日本では年始によく見かける福袋。袋を開けたときのワクワク感が楽しく、毎年買っているという人も多いでしょう。
ネット通販が普及している中国では、この福袋のような、届くまで中身がわからない「ブラインドボックス型」のおもちゃを購入するのが流行しています。しかし、信じがたいことに、ペットのブラインドボックスがネットで販売され、物議を醸しています。
この記事では、中国におけるペット事情と、近頃流行しているペットのブラインドボックスについてお伝えします。
この記事の目次
中国のペット事情
ペットブームが続いている中国では、アメリカに次いで世界第2位の規模を誇っています。人口の約5%がペットを飼育しているといわれており、14億人を抱える中国にとってその数は7000万人にも及びます。
もともと、中国においてペットを飼うことは非常に贅沢なことであるとされ、毛沢東の時代にはペットを飼うこと自体が禁止されていました。その後、子供が独立した夫婦を中心に、寂しさを埋めるためにペットを飼い始める人が増えました。
最近では、生活に余裕が出てきた20代から30代の若年層を中心に、職場でのストレスや出稼ぎによる孤独感を解消するために飼い始める人が増えています。
中国における動物愛護
中国では1988年に野生動物を対象とした「野生動物保護法」が制定されましたが、ペットなどの飼育動物を保護する法律は存在していません。
2014年には上海で多くの猫が殺害された事件がありましたが、現行法では罪に問うことはできませんでした。国内外からの批判もあり、これまでに何度か動物愛護法案が浮上していますが、未だ法整備がされていないのが現状です。
犬食文化
中国では昔から犬の肉を食べる文化があり、年間約1000万〜2000万匹の犬が食されていると考えられています。しかし、時代の変化とともに犬は「モノ」から「パートナーや家族」へと変化していき、今では中国国内でも犬食に反対する声が高まっています。
2020年には、深セン市がいち早く、犬や猫の肉を食べることと、それらの肉の商取引を法律で禁止しました。
そして同年、中国農業農村部が「犬は伝統的な家畜からパートナーへと変化した」ことを理由に、食用とされている野生動物のリストから犬を除外し、犬食を禁止しました。
ペットのブラインドボックス
「ネット通販」と「ブラインドボックス」、「ペット」という3つ要素が組み合わさって生まれたのが、今回問題となった「ペットのブラインドボックス」です。
ペットのブラインドボックスは2つの根本的な問題を抱えています。
1.ペットを宅配便で輸送すること
中国では宅配便などで生きた動物を輸送することは法律で禁じられていますが、ネット通販サイトではペットが販売され、購入する人も少なくないようです。
箱詰めされたペットは狭い場所に長時間閉じ込められ、餌ももらえません。輸送の過程で糞尿にまみれてしまったり、体調を崩してしまったりすることも珍しくありません。箱の中で頭を固定させられたり、梱包材でぐるぐる巻きにされた犬の映像もニュースで流れたことがあります。
昨年には、箱に入れられた5000匹以上のペットが、餌も水も与えられずに一週間ほど放置されたという痛ましい事件も起こっています。これは、配送業者が大手配送業者に引き渡す際、生きた動物を配送しないというきまりを守った大手配送業者が引き取りを拒否したために放置されたことが原因です。
2.どんなペットが届くのかわからないこと
ブラインドボックスはその性質から、どんな動物が届くかはわかりません。犬や猫などの動物の種類の指定はできるとのことですが、種類や大きさ、年齢なども選べないため、期待していたものと違ったということもあるでしょう。
もちろん、どんな動物であっても責任を持って飼うと決めてブラインドボックスを注文する人もいます。しかし、気に入らないペットが届くと、捨てたり、送り返したということも実際に起こっています。
また、売れ残ったり病気の動物が送られてくることもあり、ペットのブラインドボックスを利用することは、悪質なブリーダーに加担することにもなります。
中国国内の反応は?
ペットのブラインドボックスを利用する人がいる一方で、中国国内でも、「人間のやることではない」と批判が高まっています。
利便性や届いた時のワクワク感は確かにあります。しかし、若者を中心に動物をモノのように扱うことに嫌悪感を抱く人は多くいます。
すでにお伝えしている通り、現在の中国ではペットの命を奪ったとしても罪に問われることはありません。国内の動物愛護団体も強く抗議しており、一日でも早い法整備が望まれています。
最後に
ペットを飼いたいと思うのであれば、足を運び、自分の目で見て、触れ合ってからお迎えするべきでしょう。
中国では、ペットが劣悪な環境で宅配されたり、どんなペットか分からない状態で届けられるなど、私たちが考えている以上に、ペットの命が軽く考えられていることを知り、ショックを隠しきれません。
一方で、日本のペットショップにおける生体販売等も諸外国からは批判されており、改善しなければいけない点はたくさんあります。
動物を人間のペットとして扱うこと自体が人間のエゴであることは間違いないでしょう。しかし、ペットを飼う文化を認める以上は、少しでもペットの苦痛を軽減させられるよう、私たちが考えていかなければいけません。