皆さんは、愛猫の尿を毎日観察していますか?トイレの掃除は面倒かもしれませんが、尿には愛猫の健康状態が反映されています。
特に尿の色は、しっかりと毎日チェックしておくべき健康のバロメーターです。猫で多く見られる腎臓や膀胱の異常が、尿色の異常となって現れることがあるためです。
今回は猫の尿異常、特に尿色の異常で考えられる疾患について解説します。
この記事の目次
赤色尿
尿が赤い原因としては、血液の混入、あるいは血色素の混入が考えられます。血尿は膀胱や腎臓からの出血、血色素尿は赤血球の破壊によって起こります。
明らかに赤い尿であれば気付くのも容易かもしれませんが、薄い赤色の場合はよく観察しないと見落としてしまう可能性もあります。
尿石症
【症状】
血尿、頻尿、排尿時疼痛、トイレ以外での排尿など。結石が形成される部位によっては閉塞を起こし、無尿、急性腎不全(嘔吐、流涎、発作、低体温、ショックなど)を引き起こすこともある。
【原因】
食事などから起こるミネラルバランスの乱れや、細菌感染によって尿のpHが変化することで結石が形成される。遺伝的に結石ができやすい猫種(ヒマラヤン、アメリカンショートヘアー、スコティッシュフォールドなど)も存在する。
【備考】
尿pHをコントロールするフードにする、常に飲水できる環境にするなどで予防は可能。避妊去勢後は結石が出来やすいので注意。特に雄は尿道が非常に細く、尿道閉塞を起こしやすいので要注意。
特発性膀胱炎
【症状】
血尿、頻尿、排尿時疼痛、トイレ以外での排泄など。
【原因】
原因は明らかになっていないが、ストレスが関与していると言われている。結石や感染、腫瘍などによる膀胱炎の所見がない場合に本疾患が疑われる。
【備考】
引っ越し、近隣の工事、帰省による人の出入りなどによって発症することが多い。
膀胱腫瘍
【症状】
血尿、頻尿、排尿障害、失禁など。
【原因】
移行上皮癌、扁平上皮癌などが膀胱に発生することで起こる。
【備考】
猫における膀胱腫瘍の発生は稀と言われているが、高齢猫で血尿などの泌尿器症状が現れた場合にはしっかりと鑑別する必要がある。検査には超音波検査や造影X線検査が用いられるが、いずれも無麻酔での処置が可能。
タマネギ中毒
【症状】
嘔吐、下痢、食欲不振、貧血、血色素尿(赤〜赤黒い尿)、頻呼吸、頻脈など。
【原因】
タマネギ、ネギ、ニンニクなどの誤食によって、赤血球が破壊されることによる。
【備考】
タマネギ中毒を引き起こす量については個体差が大きい。そのため少量でもタマネギ類を誤食した可能性があれば動物病院に相談する。
淡黄色尿
漢字で書くと難しく感じられますが、尿がいつもより薄い色の状態を指します。薄い尿が見られる時の多くは、飲水量および尿量の増加も認められます。
猫砂や新聞紙などトイレの形態によっては観察しにくいところではありますが、水の量やトイレに行く回数などと併せて観察するといいでしょう。
腎不全
【症状】
多飲多尿、尿色が薄い、食欲不振、元気消失、嘔吐、脱水、貧血、発作など。
【原因】
腎臓における炎症、微生物(細菌やウイルスなど)の感染、免疫異常、結石などの尿管や尿道への閉塞などが原因となる。
【備考】
腎不全において最初に症状が現れるのは尿である。尿量および尿色に留意することは腎不全徴候の早期発見に繋がる。
甲状腺機能亢進症
【症状】
多飲多尿、嘔吐、下痢、活動性亢進、食欲増加、体重減少、脱毛など。
【原因】
甲状腺腫瘍や過形成によって、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで症状が現れる。
【備考】
7歳齢以上の高齢猫では、半年に一度の健康診断によって血液中の甲状腺ホルモンを測定すると、本疾患の早期発見に繋がる。
糖尿病
【症状】
多飲多尿、嘔吐、下痢、脱水、便秘、低体温、体重減少など。感染症(皮膚感染症、膀胱炎、子宮蓄膿症など)や白内障を引き起こすこともある。
【原因】
猫は肉食動物であり、蛋白質からグルコースを産生する代謝系が活発で、容易に血糖値が上昇する。インスリン分泌も低く、肥満、ストレス、感染症などの血糖値を下げられない因子が関わると糖尿病状態になりやすい。
【備考】
オスはメスの1.5倍発症しやすい。過体重、老齢、膵炎、腫瘍、感染症も危険因子となることから、定期的な健康診断は重要となる。
濃黄色尿
尿がいつもより濃いと感じる時は、肝胆道系に異常があるかもしれません。
ここで気をつけたいのは皮膚や粘膜の黄疸があるかどうかですが、尿の濃黄色化は黄疸より先立って起こることが知られています。重症化する前に病気を発見することも可能であるため、しっかりとチェックしましょう。
胆管閉塞
【症状】
胆石や胆嚢炎による閉塞では腹痛、嘔吐、黄疸などが見られ、軽度、一過性であることが多い。しかし重度胆嚢炎や胆嚢破裂が起きている場合には重篤となる。また膵炎や腫瘍による肝外胆管閉塞では、これら疾患の症状も同時に見られる。
【原因】
胆石、胆嚢炎、膵炎、十二指腸や膵臓などの腫瘍によって胆管が閉塞することによる。
【備考】
胆嚢内に胆石が存在しても、必ずしも症状を呈するわけではない。
まとめ
愛猫の毎日の排泄物は、何となく片付けているだけでは病気のサインを見落とす可能性があります。神経質になる必要はありませんが、ふとした時に健康状態の確認をするのは良いことかもしれませんね。
いつもと違うところがあれば、まずは動物病院に相談しましょう。