愛犬が問題行動を抱えている場合、その原因を解明するのはプロのドッグトレーナーでもない限りとても困難です。「飼い主との関係性」、「犬の性格や癖」、「住環境」など、いろいろな要素が複雑に絡み合い、問題行動となっている可能性が高いと考えられます。
しかし、「ドッグトレーナーにお願いするのはハードルが高い」と感じる方も多いのではないでしょうか。
今回は、犬の問題行動の原因になりやすい、犬の「退屈」と「運動不足」に焦点をあてて、対策をご紹介していきます。トレーナーに依頼する前に、ぜひチェックしてみて下さい。
この記事の目次
①犬の退屈対策
一日のうちで犬がどのくらい暇な時間を過ごしているかは、その犬の「飼い方」「年齢」「体力」「性格」などによって大きく差が生じるため、残念ながらはっきりとはわかりませんが、多くの方が「自分の愛犬は暇そうにしているな」と感じたことがあるのではないでしょうか。
しかし、犬に退屈な思いをさせないように一日中遊んであげるのは、現実的に無理があります。また、犬によっては常に人と一緒ではなく一人の時間がほしい子もいますし、飼い主のかまい過ぎによって犬の自立心が育たず、他の問題行動を起こす可能性が出てきます。
ある程度は犬が一人で暇つぶしをしてくれるように、知育玩具などを使って一人遊びが出来るように習慣化させましょう。
犬のフードは食器からあげるべき?!
多くの家庭犬は、食器を使ってフードを食べているのではないでしょうか。食器から食事を摂るという習慣は、人間からみれば当たり前の行為ですが、犬から見ればそうとも限りません。
犬の退屈対策として、いつものフードを食器ではなく知育玩具に入れて、数回に分けてあげてみます。暇つぶしだけでなく、胃が拡張してねじれる「胃拡張・胃捻転症候群」の原因になる「早食い・一気食い」の予防が出来るというメリットもあります。
犬の精神科医も食事の時に使うように勧めていたコング
大型犬はこちらの方がおすすめ
苦労してエサを食べることで得られる「コントラフリーローディング効果」とは
知育玩具でフードを食べることをおすすめした飼い主の中には、「食べにくくして、意地悪しているみたいでかわいそう」とおっしゃる方もいました。しかし、食べにくくすることにはメリットがあると科学的に証明されています。
1963年に動物心理学者のグレンジェンセンの研究により、「動物は食事を苦労せずに得るよりも、なんらかの対価(労力)を払って得ることを好む」ということが明らかになり、「コントラフリーローディング効果」と名付けられました。これは犬だけではなく人間を含むほとんどの動物に当てはまります。
飼い主から簡単にもらったフードより、知育玩具などを使って苦労して得たフードの方が、犬にとっては価値のあるものになるということですね。知育玩具を使うことによって退屈対策だけでなく、いつものフードの価値が上がる効果が期待できます。
②運動不足対策
犬の運動不足も問題行動の原因になっている場合が多く見られます。こちらも犬の「年齢」「体力」「性質」などによって異なるため、愛犬にとって適切な運動量を見極める必要があります。
一般的に「小型犬は一日30分程度の散歩」、「大型犬は一日1時間程度の散歩を2回」となどど言われていますが、この説はあくまで目安です。「トイプードルの運動による消費カロリーの目安は一日〇〇カロリー」というような、具体的な数値は明示されていません。
「うちの犬は運動不足かも」と思った方は、まずは動物病院で健康診断を受けることをおすすめします。例えば、後ろ足を触ろうとすると咬む犬の場合、「後ろ足の関節に問題があった」などということは珍しくありません。
まずは健康であることを確認してから、運動不足の対策をしていきましょう。
犬の運動不足を解消するには、散歩の時間を増やすべき?!
犬の運動不足を解消法を考えた時、多くの方が「散歩の時間を長くしよう」と考えるのではないでしょうか。しかし、忙しい毎日の中で、「これ以上散歩の時間を取れない」という方もいらっしゃると思います。
筆者はそういったご相談者さんには「散歩の時間を少し減らして、その分犬と遊ぶ時間を増やしましょう」と、ご提案しています。
「散歩」と「飼い主との遊び」には、それぞれ次のようなメリットがあります。
散歩のメリット
- 気分転換、心身のリフレッシュ効果
- 様々な刺激を受け、ストレス解消や社会化につながる
飼い主との遊びのメリット
- もってこい遊び、引っ張りっこなどは犬の運動量が多い
- 飼い主との信頼関係を築くことが出来る
「犬の運動=散歩」と考えている方が多いのですが、それぞれのメリットを上手く組み合わせ、「散歩」と「飼い主との遊び」の両方を取り入れてみて下さい。
飼い主との遊びで犬のオキシトシンが増える
犬と飼い主が見つめ合うことで、幸せホルモンとも呼ばれる「オキシトシン」が、犬も人間も増えるというのは有名な話ですが、犬が飼い主と遊ぶことで犬のオキシトシンが増えるという実験結果があります。
アメリカの神経経済学者ポール・ザック博士は、犬が飼い主と「遊ぶ前」と「遊んだ後」のオキシトシンのレベルを計測したところ、「遊んだ後」のオキシトシンが57%上昇したと報告しています。
飼い主との遊びが犬にとって単に運動不足解消だけではなく、ストレス軽減に繋がる効果があることがわかる実験結果ですね。
まとめ
問題行動の原因になりやすい「退屈」と「運動不足」について解説しましたが、冒頭でもお話した通り、様々な要素が絡み合って問題行動の原因になっているのが実情です。
まずは、「退屈していないか」、「運動不足ではないか」をチェックしてみて、それでも問題行動が直らないようであればドッグトレーナーや獣医師に相談してみてはいかがでしょうか。