【犬図鑑】独特な外見と文化!中国、チベット原産の犬たちをご紹介

2025.11.18
【犬図鑑】独特な外見と文化!中国、チベット原産の犬たちをご紹介

近代まで一般家庭で犬を飼うことが難しかった中国。犬の文化も独特で、西洋の犬種との交配をあまりしてこなかったため、見た目も個性的な犬たちが多く、強く印象に残ります。

今回は、そんな中国、チベット原産の犬たちやその歴史、文化などをご紹介していきます。

カッコ内は2022年におけるジャパン・ケネル・クラブ(JKC)の登録頭数と順位を表します。

この記事の目次

中国原産の犬

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中国原産の犬種については歴史的な資料が乏しく、はっきりとわかっていないことが多いのですが、一見しただけでもとても独特な外見をしている犬が多いという特徴があります。
ここからは、そんな中国原産の犬種をご紹介していきます。

パグ(12位、5,274頭)

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日本でも人気のあるパグは、鼻ぺちゃでシワのある顔、大きな瞳と愛嬌のある表情が特徴的です。

パグの最古の記録は中国にあり、紀元前400年頃にはすでに存在していたとされる非常に歴史の古い犬種です。チベットの仏教寺院でも愛玩犬として飼われた記録があり、中国では皇帝の膝の上で過ごす「宮廷の膝犬(ラップドッグ)」として大切に扱われてきました。

その後、オランダ東インド会社の商人によって17世紀頃にヨーロッパへ伝わり、オランダを中心に貴族や上流階級の愛玩犬として人気が高まりました。こうしてパグは上流社会に愛される宮廷犬としてヨーロッパ各地に広まっていったのです。

ペキニーズ(19位、3,132頭)

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首周りの豊かな被毛が特徴で、小型ながら獅子を思わせる堂々とした姿をしています。

ペキニーズは古くから中国の宮廷で大切に飼われてきた犬で、皇族以外が飼育することは許されない“門外不出”の宮廷犬として長い間守られてきました。

宮廷内での地位は非常に高く、犬たちは絹のクッションで過ごし、時には正式な官位を授けられることもあったと伝えられています。また、宮廷の犬を盗んだ者には厳しい罰が科され、死罪に処されたという記録が残るほど価値の高い存在でした。

清朝末期、ペキニーズは西太后からも深く愛されていた犬として知られています。

チャイニーズ・クレステッド・ドッグ(50位、177頭)

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チャイニーズ・クレステッド・ドッグには「ヘアレス」と「パウダー・パフ」の2種類のタイプがいます。ヘアレスは頭部から首にかけて(冠毛)と足先、尾だけ毛があり、その他の部分にはほとんど被毛がありません。一方、パウダー・パフは全身が柔らかい長毛で覆われています。

その非常にユニークな外見から古くから世界各地で知られていましたが、正確な起源は明らかではありません。一説には、アフリカのヘアレス犬を祖先とし、それを中国で小型化して発展したともいわれています。

また、他の記録には中国の漢代にはすでに家庭で飼われていたとされるなど、歴史の古さをうかがわせる説もあります。

チャウ・チャウ(51位、161頭)

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紀元前から飼育されている歴史ある中国の土着犬チャウ・チャウ。古くから番犬や狩猟犬として人々の暮らしに関わり、その獅子のような風格から中国王朝でも特別な存在として扱われてきました

中国では2000年以上前から知られ、漢代の陶器や彫刻にも現在のチャウ・チャウとよく似た犬が描かれています。

チャウ・チャウが西洋に広く知られるようになったのは18~19世紀頃。東アジアとの交易船でイギリスに持ち込まれ、ロンドンでは「中国の犬」として注目を集めました。

その後、19世紀後半から20世紀初頭にかけてショーにも出陳され、イギリスやアメリカで家庭犬としての人気が徐々に高まっていきました。

シャー・ペイ(91位、25頭)

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チャウ・チャウと同様に青黒い舌を持つシャー・ペイは、古くから中国で飼育されてきた犬種です。ただし、両者に遺伝的な関連があることは確認されていません。

特徴的な深いシワは、古代中国で番犬や護衛犬として使われていた際、攻撃を受けても致命傷になりにくいように役立ったといわれています。体にゆとりのある皮膚が「鎧」のように機能し、敵に噛まれても致命的なダメージを避けられると考えられていました。

なお、「シャー・ペイ(沙皮)」という名は中国語で「砂のような、ざらざらした皮」を意味し、独特の被毛の質感に由来しています。

チベット原産の犬

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チベット原産の犬種はチベット仏教と密接な関係があり、寺院でとても大切に飼われていた犬が多いという特徴があります。
ここからは、そんなチベット原産の犬たちをご紹介していきます。

シー・ズー(10位、7,686頭)

