犬を飼っている方は、飼い犬と顔や性格が似ていると言われたことがあるかもしれません。
あるいは、「あの犬、飼い主とよく似ているな」と思ったことが一度はあるのではないでしょうか。
「飼い主とペットが似る」とはよく聞きますが、実はこの現象、実験によって科学的にも裏付けられているのです。
今回は、飼い犬と飼い主が似るプロセスについて、実験結果とともにご紹介していきます。
この記事の目次
飼い主と顔が似るって本当?
犬と人間では顔の作りが違いますから、そっくりというわけにはいきませんが、「どこか顔の雰囲気が似ている気がする」「目のあたりがなんとなく似ている」と感じたことがあるかもしれません。
似ているような雰囲気を受けるペットと飼い主の顔ですが、果たして本当に似ているのでしょうか。
心理学者が行った実験
関西学院大学の心理学者、中島定彦氏が2009年に行った実験は、「飼い主と犬の画像をバラバラに配置し、全くの他人が正しいペアを作ることができるのか?」というものでした。
実験では、飼い主や飼い犬の目元、口を隠した画像を用いて、500名以上の参加者にペアを作ってもらい、顔のどのパーツが特に似ているのかを実験しました。
実験の結果
実験の結果、何も加工をしていない画像でペアを作ったケースでは、最高で80%の精度で正しいペアを作ることができました。
また、目元を隠した画像を用いた場合では正答率は50%程度まで低下しましたが、目元だけを写した画像では約75%の正答率を示したそうです。
このことから、飼い主と犬の顔が似ていることは事実であり、特にその目元に共通の特徴が存在しているとの結論が出されました。
「顔が似てくる」わけではない…?
飼い主と飼い犬は顔が似ているという結論が出ましたが、中島氏はこれを、「単純接触効果」によるものだと推測しました。
単純接触効果とは、ある刺激(図形や味、においなど)に触れれば触れるほど、それを好きになっていく現象のことです。
つまり、飼っているうちに愛犬が飼い主に似てくるのではなくて、人が犬を選ぶ際に、見慣れた自分の顔に似た犬を無意識のうちに選んでいるのではないかと考えたのです。
中島氏のブログサイト
https://sadahikonakajima.cocolog-nifty.com/nakajima/2013/10/test-1.html
飼い主と性格が似るって本当?
顔や表情の他にも、性格が似る場合もあります。
人間と同じように、千差万別な犬の性格ですが、飼い主と飼い犬の性格も、顔と同じように似るという結果がある調査を通して出されたのです。
性格の形成に関わる要素は?
犬の性格形成には、人間と同じように様々な要素が関わっているとされています。
- 生まれ持った性格
- 幼少期の環境
- 成長する過程での経験
- 犬種ごとの性格的特徴
社会心理学者の調査
米ミシガン州立大学の社会心理学者、ウィリアム・J・チョピク氏はこの中でも、「生まれ持った性格」と、「成長する過程での経験」に着目して調査を行いました。
チョピク氏の調査は、1681匹の犬の飼い主たちに、飼い主自身の性格と飼い犬の性格についてアンケートをとり、「飼い主と飼い犬の性格にどのような特徴があるのか」を調べるものでした。
調査結果
調査の結果、飼い主と飼い犬の間には、性格の類似点が存在していることが判明しました。
例えば、外向的で活発な飼い主の犬は元気で活動的、内向的でインドア派な飼い主の犬は臆病で人見知りしやすいなどの傾向がありました。
この他にも、真面目で誠実と自分を評した飼い主の飼う犬は言うことをよく聞く、人当たりがいい飼い主は社交的な犬を飼っているなどの例があり、両者は性格が似ていることが多いとの結論が出されました。
なぜ性格が似るの?
飼い主と飼い犬の性格が似る理由について、チョピク氏は2つの仮説を提唱しています。
1. 性格が合うペットを選んでいるため
飼い主と飼い犬の顔が似ている場合と同じく、飼い主が自身の性格に似ている犬を選んでいるという仮説です。
例えば、静かで落ち着いている犬を好む人もいれば、活発でアクティブな犬を飼いたいと思う飼い主もいます。
このように、飼い主は無意識のうちに自身が好む性格の犬を選択していると考えられます。
2. 生活していく中で似てくる
飼い犬は基本的に、飼い主の生活リズムに適応して生きています。
そのため、飼い主と一緒に生活していく中で、飼い犬の性格は飼い主によく似たものへと変化していくと考えられます
例えば、社交性が高く、頻繁に犬仲間に会いに行く飼い主だと、犬もその経験により社交性が高くなっている可能性があります。
参考論文
William J.Chopik(2019)”Old dog, new tricks: Age differences in dog personality traits, associations with human personality traits, and links to important outcomes”
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0092656618301661
生活習慣や仕草も似る?
飼い主と飼い犬の間で似ている点としては、顔や性格だけでなく、生活習慣、仕草などが挙げられるとされています。
群れで生活する犬は、本能的にリーダーの行動を真似する事があると言われています。
つまり、家族として生活する中で、リーダーである飼い主を行動の真似をしたがるのです。
そのため、同じ生活リズム、同じ環境で過ごしているため、習慣や仕草も飼い主と似る傾向があるとされています。
まとめ
今回は、飼い主と飼い犬の顔や表情、性格が似る理由についてご紹介しました。
飼い主と飼い犬が似るという話はよく聞きますが、実際に実験や調査によって裏付けられているとは驚きですね。
飼い主にとって、愛犬は最高のパートナーであることに間違いありません。
家族として長い時間を過ごしている以上、似ているのも当たり前のことかもしれませんね。