多くの犬は暑さに弱いため、愛犬の夏場の熱中症について日頃から気をつけている方も多いのではないでしょうか。人間と同様に犬の熱中症も、重症化すると命の危険もある恐ろしい病気です。
今回はそんな犬の熱中症対策について、読者の皆様に代わって筆者が気になる熱中症対策について獣医師である相澤啓介先生に質問をしました。それぞれの対策が有効なのかどうか、Q&A方式でご紹介していきます。
この記事の目次
氷を使った対策
犬に氷を食べさせる
Q:動物園のニュースを見ていた時、熱中症対策で動物たちに氷を食べさせていました。犬にも食べさせて大丈夫ですか?
A:水道水で作った氷、市販の氷であれば問題ありません。スーパー等にある保冷用の氷などは衛生面に不安があるのでやめましょう。また、氷を食べすぎると一時的に下痢を起こす可能性があるので、与えすぎには注意が必要です。
犬に氷水を飲ませる
Q:暑い日に飲食店に行くと氷水を出してくれるので人間は涼めるのですが、犬が暑そうにしている時に同じように氷水を飲ませても大丈夫ですか?
A:氷水を与えることに問題はありません。ただし、おなかが冷えると下痢を起こす可能性があるので、与える量には注意が必要です。
氷を使った対策のまとめ
氷を使った対策は有効だと言うことがわかりました。人間も同じですが、与えすぎには要注意!
犬種や体重、年齢などによっても適正量は異なるので、与える場合は少量からはじめて、毎日の便や体調を見て判断するようにしましょう。
体を水で濡らす対策
犬に霧吹きで水をかける
Q:インコを飼っている友人が熱中症対策で霧吹きをかけてあげていました。犬にも効果はありますか?
A:水が気化するときに熱を奪うので、一定の冷却効果はあるかもしれません。ただし、濡れすぎると被毛と皮膚の通気性が悪くなり、皮膚病のリスクが上がります。ちなみにインコに霧吹きも、水の粒子が細かすぎるのであまりよくないという意見もあります。
犬の体を濡れたタオルで拭く
Q:お散歩の後、暑そうにしているので、足を拭くタオルで全身も拭いて濡らしてあげています。その時、蒸れて皮膚病にならないか心配ですが、大丈夫ですか?
A.濡れた体を長時間放置すると、痒みなどの原因になることが考えられます。特に毛が長い犬種や毛が密な犬種では注意したほうがいいでしょう。
体を水で濡らす対策のまとめ
体を水で濡らす対策は、有効性が怪しいばかりか、別の疾病を招く恐れもあるようです。
あまりおすすめできる対策ではありませんので、別の熱中症対策を行ったほうが良いでしょう。
熱中症対策グッズ
保冷剤の材料について
Q:保冷剤とバンダナを使って自作のネックカラーを作る際、「吸水ポリマー」の保冷剤は誤食しても安全だが「エチレングリコール」の保冷剤は危険と聞きましたが、本当ですか?
A:どちらも誤食すると危険な素材です。誤食によって吸水ポリマーは胃破裂や腸閉塞、エチレングリコールは中毒を起こす可能性があります。飲食物でない以上、誤食には注意しましょう。
最近では食品添加物にも使用される「ゲル化剤」が使われている保冷剤もあるようです。使用している保冷剤の成分を把握しておくのも、万が一の時のためには重要です。
ネックカラーの重さについて
Q:お友達のチワワが自作の保冷剤ネックカラーを使っていたんですが、体格に対する保冷剤の重さから体調を壊したそうです。超小型犬は自作のネックカラーは危険ですか?
A.超小型犬や小型犬は頸椎に生まれつき不安定症を持っている子も多く、保冷剤の重さが首に負担になることがあります。
例えば、体重2㎏の子が20gのものを首に下げた場合、体重50㎏の人間に換算すると首から500mlのペットボトル1本をぶら下げているのと同じですから、かなり重たく感じるでしょう。重さが不安な場合は、着るタイプのクールウェアなどを利用すると安心かもしれません。
大型犬は筋肉もしっかりしていますし、ネックカラーを使用してもそこまで負担にはならないのではないでしょうか。
熱中症対策グッズで体が冷える可能性
Q:熱中症対策をしすぎて、逆に体が冷えてしまうことはありませんか?ネックカラーやクールウェアなどは犬が自分で外すことが出来ないので心配です。
A:犬も人間と同じように、体が冷えすぎることで体調を崩すことがあります。気温や湿度などを把握し、愛犬の様子を十分に確認しましょう。
散歩のときはネックカラーなどを使用し、家にいるときはクーラーや扇風機を使用した方が良いでしょう。
経口補水液について
Q:人間の熱中症対策では水よりもスポーツドリンクや経口補水液の方が良いとされていますが、犬にもあげた方がいいですか?人間用の経口補水液が良くない場合、代わりに与えると良いものは何かありますか?
