もし大切なペットが難病を患ってしまったら、多くの方は獣医師にできる限りの治療を行ってもらうでしょう。このネット社会では、自分で情報を集めたり、同じような病気を患っているペットの飼い主さんと情報交換をしたりするという方も少なくないと思います。
そんな藁をもすがる状況の飼い主さんを騙し、ただのサプリメントを医薬品として効能があるようにうたい、販売していた業者が先日書類送検されました。
この記事では、そのような悪徳業者に騙されないために、知っておきたい知識や心がけておきたいことをご紹介します。
この記事の目次
悪徳業者による詐欺行為
今年3月、動物用医薬品として承認されていないサプリメントや水素水を、「ガンを消す」などとペット用の医薬品として効能があるように宣伝・販売した疑いで、渋谷区のペット通販会社の役員が書類送検されました。
実はこのような業者による行為は決して珍しいものではありません。今回はペットの医薬品に焦点を当てていますが、人間のサプリメント等でも問題になっており、しばしばニュースで取り上げられています。
病気への効能をうたうこと
未承認のサプリメントや医薬品で「○○に効く!」「○○が治る!」などのように「効能」をうたうことは、動物を対象としたものでも法律で禁じられています。もちろん、ペットフードやシャンプー等であっても効能をうたう場合は動物用医薬品等に該当するため、承認を得なけれないけません。
未承認の動物用医薬品について医薬品としての効能や効果をうたったり、販売・授与をした場合は、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」に抵触するため、法律により罰せられます。
薬機法 | 罰則 | |
---|---|---|
効能・効果を広告 | 第68条または第55条第1項違反 | 2年以下の懲役、200万円以下の罰金 |
販売 ・授与 | 第55条第2項違反 | 3年以下の懲役、300万円以下の罰金 |
承認のプロセスは長い?
医薬品のうち、動物を対象としたものを「動物用医薬品」といいます。
動物用医薬品を承認してもらうには、さまざまなデータを記載した10種類以上の資料を提出し、申請の種類によっては60万円以上の申請手数料を支払わなければいけません。
そして、品目ごとに成分・分量、用法・用量、効能・効果、毒性、副作用、残留性等を、薬事・食品衛生審議会で審議し、問題がないと認められたものだけが効能をうたって販売ができます。
医薬品の承認は、多くの人の労力と時間をかけて実施されます。
悪徳業者の口車に乗らないで!
悪徳業者の宣伝文句にありがちなのが、「効果はあるが、医薬品として承認されるまでに膨大な時間がかかる。何もしないよりも試してみた方が良い。」というものです。
確かに承認されるまでには時間がかかります。しかし、薬は一歩間違えば毒にもなり得ます。仮に本当に効能があるとしても、専門家たちが承認していない薬を使いたいと思いますか?大切なペットに与えるものならば、そのくらい十分に時間をかけて承認されたものをあげたいですよね。
騙されないために
信頼できる獣医師に相談
まずはかかりつけの獣医師に意見を聞いてみましょう。もし本当に有効な薬があるのであれば、獣医師が知らないはずがありませんし、場合によっては一緒に考えてくれるでしょう。例え、医薬品ではなくサプリメントであっても、評判の良いサプリメントは獣医師の間でもよく知られています。
それでもなお納得しきれないのであれば、セカンドオピニオンを考えてみてはいかがでしょうか。
セカンドオピニオンとは
主治医(ファーストピニオン)以外の獣医師に、診断や治療方針について求める意見をセカンドオピニオンといいます。今までの検査情報を共有し、他の獣医師の意見を聞いた上で、治療方針を決定します。勘違いしがちですが、主治医のファーストオピニオンに不満や不信感を抱き、黙って病院を変えることは「転院」と呼び、セカンドオピニオンとは異なります。転院となると、今までやっていた検査なども全てやり直すことになり、金銭的な負担だけでなく、病気で苦しんでいるペットへの負担も増やすことになりますので、転院はよく考えた上で行いましょう。
主治医に「セカンドオピニオンをお願いしたい」と伝えたら嫌な顔をされるのではないかと心配する方はたくさんいます。
しかし、多くの獣医師は快くアドバイスをくれるしょう。むしろ、セカンドオピニオンにいい顔をしない獣医師はあまりオススメしません。なぜなら、自分が下した診断に自信を持っていれば、セカンドオピニオンでも同じような意見になるため、断る必要がないためです。
家族に相談
また、家族に相談することも大切です。一人で調べていると情報の偏りが生じ、本当にいいのかわからないものでも口コミを見て「いいかも…」と思ってしまいがちです。家族も一緒になって情報収集することで、多角的な情報を入手でき、冷静に物事を判断できるでしょう。
最後に
偽りの効能がうたわれているものは、特に高額であることが多いです。高額なサプリメントを購入したが、実は効果は全く無く、大切なペットを失ってしまったとなったら、飼い主さんも悔やみきれないでしょう。
残念ながら詐欺師の多くは人の弱い部分につけ入ります。被害に遭わないためにも、自分一人で判断するのではなく、信頼できる獣医師や家族の意見を聞きながら、病気と向き合いましょう。