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【獣医師監修】犬の早期避妊・去勢手術のメリット・デメリット

2023.06.25
【獣医師監修】犬の早期避妊・去勢手術のメリット・デメリット

近年では生殖器疾患の発生予防や問題行動の改善などの観点から、犬における避妊手術や去勢手術が一般的になっています。

アメリカではシェルターから譲渡される子犬に早期の避妊/去勢手術が施され、譲渡後の繁殖を抑えることで犬の殺処分数を減少させた実績があります。また、アメリカでは生後8~16週に行う早期避妊手術や早期去勢手術が普及していますが、日本ではまだ馴染みが薄いようです。

では、避妊手術/去勢手術を行うのに最適な時期とはいつなのでしょうか。そして、早期に手術を行うことで、子犬の身体への影響はないのでしょうか。

今回は犬の早期避妊/去勢におけるメリットとデメリットについて解説します。

この記事の目次

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日本における避妊手術と去勢手術

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日本の動物病院では性成熟後の生後7ヵ月以降に手術を行うことが多いように思います。手術自体は生後2~3カ月でも可能ですが、性成熟後に行うのは全身麻酔の安定性を考えてのことです。

また、日本では小型犬や超小型犬と呼ばれる犬種が多く飼育されている傾向にあり、これらは乳歯の生え変わりがうまくいかずに乳歯遺残となることが多くあります。乳歯の生え変わりは生後6か月頃に起こるため、万が一乳歯が残ってしまっても性成熟後の避妊/去勢手術で麻酔をかける際に同時に処置できるのも大きな要因となっているのではないでしょうか。

避妊/去勢手術の推奨時期

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メスの避妊手術は乳腺腫瘍の発生予防効果が期待でき、これは手術時における発情回数が大きく関わっています。つまり、メスでは初回発情前、あるいは1回目発情と2回目発情の間に手術を行うことが推奨されます。

一方で、オスの去勢手術は実施時期による特定の病気の予防効果は報告されていないため、手術の推奨時期はありません。担当獣医師としっかりと相談の上、加えて後述する手術時期によるメリットとデメリットをよく把握した上で時期を決定すると良いでしょう。

早期避妊/早期去勢のメリットとデメリット

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早期であるかそうでないかに関わらず、避妊/去勢手術には主に以下のようなメリットとデメリットがあります。

  • 肥満傾向:ホルモンバランスが崩れるので脂肪がつきやすくなる傾向にある
  • 生殖器疾患を始めとするいくつかの疾患の予防効果:乳腺腫瘍や子宮蓄膿症(メス)、精巣腫瘍や肛門周囲腺腫など(オス)
  • 行動の変化:去勢手術におけるマーキングの減少、攻撃性の抑制など

早期避妊/早期去勢のメリット

生後8~16週における早期の避妊/去勢手術のメリットを見ていきましょう。
アメリカでこれらが普及しているのは、子犬の譲渡における望まない妊娠を避けるためですが、それ以外にもメリットはあるのでしょうか。

メリット1. 問題行動(マーキングなど)が習慣化する前に抑制できる

マーキングなど、犬と一緒に生活する上で困る一部の問題行動は卵巣や精巣から分泌されるホルモンに誘発されます。

これらの行動が習慣化した後に手術を行っても、その行動が減少あるいは消失することは難しいかもしれませんが、問題となる行動が起こる前に性腺除去手術を行うことで、習慣化を防ぐことができます。

メリット2. 術後の回復が早い、トラウマになりにくい

若齢の方が術創の回復が早いと言われています。

また、手術で怖い思いをした時に、トラウマになりにくいとも言われています。動物病院や獣医師を嫌いになりにくいのは、今後動物病院にかかるときにストレスが少なくなる可能性が考えられます。

早期避妊/早期去勢のデメリット

デメリット1. 犬種(特に大型犬)によっては特定の疾患のリスクが増大する

早期避妊/早期去勢手術は骨関節の発達に影響があることが報告されています。特に、大型犬における影響は大きく、多くの犬種で股関節異形成や前十字靭帯断裂のリスク増大が問題となります。

