2020年1月、韓国は2022年からペットを購入する際に、所定の教育を受けることを義務付ける方針を公表しました。
動物虐待などの悲しいニュースが多い昨今、アジア圏、しかもお隣の韓国でこのような制度ができるのは、随分先進的なことではないでしょうか。
日本では、まだペットに関わる教育や講習は義務化されていませんが、外国のペットに関する教育事情はどのようになっているのでしょう。
今回は韓国で義務化されるペットの飼い主に関する教育の内容、及び、ペット先進国とも呼ばれるスイスの実情も合わせてご紹介します。
この記事の目次
飼い主の教育が義務化された韓国
2020年1月14日、韓国の農林畜産食品部は、動物を虐待する行為についての処罰を強化する方針を示した「2020年から2024年動物福祉総合計画」を公表しました。
これにより罰則が以下のように変わります。
現在
-
虐待によって動物を死に至らしめる行為に対する処罰
2年以下の懲役/2000万ウォン(約189万円)以下の罰金
動物遺棄に対する処罰
現行の300万ウォン以下の過料
2021年から
-
虐待によって動物を死に至らしめる行為に対する処罰
3年以下の懲役/3000万ウォン以下の罰金
動物遺棄に対する処罰
300万ウォン以下の罰金
動物虐待罪が成立すると、動物に対する所有権が制限されます。その一環として2020年から、ペットの飼い主の責任意識を高めるため、ペットを購入する際に所定の教育を受けることが義務付けられました。
2019年に、日本でも動物愛護法が改正されましたが、それよりも厳しい処罰となっています。飼い主に対する教育を義務付けるというのも画期的です。
韓国のペットに対する意識はバラバラ
なぜこのような教育の義務化が決められたのでしょうか。
動物を購入できる方法もさまざま
日本の場合は、ペットを迎え入れるとなるとペットショップで購入するのが一般的な選択肢です。最近ではインターネットからの購入もできます。また、保健所や譲渡会で保護された動物を譲り受ける方も多くなってきています。
韓国でも保護動物を譲り受けてペットとして迎え入れるなどの活動が見られますが、日本と同様にペットショップでお金を出して購入する方が一般的です。しかも、日本に比べて安価な価格が設定されており、誰でも購入しやすい環境が整っています。
安易にペットを購入できることから、気に入らないことがあったり、飼うことが難しくなったら、すぐに捨ててしまうというケースも増えてきており、これが問題となっています。この法律が制定された背景には、近年、韓国でも動物愛護を訴える人が増えてきていること関係しているでしょう。
悲しい事件も
2019年1月には、ペットショップで購入した「子犬が排泄物を食べてしまうので返品したい」と訪れた女性が、子犬を店員に投げつけ、死亡させてしまうといった悲惨なニュースがありました。Twitterなどでも話題になったため、ご存知の方も多いかもしれません。
また、山口県にある柴犬専門のペットショップでは、韓国の購入者から犬が大きくなり、排泄物が多すぎるという理由から、犬を買い換えたいと要望を受けたということもニュースに上がっています。
動物愛護や福祉に関心がある人はいるものの、国全体としてはまだその意識が足りていないことが、今回このような制度ができた一因であるように思えます。
ペット先進国のスイスでは
ペット先進国として知られるスイスでは、ペットショップでの生態販売はないと言われており、動物を飼うためには、ティアハイムと呼ばれる動物保護施設から動物を引き取るのが一般的だそうです。
また、バスや列車などの交通機関やレストラン、ホテルなど多くの場所で、ケージに入れられることなく飼い主と犬が一緒にいるところが見受けられます。
日本ではあまり考えられませんが、スイスでは日常的な光景なのです。こういった光景は、イギリス等、他の欧州各国でも見られ、珍しいことではありません。
犬を飼うために免許がいるスイス
スイスでは、すべての犬と飼い主に法律で講習と訓練を義務付けています。
初めて犬を飼う人は、犬を受け入れる前に講習を必ず受けなければなりません。しつけの必要性、犬にかかる経費の明細など、飼育に不可欠な知識を学びます。その他、必要な予防接種やマイクロチップなどを合わせると、この時点で約6,000円程かかります。
犬を飼うことの大変さを知り、ここで諦める人も出てくるようです。
実技訓練も
犬を迎え入れたら、1年以内に飼い主自身が飼い犬を連れてしつけの実技訓練を受けなければなりません。1回1時間のしつけ訓練、および実技テストが4回に分けて行われます。ここでも約7,000円程の費用がかかります。
これらに合格すると、ようやく免許取得の証明書がもらえます。なお、飼育経験がある人も新しい犬を飼う際にも実技試験が必要です。
言い換えるならば、訓練されていない犬がスイスにはいないことになります。
犬にかかる税金もある
さらに、飼い始めて1年後から1頭約17,000円の犬税の徴収が開始されます。2頭目以降はさらに高額になるよう設定されている自治体もあるようです。
このように飼い主にも飼い犬にも厳しい講習や制度があるため、スイスではいたるところで犬と人間が一緒に生活できる環境が整っているのでしょう。
また、動物を人間と同じく社会の一員として見ており、動物に対してもお金をかけ、講習や訓練を受けてもらうという考え方があります。そのようなことから、殺処分ゼロの国と呼ばれるようになったのでしょう。
最後に
日本でも2019年に動物愛護法が改正されたばかりですが、今回は、ペットのための教育制度について韓国とスイスの2カ国の紹介をしました。
日本でも、東京都の小池百合子知事が、「ペットの殺処分ゼロ」を公約としていましたが、期限としていた2020年よりも1年早く殺処分ゼロを達成したと発表していますが、実際には150匹ほどの犬猫が殺処分されていたとの報道もあります。
また、殺処分ゼロが達成された都道府県がある一方、殺処分はゼロだが、実際には糞尿にまみれて、とても幸せとは言えない生活を強いられている犬や猫たちもいます。これは私たちが望む世界なのでしょうか?
捨てられてしまった動物を保護し、新しい飼い主を探すことは大事です。それと同じように、安易に犬や猫を購入してしまう飼い主や、捨ててしまう飼い主に対して、動物福祉に関する教育を行い、動物に対する意識を変えていくことも大事なのではないでしょうか。
動物福祉に対する考えが遅れている韓国では、既に飼い主に対する教育が始まろうとしています。動物先進国であるスイスやスウェーデン、イギリスなどをお手本に、日本でももっと踏み込んで、動物に対する教育が義務化されるべきではないでしょうか。