても小型犬の場合は見過ごされがちですが、問題を放置しておくと行動がエスカレートしたり、さらなる問題行動を引き起こしたりすることもあります。大型犬に同じことをされたらどう思うかという視点でしつけを見直してみましょう。
褒めるしつけをする
小型犬は不安感を抱きやすく怯えやすい傾向があるため、罰を与えるしつけではなく、良い行動をしたら褒めるしつけをしましょう。例えば、特定の物に吠える場合は、吠える前におやつなどで気をそらし、吠えなかったらおやつをあげるといった方法があります。
子犬の場合はパピー教室(パピーパーティ)に通う
社会化不足から問題行動を引き起こす小型犬が多く見られます。十分に社会化させるためには、子犬の場合、動物病院や犬の保育園などで開催されるパピー教室に参加することをおすすめします。
※パピー教室については、こちらの記事をご覧ください。
子犬の飼い主さん必見!パピーパーティーのすすめと選ぶポイント
https://cheriee.jp/dogs/30848/
まとめ
今回ご紹介した論文により、小型犬がしつけづらいと思われている原因は、飼い主の接し方にあることがわかりました。
小型犬はその愛らしい容姿から、ぬいぐるみのように接してしまう方もいます。しかし、どんなに可愛くても犬という動物です。
そのことを忘れずに、きちんとしたしつけをしていきたいですね。