ペットの熱中症対策に、皆さんはどのようなことをしているでしょうか?
特に、夏のこの時期はパグなどの短頭種や、興奮しやすい性格の子を中心に、熱中症が起こりやすい季節です。動物病院は、犬や猫を始めとする動物を扱う専門の施設であり、そこでの熱中症発生はプロとしてあり得ません。
本記事では、動物病院で行っている熱中症対策を6つご紹介します。ご家庭にも応用できる方法も解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
この記事の目次
犬や猫の熱中症
熱中症になると、体温の急激な上昇とともに、血管拡張による血圧の低下が起き、時には命に関わることもあります。
犬は暑いと「パンティング」という、口を開けて行う短く速い呼吸によって体温の調節を行います。
しかし、特にパグなどの短頭種と呼ばれる犬種は、解剖学的に気道が狭くなっており、呼吸による熱の放散がうまく行われないことが多くあります。
猫に関しては、もともと砂漠の動物ということもあり、犬よりも暑さには強いように思いますが、日本の夏は湿度も高いことから、犬と同様に熱中症対策が必要でしょう。
熱中症対策① 冷房管理の徹底
予め診察時間の前にはスイッチを入れておき、診察開始の時点で快適な温度になるようにしておきます。
特に、午後の診察開始時間は、冷房を切っていると室内が大変高温になってしまいます。動物はヒトより体温が高いため、動物を扱わない施設と比較して、より低めの温度設定にしている病院もあります。
しかし、人間が寒いからと言って冷房を止めることはできません。待合室で体が冷えないよう、薄めの防寒着があるといいかもしれません。
やってみよう!
お家でも、暑くなったら無理せず冷房を適切に使用しましょう。なお、扇風機は犬や猫にはあまり意味がないので注意が必要です。
扇風機がペットに有効ではない理由
人間は身体中に汗腺があるため、扇風機を使うと汗が蒸発する気化熱が奪われることによって、体温を低下させることができます。しかし、犬や猫は主に舌で体温調節をするため、扇風機の効果は小さいのです。
扇風機は、冷房を使いながら部屋の空気を循環させるために用いると効果的です。また、湿度の高い日はエアコンの除湿機能も活用しましょう。
熱中症対策② 保冷剤の利用
短頭種では、冷房での温度管理だけでは自身の熱交換がうまくできない子もいます。慣れない場所で興奮してしまうと、どうしても体温が上がってしまいます。
そんな子には、薄いタオルなどに保冷剤をくるんで首に巻いてあげます。直接保冷剤を皮膚に当てると、凍傷になってしまうことがあるので注意しましょう。
首の血管を冷やすことで、ある程度は体温の低下が期待できます。
やってみよう!
小型犬や猫は、動物病院に来院する際にキャリーバッグを使うと思います。しかし、キャリーバッグの中は通気性も悪く、緊張も相まって熱中症リスクは高くなりがちです。
タオルの下に保冷剤などの冷たいものを入れておき、キャリー内の温度を低くしておくことで、外出の際も快適になるかもしれません。
熱中症対策③ ICU(集中管理室)の利用
温度管理ができる入院設備があれば、病院スタッフの判断で待っている間は動物を預かることもあります。待合室の他の犬に興奮してしまう子には有効です。
ICUは25℃くらいに設定した個室ですので、熱中症のリスクを下げられます。
注意してほしいこと
ICUの利用には設備を動かすことが必要となるため、必要と判断したらあくまで病院スタッフから提案します。基本的には、飼い主の方からの依頼はできないと考えましょう。
熱中症対策④ 処置は手早く行う
爪切りなどの処置や検査が長時間に及ぶと、緊張で体温が高くなってくるため、動物が落ち着いている間に短時間で処置を済ませるようにしています。
どうしても暴れてしまう場合には、こまめに休憩を取りながら、時間をかけて処置することもあります。その際には、さらに、前述した保冷剤やICUを利用しながら体温を上げないようにします。
やってみよう!
お家でも、ブラッシングなどの普段のお手入れはあまり時間をかけ過ぎないようにしましょう。
特に、ブラッシングなどが苦手な子は、あまり長いと興奮やストレスが高まってしまいますので、様子をよく見ながら調節してあげてください。
熱中症対策⑤ 来院時間の提案
熱中症リスクのある子は少しでも涼しい時間帯である朝の時間、もしくは夕方遅めの時間での来院を促しています。
やってみよう!
朝や夕方など、なるべく涼しい時間に来院することを心がけてみましょう。もちろん、動物病院だけでなく、散歩やお出かけする場合も同様、涼しい時間に出るようにしましょう。
新型コロナウイルスの影響で、待合室ではなく外や車の中での待機を推奨している動物病院もあります。待ち時間が少なくなるように、なるべく事前に予約するようにしましょう。夏は、にわか雨も多く湿度も高くなりがちですので、お天気もチェックすると良いですね。
熱中症対策⑥ 電解質サポート
熱中症発生の要因として、電解質(ミネラル)不足があります。近年では水に混ぜるだけで、薄めのスポーツドリンクのようになる商品が登場しています。
こういった電解質サポートの飲み物は、ペットホテルで預かっている子などにあげている病院やペットホテルもあります。いわゆるヒトのOS1(経口補水液)のようなもので、自宅でも活用する人が増えています。
やってみよう!
自宅でも、電解質を補えるペット用のドリンクを与えてみましょう。
なお、少し水の味が変わるので、口に合わない子もいるかもしれません。
気をつけよう
いくら同じようなものとはいえ、ヒトのスポーツドリンクには糖分や塩分が非常に多く含まれているため、絶対にあげないでください。
まとめ
このように、動物病院では種々の熱中症対策を行っています。皆さんも自宅で当たり前のように行っているものもあるかもしれません。
動物は毛で覆われているため、ヒトよりも暑さには弱いものと思ってください。ましてや日本の夏は、同じ人間である外国の方々にとっても厳しいものです。
熱中症対策は、気を付けすぎるくらいがちょうどいいのかもしれませんね。