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日本でも人気のあるシー・ズーは、ラサ・アプソとペキニーズを交配して生まれた犬種と考えられています。一部はヨーロッパに渡ったものの、ペキニーズと同様にほとんどが中国の宮廷で飼育され、「神聖な獅子犬」として大切にされていました。

1930年代に本格的にヨーロッパに渡ったシー・ズーですが、現地ではよく似た犬種のラサ・アプソと混同され「アプソ(Apsos)」として明確に区別されない時代もありました。

そこで、鼻ぺちゃで脚が短い犬を「シーズー」口も脚もやや長い犬を「ラサ・アプソ」と犬種として区別するように繁殖されて、現在のスタイルに至ったと言われています。

ラサ・アプソ(95位、19頭)

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ラサ・アプソの起源は、チベット仏教の寺院で飼育されていた犬だと考えられています。チベットでは「人が亡くなった後に魂が宿る犬」と言われており、僧侶たちによって長く庇護を受けてきました。そのため、数世紀に渡って高僧や貴族が独占し、門外不出の犬として扱われてきました

特別な犬として中国の宮廷へ雄犬が送られたことがあり、この犬がシー・ズーやペキニーズの祖先になったと考えられています。

チベタン・スパニエル(98位、17頭)

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チベットに古くからいた犬種で、数百年もの間チベット仏教の寺院で大切に飼育され、歴代のダライ・ラマにも寵愛されていました。犬種名に「スパニエル」と入っていますが、猟犬のスパニエルのような活動はしていません。そのため、英語圏では「ティビー(Tibbie)」の愛称で親しまれています。

チベタン・テリア(104位、14頭)

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チベタン・テリア(Heisstudying, CC BY-SA 3.0, ウィキメディア・コモンズ経由で)

全身が長い被毛に覆われ、体高が40cm程度、体重が8~14㎏の中型犬です。

チベタン・テリアはチベット仏教の寺院で「幸福を招く守護犬」として神聖化され、厳重に管理されてきました。そのため、手放すと幸せも逃げると信じられており、売買されることがなく、幸福をもたらす贈り物として大切に扱われてきた歴史があります。海外に知られるようになったのは1920年頃で、ここ100年程のことです。

名前に「テリア」と付いていますが、テリア種とは血縁関係がなく、容姿がテリアに近かったためこう呼ばれています。

チベタン・マスティフ(2022年は登録0頭)

2013 Westminster Kennel Club Dog Show- Tibetan Mastiff GCH Sierras'Sasha-Yakone Nanuk (8469240739) (cropped)

チベタン・マスティフ(Pets Adviser from Brooklyn, USA, CC BY 2.0, ウィキメディア・コモンズ経由で)

体重が64~82kgにもなる超大型犬のチベタン・マスティフ。豊かな被毛を持つ個体は、まるでライオンを思わせるような風格があります。

この犬種はヒマラヤ地域で遊牧民の作業犬や、チベットの僧院を守る護衛犬として古くから活躍してきました。アリストテレスの記述や、13世紀にアジアを訪れたマルコ・ポーロの記録にも登場する非常に古い犬種です。

近年、中国の一部地域では富裕層のステータスシンボルとして高額取引され、数千万円規模の値で販売されることもありました。しかし、飼育の難しさから遺棄が問題となり、都市部では危険犬種として飼育を規制・禁止する地域もあります。

政治の影響で絶滅しかけた犬種も

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1950年代に共産主義革命が起こると、「犬の飼育は非常に贅沢なこと」とみなされるようになり、多くの飼い犬が処分されてしまいました。

「シャー・ペイ」、「シー・ズー」などは、絶滅寸前まで追い込まれましたが、それ以前に欧米に渡っていた犬たちを繁殖させることで、危機を脱したという歴史があります。

また、多くの犬の命と共に、歴史的な記録も処分されてしまい、中国やチベット原産の犬たちの起源や犬種の歴史の多くが謎に包まれています

宮廷や寺院で大切にされる

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「パグ」、「ペキニーズ」、「シー・ズー」は中国の宮廷で、「ラサ・アプソ」、「チベタン・スパニエル」、「チベタン・テリア」などはチベットの寺院で寵愛されてきた歴史があります。

そして、ただ可愛がられたというより、神聖な存在として大切に扱われていた点は、非常に独特な文化で興味深く感じられるのではないでしょうか。

また、宮廷や寺院のみで伝統的に飼育されていて、近代まで海外に出ていない犬種が多いのも特徴的です。

最後に

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非常に独特な外見の犬種や犬の文化を持つ中国。

昔から犬の肉を食べる文化もありましたが、現代では「犬はパートナーや家族」という意識や、動物保護団体の活躍など、犬との付き合い方も変化しつつあります

一般市民と犬との歴史が浅い国でもあるので、動物福祉の面でどう変わっていくのか、注目していきたい国の一つですね。

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