みなさんが飼っている犬や、ご近所の犬に、しっぽが丸くて短い犬がいるかもしれません。
ブルドッグなど、遺伝的にしっぽが短い犬種もいますが、プードルやシュナウザーなど、多くの犬種は子犬のときにしっぽを切ることで短くなっています。
ではそもそも、なぜしっぽを切るようになったのでしょうか?また、しっぽを切る習慣は今後も必要なのでしょうか?
今回の記事では、犬の断尾について一緒に考えてみましょう。
この記事の目次
しっぽを切ることの多い犬種
一般的に、しっぽを短く切ることの多い犬種は以下の通りです。
- プードル
- ウェルシュ・コーギー
- シュナウザー
- アメリカン・コッカー・スパニエル
- ポインター
- ジャック・ラッセル・テリア
- ドーベルマン
- ピンシャー
- ヨークシャ・テリア
しっぽを切る理由①節税の名残
一説によると、18世紀頃のイギリスでは、貴族たちが鹿狩りを犬に邪魔されるのを防ぐため、犬の足を傷つけて速く走れないよう農夫たちに義務付けていました。もしそれが嫌ならば、税金を払わなければなりませんでした。
しかし、牧羊犬などとして働いてもらうには、ちゃんと走れないと困ります。そこで考えた農夫たちは、犬のしっぽを切ることで犬が速く走れないと思わせることで、納税を免れていたという説があります。
当時は、ほとんどの犬種が断尾の対象となりましたが、この制度の廃止と同時に徐々に断尾は減っていきました。しかし、いくつかの犬種では今でもその習慣が残り続けています。
しっぽを切る理由②働く犬の名残
牧羊犬や狩猟犬は、羊がたくさんいる中で走り回るため、しっぽが踏まれて怪我をしてしまう恐れがあります。
狩猟犬の場合も、小動物を追いかける際にしっぽが障害物に引っかかってしまったり、相手にしっぽを噛まれてしまったりすることがあったと考えられます。
使役犬としての役割を全うするためには、しっぽがない方が色々と便利だったのかもしれません。
しっぽを切る理由③病気の予防の名残
しっぽがあると、肛門の周りにうんちがつきやすく、そのままにしていると、菌が繁殖してしまう原因となります。
また、野外で活動することの多かった狩猟犬などは、木の枝などが当たってしっぽに傷がつきやすかったようです。傷ついた部分から病原菌が侵入することもあるため、しっぽを切断していたとも言われています。
こんな迷信も・・・
昔のヨーロッパでは、犬のしっぽを切除すると狂犬病が予防できるという迷信もあったそうです。
今ではもちろん、狂犬病の予防はワクチン一択です。
今でもしっぽを切った方がいいの?
現代ではしっぽがあるからといって病気になりやすいとは考えにくく、予防のためにしっぽを切る必要性はないと言えます。定期的に肛門周りの毛をカットしたり、綺麗に拭き取ってあげるだけで十分です。
しっぽを切る理由④見た目の問題
現代においてしっぽを切る理由は、ほとんどが「短い方がかわいいと思うから」でしょう。
特に、プードルやコーギーなどの犬種は、短くて丸いしっぽがトレードマークであるかのように、人々の間で定着してしまいました。
コーギーはしっぽが長いとキツネに見える?
コーギーにはもともと、キツネのようなふさふさのしっぽが生えています。被毛の色もキツネとよく似ており、誤って猟師に銃で撃たれてしまう恐れがあったことから、しっぽが切られていたとも言われています。
もっとも、現代社会では、街中を散歩しているだけでキツネと間違えられることはほとんどないでしょう。
断尾をめぐる賛否両論
しっぽを切られるのは痛いのか
断尾の賛否をめぐってもっともよく議論されるのが、「犬はしっぽを切られるとき、痛みを感じるのか?」です。
結論から言うと、人間は犬ではないので誰にも分かりません。ここでは、賛成派と反対派の双方の意見をご紹介します。
断尾に賛成派の意見
生まれたばかりの子犬は神経系統が未熟で、しっぽを切られても鳴いたり逃げたりしない。したがって、子犬はしっぽを切られても痛みを感じない、または痛みがとても小さい。
断尾に反対派の意見
動物は痛みを他者に悟られるのを防ぐため、本能的に痛みを隠そうとする習性がある。リアクションが弱くても痛みは感じているはずだし、実際には痛そうにする仕草が見られた例もある。
断尾でしっぽの役割が失われてしまう?
しっぽには、身体の平衡感覚を保ったり、他の犬とコミュニケーションをとるための重要な役割があります。
しっぽを切ることで、身体能力が落ちてしまったり、他の犬と上手に意思疎通が取れなくて攻撃的になったりする可能性があるため、しっぽは切るべきでないという意見も多いようです。
しっぽの切断が禁止されている国も
世界には、動物福祉の観点から、断尾が禁止されている国があります。
断尾が禁止の国リスト
・イギリス
・エストニア
・オーストラリア
・オーストリア
・オランダ
・キプロス
・スイス
・スウェーデン
・チェコ
・デンマーク
・ドイツ
・ノルウェー
・フィンランド
・ベルギー
・ポルトガル
・ルクセンブルグ
日本では
日本では、「動物を傷つけること」は禁止されていますが、断尾については明確な規定がなく、飼い主や販売者の判断に委ねられているの現状です。
一方、国際的なドッグショーに出展をするブリーダーたちを中心に、日本でもしっぽを切らない動きが高まりつつあります。
まとめ
今回は、犬のしっぽを切る歴史的な理由のほか、断尾をめぐる様々な意見や国際的な動きをご紹介しました。
しっぽを切るのには、古くから様々な理由があったようですが、そのほとんどが今では不要となったり、無意味であることが判明したりしたもので、現代においてしっぽを切る明確な理由はないと言えるでしょう。
しかし、犬種のイメージから、特に何も考えずに断尾済みの犬の購入をしたり、手術を希望したりするする飼い主さんもまだまだ多いのが現状です。今一度、本当にしっぽを切る必要があるのかどうか、様々な意見を踏まえて、自分なりによく考えてみてはいかがでしょうか。