そのため、大型犬など特定の犬種では、乳腺腫瘍の予防効果を考えて発情前に避妊手術を行うことを基本としながらも、他の疾患リスクも考慮しなければならないとされています。

現在報告されている、犬種別の早期避妊/早期去勢手術による疾患の発生リスクについて表にまとめます。

犬種 早期避妊/早期去勢のリスク
ゴールデンレトリーバー 12カ月齢未満の去勢でリンパ腫、股関節異形成、前十字靭帯断裂のリスク増大
12カ月齢未満の避妊で前十字靭帯断裂のリスク増大
ラブラドールレトリバー 6カ月未満の去勢で肘異形成、前十字靭帯断裂のリスク増大
2歳未満の避妊で股関節異形成のリスク増大
ロットワイラー 12カ月未満の避妊および去勢で骨肉腫のリスク増大
ジャーマンシェパード 12カ月齢未満の避妊および去勢で前十字靭帯断裂のリスク増大
メスでは尿失禁のリスクも増大
ビーグル 12カ月齢未満の去勢で関節障害のリスク増大
バーニーズマウンテンドッグ 12カ月齢未満の去勢で関節障害のリスク増大
ボストンテリア 12カ月齢未満の去勢で悪性腫瘍のリスク増大
ボクサー 2歳未満の避妊および去勢で悪性腫瘍のリスク増大
コッカースパニエル 6カ月未満の去勢で関節障害のリスク増大
2歳未満の避妊で肥満細胞腫などの悪性腫瘍のリスク増大
コリー 12カ月齢未満の避妊で尿失禁、悪性腫瘍のリスク増大
コーギー 6カ月未満の去勢で椎間板ヘルニアのリスク増大
ミニチュアプードル 12カ月齢未満の去勢で関節障害のリスク増大
スタンダードプードル 2歳未満の去勢で悪性腫瘍のリスク増大
シェルティー 2歳未満の避妊で尿失禁のリスク増大
シーズー 2歳未満の避妊で悪性腫瘍のリスク増大
雑種20~39kg 12カ月齢未満の避妊および去勢で関節障害のリスク増大

デメリット2. メスでは早期避妊手術によって攻撃性が大きくなることがある

一般的にメス犬は何回か発情を経験することによって雄性行動を抑制しています。
これがなくなることから雄性行動である攻撃が発現すると考えられています。

成犬や高齢犬における避妊/去勢手術

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子犬の時期に避妊/去勢手術を行わないといけない、ということはありません。

愛犬に手術を受けさせるということは大きな決断です。愛犬が大きくなってから手術を受けさせることもあるかもしれませんが、子犬の時と比較してメリットやデメリットはどんなものがあるのでしょうか。

メリット

最大のメリットは、子供を残すか十分検討できることです。
特に同居犬同士で繁殖させたいという希望がある場合には、避妊/去勢手術を行うべきではありません。当然ですが手術した後に生殖機能を戻すことはできません。

デメリット

デメリット1. 麻酔のリスクが高くなる

高齢になるに従って麻酔のリスクは上がります。特に、他に病気を患っている場合には、全身麻酔は危険です。
大きな理由もなく避妊や去勢手術を受けさせることはやめましょう。

デメリット2. 乳腺腫瘍などの疾患の予防効果が低下する

メスの避妊手術における乳腺腫瘍の予防効果は、何度か発情を経験した後では小さくなります
病気の予防を目的とするなら、子犬の時期に手術を行った方がいいでしょう。

デメリット3. マーキングなどの行動が習慣化している場合、手術をしても行動が消失しないことがある

早期避妊/去勢手術におけるメリットの項で述べましたが、問題行動改善の目的で手術を受けても、その行動が習慣化されている場合には効果が薄い可能性があります。

まとめ

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早期に避妊/去勢手術を行うことには良い点も悪い点もあるので、かかりつけの獣医師と十分に相談しましょう。

また、体の小さい子の場合には手術に技術を要することもあります。かかりつけの動物病院が早期の手術を行えるのかも確認したほうが良いでしょう。

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