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【獣医師監修】犬の嘔吐から考えられる疾患

2022.04.18
【獣医師監修】犬の嘔吐から考えられる疾患

嘔吐は、動物病院に来院する犬で最も多い症状の一つです。実際に愛犬が嘔吐している場面に遭遇したことのある人も多いでしょう。

では、その嘔吐は何によるものなのでしょうか?今回は臨床の現場でよく遭遇する嘔吐の原因疾患について、獣医師が解説していきます。

この記事の目次

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消化器疾患


嘔吐の原因としてまず考えられるのは消化器、特に胃や十二指腸といった上部消化管の異常です。これら疾患によって胃液の分泌が過剰になったり、物理的な胃粘膜の刺激によって嘔吐が誘発されます。

急性胃炎・十二指腸炎

【症状】
急性の嘔吐、食欲不振、腹痛など。消化器症状以外の全身症状は通常見られないが、脱水や誤嚥性肺炎などによって重篤化することもある。
【原因】
古い食事、異物、化学物質、薬剤など。腎不全や肝不全から続発することも多い。
【備考】
原因が明らかな場合(異物や薬剤)はそれを除去するが、明らかでない場合には胃腸炎の治療をしてみて反応を見る診断的治療を行うことが一般的。

慢性胃炎

【症状】
嘔吐、食欲不振。嘔吐の回数は、1日に数回から1~2週間に1回まで様々。
【原因】
アレルギー、異物、薬剤、微生物などが挙げられるが、原因は特定されないことが多い。
【備考】
急性胃炎と同様に確定診断には内視鏡検査が有用だが、全身麻酔を伴うこともあり現実的ではない。

胃内異物

【症状】
急性の嘔吐、食欲不振。若齢の犬は特に注意。
【原因】
胃内容物の排出障害、胃粘膜の刺激から嘔吐が誘発される。
【備考】
異物の材質や形などから催吐などの内科療法、もしくは胃切開などの外科療法といった治療方針を決定する。

胃拡張・胃捻転症候群

【症状】
嘔吐、腹痛、流涎、急激な腹囲膨満から昏睡。
【原因】
胃が空気と食物によって急激に拡張することによる。食後に運動した後に発生しやすいと言われている。
【備考】
大型犬で多く、小型犬ではほとんど見られない。胃破裂を起こすこともあり、早期の診断と治療が必要な緊急疾患である。

幽門狭窄

【症状】
嘔吐、食欲低下、体重減少。
【原因】
原因はよくわかっていないが、幽門部(胃の出口付近)が肥厚することで胃排泄障害が起こる。
【備考】
超音波検査やバリウム造影で診断し、根本的治療は外科手術による。

胃の腫瘍

【症状】
嘔吐、食欲不振、体重減少など。場合によっては吐血、メレナ(黒いタール状の便)、貧血などが見られる。
【原因】
犬の胃の腫瘍はリンパ腫が最も多いとされている。
【備考】
慢性胃炎、ポリープなどが危険因子と言われている。

他の内臓疾患


消化器疾患以外にも嘔吐が見られるものがあります。血液検査などを行うのは、これらの疾患を見逃さないためです。

膵炎

【症状】
嘔吐、腹痛、元気消失、下痢など。
【原因】
膵臓からは消化酵素が分泌されるが、その酵素によって自己組織が消化されることによって強い炎症が起こる。危険因子としては薬剤、感染、高カルシウム血症、肥満、全身性代謝性疾患(糖尿病、副腎皮質機能亢進症、慢性腎不全)、腫瘍などが挙げられる。
【備考】
急性の膵炎では発症後24〜48時間以内の早期に治療を開始することが重要。

尿毒症

【症状】
嘔吐、消化管潰瘍、発作、異常呼吸など。
【原因】
腎不全などによって尿毒素が体内に蓄積することによる。
【備考】
腎不全の原因としては熱中症、毒物、感染、腫瘍、ショックなどがある。

肝胆道系疾患

【症状】
嘔吐、腹痛、黄疸、食欲低下など様々。
【原因】
慢性肝炎、胆石症、胆嚢炎などによって症状が引き起こされる。
【備考】
定期的な血液検査や画像検査によって早期に発見することが望ましい。

子宮蓄膿症

【症状】
食欲不振、多飲多尿、嘔吐、腹部膨満、陰部から膿様のものが排泄されるなど。
【原因】
子宮内で細菌が増殖し、膿液が貯留する。
【備考】
卵巣からのホルモン分泌が深く関与しており、早期の避妊手術が最も効果的な予防法となる。

代謝性・内分泌疾患


ホルモンの分泌異常によっても嘔吐は引き起こされます。中高齢で発生しやすい傾向にありますが、いずれも放置すると危険な疾患ですので、しっかりと検査することをおすすめします。

アジソン病(副腎皮質機能低下症)

【症状】
虚弱、体重減少、嘔吐、吐出、下痢、多尿、徐脈、低体温、震え、痙攣など。
【原因】
副腎から分泌されるホルモン(グルココルチコイドおよびミネラルコルチコイド)の不足による。犬では特発性の副腎委縮によるものが多い。
【備考】
適切なホルモン治療を行えば予後は良好。

糖尿病

【症状】
多飲多尿、多食、体重減少、嘔吐、下痢、脱水、感染症、白内障、昏睡など。
【原因】
膵臓からのインスリンの分泌低下、あるいはインスリンの作用低下。
【備考】
犬の糖尿病は若齢発症のものと、3歳齢以降発症のものに分けられる。いずれの場合でも犬の糖尿病治療にはインスリンが必要となる。

病気ではない嘔吐


嘔吐の中には、病気ではない一時的なものもあります。とは言っても愛犬は気持ち悪いはずなので、原因があるのなら速やかに取り除いてあげるべきでしょう。
病気ではなくても、嘔吐が見られた際には放置することは望ましくありません。

乗り物酔い

【原因】
三半規管から小脳へ伝わった刺激が嘔吐中枢を刺激すると考えられている。
【備考】
長時間の移動の前には酔い止め薬を服用するという選択肢もある。獣医師まで相談を。

消化不良

【原因】
古い食餌などの給餌による。
【備考】
ご飯の賞味期限や保管方法には注意を。

まとめ


無数にある病気の中で、今回紹介したものはごく一部です。
一過性で自己限定的な嘔吐の場合には経過観察とすることもありますが、嘔吐が慢性化している場合には一度検査を受けましょう。

愛犬に体調不良が見られた時には、獣医師に相談し、適切な治療を受けさせてあげてください。

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