A:脱水の改善や、効率的な水分補給には経口補水液が有効です。しかし、人間用の経口補水液やスポーツドリンクは糖分や塩分が多く入っているため、犬には適していませんので、犬用の経口補水液を使用しましょう。
経口補水液を常に与えるのではなく、普段は普通の水を飲ませ、「外出後に経口補水液を飲ませる」というような使い方をしましょう。
冷却ジェル枕について
Q:家を不在にする時エアコンを付けて外出するんですが、停電やエアコンの故障で犬が熱中症になる場合を考えて、冷却ジェル枕を置いています。誤食してしまう不安があるんですが、食べても体に影響はないですか?もし危険な場合、代わりに使える良いものはなんでしょう?
A:お使いのジェル枕に何の素材が使われているかは判断できませんが、基本的に誤食は避けたいところですよね。留守中ですぐに対応ができないかもしれないことも考えると尚更です。
ジェル枕の代わりにアルミプレートを使ってみてはいかがでしょうか。放熱性がよく意外とひんやりしているので好む子も多いですよ。
他にもアルミシートや冷感シートなども利用できます。ただし、これらはいたずらで咬んでしまうこともあるので、いたずら好きな性格の犬であれば、プレートタイプの物の方が安心です。
犬用の帽子ついて
Q:犬の熱中症対策グッズを探していたら「犬用の帽子」というものがありました。逆に暑いんじゃないかと思いましたが、効果はありますか?
A:まったく効果がないということはないと思います。ただ犬の場合、考えるべきは上からの太陽光線よりも、アスファルトなど下からの放射熱です。特に小型犬だとその影響を顕著に受けることになります。帽子は熱中症対策というよりも紫外線などから眼を守る意味合いが強いように感じます。
熱中症対策グッズのまとめ
現在は本当に多くの熱中症対策グッズが販売されています。その中には良いものから効果に疑問のあるものまで様々です。
誤飲や誤食しても問題ないものが使われていること、自分の愛犬、愛猫の体重に合ったものであることなど、謳い文句に惑わされることなく、きちんと判断して購入するようにしたいですね。
どうしても効果や使われている素材などに不安な場合は、かかりつけの獣医師に相談してみると良いでしょう。
冷房病(クーラー病)対策
犬の冷房病(クーラー病)について
Q:ニュースで人間は熱中症だけでなく冷房病(クーラー病)にも注意が必要だと言っていました。犬にも冷房病(クーラー病)はありますか?
A:あります。人間と同じようにクーラーの効きすぎによる体の冷えや、室内と外気の温度差で自律神経が狂うことが原因となるようです。クーラーの設定温度は高めでも、空気を動かすことで体感温度は下がりますので、扇風機やエアーサーキュレーターを有効に活用したいですね。
冷房病(クーラー病)対策のまとめ
動物もクーラーの効きすぎによって体調不良を起こす可能性があることがわかりました。
留守中などは体調不良に気づいてもすぐに対処ができないため、他の熱中症対策はもちろんのこと、日頃から快適に過ごせる温度設定やサーキュレータの配置などを考えておきたいですね。
最後に
犬の熱中症は命に関わることもあり、対策は欠かせません。今どき、短時間であっても車の中に放置するような飼い主がいらっしゃるとは思えませんが、毎年35度を超えることが普通になってしまった日本の夏は家の中も車の中と同様、気を抜くことはできません。
そんな背景もあってか、たくさんの熱中症対策の商品が販売されるようになった一方、それらの便利グッズを使うことで場合によっては体に負担がかかったり、誤食の原因になってしまったすることもあるので、飼い主が素材やその効果についてよく調べ、取り扱いや使用には注意するようにしましょう。
まだまだ暑い夏は続きますので、熱中症対策をしっかりし、犬も人間も元気に過ごしましょう。