犬が感染する重大な感染症や寄生虫には、ワクチン接種や予防薬、定期検診などで防ぐことができるものがあります。
中には人間に感染する病気もあるので、しっかり予防しておくことが重要となります。
今回は主な感染症や寄生虫の症状と、予防方法をご紹介します。
この記事の目次
混合ワクチンで予防できる感染症
混合ワクチンは、複数の重大な感染症を一度に予防できるワクチンです。
対応している感染症の数によって、ワクチンの種類が異なります。地域ごとの感染症の発生状況などを考慮し、獣医師と相談しながら決めましょう。
まずは、それぞれの感染症の特徴を簡単にみていきましょう。
パラインフルエンザ
人間の風邪に似ていて、乾いたせき、鼻水、扁桃炎などの症状があります。ほかの感染症と一緒に感染すると症状が重症化します。
伝染性肝炎
症状はさまざまですが、発熱、食欲不振などの比較的軽い症状から、肝炎をともない死に至るものもあります。
パルボウイルス感染症
ひどい嘔吐、下痢が続く腸炎型と、突然死する心筋型があります。
ジステンパー感染症
発熱、食欲不振などの軽い症状からはじまり、重症化すると神経障害があらわれ死に至ることもあります。
1歳未満の子犬の発症率が高いといわれています。
アデノウイルスⅡ型感染症
発熱、せき、および肺炎や気管支炎などの呼吸疾患をおこします。ほかの感染症と一緒に感染すると症状が重症化します。
レプストピラ感染症
肝臓や腎臓の病気で、黄疸や下痢、歯茎の出血などの症状があらわれる黄疸出血型と、嘔吐や下痢をともなうカニコーラ型があります。レプストピラ感染症は、人と動物の間での感染の可能性がある感染症(人畜共通感染症)のひとつです。
コロナウイルス感染症
食欲不振、嘔吐、下痢などの症状があります。パルボウイルスと一緒に感染すると、死に至ることもあります。
ワクチン接種の時期と回数
混合ワクチンは通常、生後50日前後に1回、さらにその約20~30日後にもう1度受け、2歳以降は1年に1度受けます。
ただし、時期や回数はそれぞれの犬の年齢や体調によって異なるため、獣医師に相談し、指示をあおぎましょう。
料金の相場は、5種で5000円程度、8種で7000〜9000円程度といわれています。これも地域や病院によって異なり、中には診察代や初診料がかかる場合もあります。
狂犬病ワクチン
狂犬病は、感染した動物に噛まれることで感染する病気です。脳に至る中枢神経がおかされて凶暴化し、最終的には死に至ります。
人間を含むすべての哺乳類が感染し、その致死率はほぼ100%といわれています。世界では年間5万人以上の人が狂犬病によって命を落としています。
昭和25年に狂犬病予防法が制定され、犬の登録とワクチン接種が義務付けられて以来、日本国内での感染はほとんど報告されていませんが、動物の輸入などにより国外から狂犬病が国内に上陸する可能性はあります。
万が一、狂犬病が侵入したときでも、その蔓延を防ぐために、全ての犬が狂犬病ワクチンの接種を受けることが重要なのです。ワクチン接種は動物病院だけでなく自治体の集合会場でも受けることができます。
接種の時期としては生後3〜5ヶ月に1回、2歳以降は1年に1度受けます。一般的に、毎年春になると自治体やかかりつけの動物病院から通知がくることが多いです。
費用は、初回は畜犬登録料を含め6000〜7000円程度、2回目以降は3000〜4000円程度が相場です。
フィラリア症の予防
フィラリアは蚊を媒介して心臓や肺動脈に寄生する寄生虫で、増殖して進行すると心臓疾患を起こし、命を奪うことも少なくありません。
5〜11月頃の蚊が発生する期間に、月1回の予防薬を与えることで予防できます。薬のタイプは、飲み薬や皮膚におとすだけの滴下タイプなどがあります。
すでに感染していると予防薬で副作用を起こすこともあるので、動物病院で血液検査をおこなってから処方されます。
費用は1回1000〜3000円程度で、犬の体重によって異なります。
回虫、鉤虫、条虫の予防
回虫、鉤虫(こうちゅう)、条虫はどれも消化器官などに内部寄生虫で、下痢や貧血、血便や食欲不振などを引き起こします。
感染経路は犬の排泄物などから経口・経鼻感染することが多いが、母犬からの胎盤感染や母乳感染もあります。
症状が出ないこともありますが、寄生虫を持っているとさまざまな病気にかかりやすくなりますから、定期的に検便をしましょう。検便の費用は1回1000〜1500円程度で、寄生虫が確認された場合は駆虫薬を服用します。
また、散歩中にほかの犬の排泄物に口や鼻をつけないように注意することで感染のリスクを抑えることができます。
ノミ・ダニの予防
ノミやダニが皮膚、被毛、耳などに寄生すると、ひどいかゆみを引き起こします。
体をかきむしって傷ができると、細菌が入って皮膚炎になったり、大量に寄生すると貧血を起こしたりします。
1年を通して衛生的な生活環境に気を配り、4〜11月頃に薬を投与すると効果的です。薬のタイプは錠剤、滴下タイプ、スプレータイプなどさまざまで、持続期間も異なります。
市販のものもありますが、獣医師と相談して処方してもらうのがよいでしょう。
防げる病気は確実に防ごう
さまざまな重大な感染症や寄生虫は、ワクチンや予防薬、定期的な検診によって未然に防いだり、重症化を防ぐことができます。
費用はそれなりにかかりますが、しっかり予防しておかないと最悪の場合、死に至ることもあります。
また、犬は自分の不調を言葉で訴えることができませんから、人間よりも病気の早期発見が難しいのです。
獣医師と相談しながらそれぞれの犬にあった予防方法を考え、大切な犬の健康を守ってあげましょう。