犬種や個体によって大きく異なりますが、一般的には10~12歳以降のハイシニア期になると歩行に問題が見られ始める傾向があります。
この記事では、歩行の介護を4段階に分け、ふらつきが出始めた状態から完全に歩けなくなる状態までを解説します。愛犬に無理のない範囲で活動させ、イキイキとした老犬生活を過ごせるようにサポートしてあげましょう。
この記事の目次
犬の歩行機能の低下の過程
多くのシニア犬は、以下のような段階を経て歩行機能が衰えていきます。お家にシニア犬がいる方は、愛犬が現在どの段階にいるのかをチェックしてみましょう。
ただし、昨日までは普通に歩けていたのに急に歩けなくなったような場合は、何らかの病気の可能性がありますので、まずは動物病院を受診することをおすすめします。
1. 歩くのがおぼつかない
シニア期に入ると、徐々に足の筋肉が衰え、ふらつきやよろけることが増えたり、足で体を支えきれずに足がクロスしたりするようになります。
2. 自力で立ち上がれないが、歩くことはできる
さらに足の筋力が衰えると、自力で立ち上がれなくなります。しかし、立ち上がれれば、ふらつくことはあるものの、自力で歩くことは可能です。
3. 後ろ足が踏ん張れず、自力で歩けない
筋力の衰えがさらに進むと、立たせてあげても自力で歩けなくなっていきます。しかし、この段階では補助具などを使用してサポートすることで歩行が可能です。
4. 補助があっても歩けない
補助しても歩くことが難しくなり、寝たきりの状態になります。
介護度①歩くのがおぼつかない
歩行時にふらつきなどが見られるようになったら、ハーネスを使用して歩行をサポートしましょう。
中~大型犬の場合は、背中に手を入れて支えるハンドルのついた通常のハーネスを使用し、ふらついた時に支えてあげましょう。この際、リードを短めに持つと、犬の体をよりコントロールしやすくなります。
小型犬の場合は、人間の手から犬の背中まで距離があるため、よろけた時にすぐに支えられません。そのため、介護用のハーネスの利用をおすすめします。
介護度②自力で立ち上がれないが、歩くことはできる
自力で立ち上がれなくなった場合は、立ち上がる際に補助してあげて、その後は自力で歩かせるか、先述したハーネスを使用して歩行を補助しましょう。
立ち上がりの補助方法
- 急に触られて犬が驚かないように「立つよ~」と声をかける
- 片手で犬のお腹の下を支え、もう片方の手で後ろ足の付け根辺りを支えて持ち上げる
- 犬の前足を突っ張らせながら、後ろ足を持ち上げて立たせる
立たせる際には、床材によっては足が滑ってしまう場合があります。そのため、犬が寝そべる場所の下にバスタオルやヨガマットなどを敷くことで滑りにくくなるので、ぜひ試してみてください。
また、犬の足裏の毛が伸びていて滑りやすい場合もあります。定期的に足裏の毛をカットし、肉球に専用クリームやワセリンを塗ってケアすることで滑りを軽減できます。
介護度③後ろ足が踏ん張れず、自力で歩けない
立たせてあげても後ろ足で踏ん張れず、ヘナヘナと座り込んでしまうような場合は、後ろ足用の歩行補助ハーネスを使って歩かせてあげましょう。
胴体のみを支えるタイプの補助ハーネスは、パンツタイプに比べて装着が簡単というメリットがありますが、犬の体型によっては装着がズレて使いにくいというデメリットもあります。
介護度④補助があっても歩けない
いよいよ歩けなくなってしまった場合は、基本的には抱っこで移動します。歩けなくても、外出を制限しなければならないような病気がない限り、気分転換や認知症予防のためにも、お散歩に出ることをおすすめします。
小型犬の場合は、室内では抱っこで、外出時にはペットカートやペットスリングを利用しましょう。
大型犬の場合は、室内では毛布など滑りやすい布に乗せ、二人がかりで四方を引っ張り、ゆっくりと滑らせながら移動します。また、移動が楽になる介護用品もあるので、そちらを利用することも検討してみてください。
大型犬の外出時に使用できるペットカートもありますが、サイズがかなり大きいため、「カートが大きすぎて玄関から出られなかった」といった問題が起こることもあるようです。カートの乗せやすさやサイズ選びには注意しましょう。また、坂道ではかなりの力が必要になるため、特に下り坂では注意が必要です。
歩行介護の3つのポイント
シニア犬の歩行介護において、押さえておきたいポイントを3つ解説します。
1. まずは動物病院を受診する
病気がある犬を無理に歩かせるなど、良かれと思って行った行為が、犬にとって大きな苦痛になる場合もあります。かかりつけの獣医師に、希望する介護方針を伝え、医学的な判断を仰ぎましょう。
2. 声をかけてから犬に触る
歩行介護に限らず、介護全般において重要なポイントです。シニア期を過ぎると耳が遠くなる傾向があり、突然触られることに驚いたり、びっくりして咬みついてしまうこともあります。介護を始める前に、「〇〇するよ~」と声をかけ、犬が気づいてからケアを始めましょう。
3. 頑張りすぎない
体の大きな大型犬の介護だけでなく、小型犬の場合でも長時間前かがみの姿勢をとることで、飼い主が首や腰を痛めてしまうこともあります。また、愛犬が年老いてだんだん弱っていく姿を見ていると、精神的に辛くなる場合もあるでしょう。
愛犬の状態と同じくらい、ご自身の状態もしっかり把握しましょう。辛さを感じたらデイケアを利用したり、家族や友人に頼ったりして、愛犬の介護を継続するために自身のケアも大切にしてください。
まとめ
年をとって徐々に歩けなくなっていく愛犬を見るのは辛いものです。しかし、残された時間を老犬なりにもイキイキと過ごさせてあげたいものですね。
この記事が皆さんと、その愛犬の幸せな老後に役立てれば幸いです。