嘔吐や下痢といった消化器症状は、動物の体調不良の理由として一般的です。
これらの症状は肝臓や腎臓などの病気でも見られますが、基本的には消化管(胃、腸など)での異常が原因となります。
また消化管は食べ物が通過する道でもあり、消化管の機能が弱っている時には食事の内容にも気を使う必要があります。
そこで、今回は、消化器疾患における食事管理についてご紹介します。
この記事の目次
消化器疾患における食事管理の必要性とは?
犬や猫に消化器症状が認められている場合、消化管の運動低下や消化吸収の機能低下が起こっていると考えられます。
そんな状態のところに、さらに脂っこいものや消化に悪いものが入って来たら、何となく大変だというイメージがありますよね。
弱っている消化管に鞭を打つような真似をすれば、病気はますます悪くなります。
また、消化器疾患には、症状として食欲不振が現れることも多くあります。
食欲が無くても食べたくなる、その上でお腹に優しい食事が必要となります。
消化器疾患における食事に求められること
では、実際に消化器疾患の時の食事に必要なこととは何でしょうか。
ここでは、特に注意したい項目を挙げてみます。
高消化性(消化に良いもの)
消化性に優れている食物は、消化管に対する負担が少なく、食事中の栄養素を十分に吸収できます。
また、未消化の食物は悪玉菌の餌となることもあるため、しっかりと消化することはとても大切です。
ここで言う高消化性の食べ物とは、良質なタンパク質や良質な脂肪分を含む食品のことです。
高エネルギー(少量でもエネルギーが得られるもの)
活動をするためにはエネルギーが必要です。
しかし、エネルギーを得るために食べ過ぎてしまうと、消化管への負担となります。
少量でもしっかりとエネルギーが得られる食事を選択しましょう。
高嗜好性(ペットの食欲をそそるもの)
食欲不振の症状が見られる場合に、食べる気力を起こさせることも大切です。
確かに食べ過ぎは消化管に負担をかけますが、食べないことには体力が落ちてしまいます。
病気に打ち勝つためにも、ペットには良いものを食べてもらいたいのです。
食物繊維のバランス
食物繊維と聞くと、何となくお腹に良いような印象がありませんか?
確かに食物繊維は消化管の運動を促進し、体内の毒素を排泄するのを助けるはたらきがあります。
しかし、一方で、食物繊維は消化に悪いため、食事に配合しすぎると消化器症状を悪化させることもあります。
消化管のどこに異常があるのか、現在の症状は何が現れているのかなどを評価した上で、適切な量の食物繊維量を考えていきましょう。
水分
嘔吐や下痢によって体内の水分は失われています。脱水状態は循環血液量を減少させ、各臓器に悪影響を及ぼします。
また、食欲不振のせいで水を飲むのも気持ち悪い状態であることも考えられます。
そんな時に食事と一緒に水分を摂れるよう、缶詰タイプの食事や、ぬるま湯でフードをふやかすなどの工夫が必要です。
食事の量
ここで言う食事量は、カロリーベースの食事量のことです。
嘔吐や下痢が見られているのに、普段と同じ量を与えても消化管に負担を与えるだけです。
消化管を休めるためにも、いつもより少ない量から徐々に普段の量に戻していくなどの工夫が求められます。
例えば1日で1,000kcal必要な動物に嘔吐が見られた時には、まずは1日200kcal、徐々に増やしていって3~5日かけて1,000kcalの量に戻していくなどです。「消化管に休みを与える」ことが最優先となり、食事量が少ない時にもしっかりと栄養が摂れる食事が必要となります。
各メーカーのペット用おすすめ消化器疾患療法食
消化器症状は、犬猫で最も一般的に見られる症状であると言っても過言ではありません。
そのため、各メーカーでも消化管に配慮した様々な療法食を販売しています。
ロイヤルカナンの消化器サポート
消化器疾患を呈しているペットや、栄養要求性が高まっている動物に向けての療法食です。
消化性の高い原材料を使用し、少ない食事量でも十分なカロリーや栄養を摂取できるように調整されています。
さらに、健康的な腸内細菌バランスに考慮し、可溶性食物繊維を配合しています。
また膵炎などの脂肪を制限したい疾患の時には低脂肪タイプのものもあります。
ヒルズのi/d
高消化性と消化ケアに適した栄養素性を実現しているフードです。
この高消化性は、自然由来の可溶性繊維と不溶性繊維の適切なバランス配合によります。
また、オメガ3脂肪酸やオメガ6脂肪酸を配合することで、免疫系や皮膚被毛の健康も同時にサポートします。
ごはんを手作りする際の注意点
添加物や自然由来にこだわる方は、食事を自作するかもしれません。
そんな時に気になるのは、「お腹に優しいとは具体的にどういうことなのか」でしょう。
そこで、手作り食を与える際に注意したいことについてご紹介します。
必要な栄養素と食材
消化管に配慮するなら、以下のような食材をベースに食事を作ります。
- 良質なタンパク質:鶏ムネ肉、脂身の少ない肉、白身魚など
- 食物繊維:サツマイモ、キャベツ、オカラ、カボチャなど
食物繊維は、異常が大腸にあるか、胃や小腸にあるのかで配合すべき量が異なります。そのため例え下痢をしているとしても、自己判断で食事を変更するのはむしろ逆効果になることもあります。
消化器症状が見られている場合には一度動物病院を受診し、食事についても獣医師に指示を仰ぐとよいでしょう。
控えるべき食べ物
消化管に負担を与えるような食材はNGです。
- 脂っこいもの
- 大きくカットした野菜(野菜は細かく切りましょう)
基本的に消化しづらいものは与えないようにしましょう。
自分が気持ち悪い時に食べたくないものは、動物も食べたくありません。
まとめ
消化器疾患の治療には、内科療法と同時に食事の指導をすることがほとんどです。
求められる栄養やカロリーは、その子の年齢や体重、健康状態に左右されるために計算は複雑です。
わからないことがあれば、かかりつけの獣医師に相談してみることをおすすめします。