【獣医師監修】犬の咳は侮れない!実は危険な病気のサインかも?

2024.09.25
【獣医師監修】犬の咳は侮れない!実は危険な病気のサインかも?

犬が咳をしたとき、犬の飼い主のみなさんはどのように感じるでしょうか。

「ヒトでも風邪をひいたとき咳をするし、大したことないでしょ」と思うでしょうか。「何か変なものを口に入れてしまったのだろう」と思うでしょうか。
咳は珍しい症状ではないのでつい放置してしまいがちですが、中には怖い疾患が隠れている場合もあります。

本記事では、飼い主のみなさんが犬の咳に対して正しい対処ができるよう、考えられる疾患や治療法、動物病院に連れて行く前に気をつけるべきことを獣医師が詳しく解説していきます。

この記事の目次

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そもそも咳って何?

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咳は、気道内にたまった分泌物や異物を気道の外に排除するための生体防御反応です。

気管や気管支、喉頭、咽頭などにある咳受容体に刺激が加わると、そこからの刺激が延髄の咳中枢に伝わり、咳が出ます。
この咳受容体を刺激する原因は、大きく5つに分けられます。

  • 機械的刺激: 痰、埃、異物などによる刺激
  • 物理的刺激: 心臓や胸の中の腫瘍などによる気管、気管支への外側からの刺激
  • 化学的刺激: 各種刺激性ガスによる刺激
  • 温度刺激: 冷気吸入などによる刺激
  • 炎症刺激: 気道粘膜の充血浮腫などによる刺激

咳の分類

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咳はその性状によって、「乾性」と「湿性」の2つに分類できます。
犬の場合、本人に咳の感覚を直接聞くことはできないため、咳の鑑別は非常に困難です。

1.乾性

気道内分泌物が少なく、高く響くような咳のことです。
気管虚脱、心拡大による咳、冷気や粉塵の吸入時などに見られます。

2.湿性

痰が絡んだような咳で、音量は小さくこもったように聞こえます。
連続する咳の後に、吐くような動作を伴うことがあるのも特徴です。
慢性気管支炎、気管支肺炎、肺水腫、気管支拡張症などで見られます。

咳によって考えられる犬の疾患

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咳と言えば呼吸器疾患の症状のように思えますが、それ以外にも、心疾患を始めとする胸腔内疾患の結果として起こることもあります。

肺や心臓の疾患は放置すると重症化し、命に関わることもあるため注意が必要です。
以下では、犬で多く見られる咳が症状として現れる疾患を紹介します。

伝染性気管気管支炎(ケンネルコフ)

複数の細菌やウイルスなどの感染によって引き起こされる呼吸器疾患です。
特に犬アデノウイルスⅡ型と犬パラインフルエンザウイルスの感染が重要で、これらは定期的な混合ワクチンの接種によって予防が可能です。免疫系が整っていない子犬に多く見られます。

慢性気管支炎

明らかな原因疾患(腫瘍、気管虚脱、アレルギー性気管支炎、うっ血性心不全など)がないにも関わらず、2か月以上続く咳を伴うものと定義されています。
治療は100%の咳消失ではなく、生活に問題がないレベルまで咳を減らすことを目標とします。

気管虚脱

呼吸とともに気管が潰れ、「ガーガー」という特徴的な咳をします。
パグやペキニーズなどの短頭種、ポメラニアンやチワワなどの小型犬に多く見られます。また、6歳以上の肥満犬に多いことも知られており、ダイエットによって症状が落ち着くこともあります。

気管支拡張症

犬では珍しい疾患ですが、気管支が不可逆的に拡張する疾患です。
咳の他に痰が多く見られます。治療をしても咳がなくなることは困難と言われています。

肺炎

微生物の感染、アレルギー、食物の誤嚥など、種々の原因によって肺に炎症が起こる状態です。
ヒトでもよく聞く病態ですので、深刻な状態であることは理解頂けると思います。通常は酸素室に入院させ、抗菌薬などによって治療を行います。

肺水腫

肺に水が溜まっている」と言われる状態です。
原因としては呼吸器感染症などの呼吸器障害の他に、循環器疾患、敗血症、急性膵炎、感電などによっても引き起こされます。
原因となる事象によって治療法や予後は異なりますが、酸素吸入と安静は必須です。

肺気腫

肺は、肺胞と呼ばれる小さなブドウのような組織が房になり、寄り集まって形成されています。
通常は肺胞で酸素と二酸化炭素のガス交換が行われていますが、この肺胞が破壊されて収縮する状態を肺気腫と言います。
ヒトではタバコが主な原因とされていますが、犬での原因ははっきりとはわかっていません。しかしヒトと同様にタバコの煙が原因とする論文もあるそうです。

肺腫瘍

肺に原発する腫瘍や、乳腺腫瘍などから転移した腫瘍によって咳や呼吸困難が引き起こされます。
腫瘍にもさまざまな種類があり、その種類によって予後は大きく変わってきます。
獣医療の発展によって犬の寿命も延び、また検査機器の技術向上によって検出感度が上昇したことで腫瘍の患者も増えています。

僧帽弁閉鎖不全症などの循環器疾患

一見、咳には関係なさそうですが、心臓病でも咳の症状が見られます。
特に、心臓の左心系の拡大によって、近くを走る気管が鼓動とともに圧迫されることで咳が出ます。
また、慢性的で持続的な刺激は気管に炎症を引き起こす場合もあります。

心拡大

小型犬や超小型犬の場合、体に対して心臓の大きさの割合は大きくなっています。
レントゲンで見てみても、正常でも意外と心臓が大きく見えることがありますよね。
心臓病などによって心臓が大きくなると、それだけで肺を圧迫し、咳を誘発することがあります。

咳の際に注意すること

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咳は、呼吸器や循環器といった重要な臓器からの異常のサインです。

一刻も早く原因を特定し、治療を行わないといけないことも少なくありません。
そのためには迅速な診断が必要不可欠です。咳が見られる時に動物病院を受診する際、どんなことに注意すればよいのでしょうか。

問診で聞かれること

普段咳が出ていても、診察室内でタイミングよく咳が出るとも限りませんし、犬は緊張で症状を隠してしまうこともあります
家でのリラックスしている時間にどんな症状が現れているかを飼い主さんが把握しておくと問診がスムーズに進みます。

  • 咳の様子: 咳の大きさ、痰の有無、吐くような仕草、継続時間など
  • 咳をする環境や時間帯: 寒い部屋ではないか、夜間に多いか昼夜関係ないかなど
  • いつから: 急性か慢性か
  • 既往歴: ワクチン接種、犬糸状虫の予防歴、アレルギーの有無、嘔吐の後など

動画撮影

咳の様子を口頭で説明するのも大変だと思います。

そんな時は、家での咳の様子を動画に撮っておくとよいでしょう。動画には診断に必要な情報が多く含まれていることもあり、非常に有効です。

まとめ

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咳は犬にとってもつらく、疲れる症状です。

原因となる疾患を乗り越えるためにも、全身状態を整える必要があり、咳はそれを邪魔します。
咳が長引くと、危険な疾患のほかにも犬の生活の質(QOL)が大きく下がってしまう原因となるので、見つけたらすぐに動物病院を受診してください。

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