犬と小さい子どもの組み合わせは無条件にかわいいと思う方も多いのではないでしょうか。Instagramでも、「#いぬとこども」や「#犬と子ども」「#子供と犬」というタグは数万件から10万件以上の投稿があり、それだけ犬と子どもの組み合わせは人気が高いということもわかります。
一方で、小さい子どもと愛犬を接触させることへの不安や、子どもが新たに生まれたり、子どもがいることによって愛犬との時間が取りづらく愛犬への負担が多くなることなども懸念されます。
そこで今回は、子どもが犬と関わることのメリットやデメリット、リスク、犬と子どもがいる生活をする上で気を付けたいことなどを紹介します。
この記事の目次
イギリスに伝わることわざ
イギリスにはこんなことわざがあります。
子供が生まれたら犬を飼いなさい
子供が赤ん坊の時、子供の良き守り手となるでしよう。
子供が幼少期の時、子供の良き遊び相手となるでしょう。
子供が少年期の時、子供の良き理解者となるでしょう。
そして子供が青年になった時、自らの死をもって子供に命の尊さを教えるでしょう。
このことわざからも犬が子どもに与える影響はとても大きく、子どもの心身の成長にも犬の存在が大きなものとなることがわかると思います。犬と一緒に過ごすことで、コミュニケーション能力の発達や精神の安定、幸福度の向上なども期待されます。
小学校で行われた犬を介した教育プログラムの研究
犬との触れ合いや犬の存在が子どもに良い変化や影響を与えることを証明する研究を紹介します。
この研究では、2つの小学校の低学年児童を対象に、生活科、図工、体育、国語、算数の授業で犬を介在させた教育プログラムを実施しました。一方の小学校では月1回、もう一方は不定期に導入し、犬とのかかわりが子どもたちにもたらす効果について保護者へのアンケートや児童の授業後の感想文などをもとに総合的に検証しています。
なお、この教育プログラムに参加した犬は、ヒトと動物の関係に関する教育研究センターの基準をクリアした教育支援犬です。
結果
犬を介した教育プログラム後に行った保護者からのアンケート
全体の約60%で何らかの変化があったと回答があり、月1回ペースで実施した小学校では、約70%もの保護者が変化ありと回答した。
具体的な変化の内容は、「授業のことを家族によく話す」、「犬に対する恐怖心の克服」、「犬の飼育願望」、「興味の増大」、「授業のことはあまり話さなかった児童が優しい顔をしながら楽しそうに話をするようになった」といったものがあった。
教師からの報告
「(児童は)楽しく授業を受けることができるようになった」、「国語では漢字の宿題忘れが減少した」、「体育では児童が犬に対して学習を教えてあげたいという声や、犬に対する思いやりの内容の感想が増えた」、「生活科の授業の感想には犬の名前が多く書かれる傾向があった」といったものがあった。
結論
適正飼育された犬を参加させた授業の実施は、授業を受けた児童の学習意欲、学習成果の向上に加え、思いやりの気持ちなど情緒面でも影響をもたらすことがわかりました。さらに児童への影響は保護者にも伝わり、授業への犬の介入は有効であるといえます。
犬にとって子どもと暮らすデメリット
犬の視点から考えるデメリットとしては、新たに子どもが生まれた場合、飼い主との時間が減ることや、エネルギーを発散する時間や機会が減ることが多い点です。また、家の中の環境も変わり、聞き慣れない子どもの泣き声がしたり、子どもが優先されることによる行動の制限なども考えられます。
さらに、小さいお子さんが既にいる場合にはしっぽや毛を強く引っ張られるなど、乱雑に子どもから扱われることが多くなったり、子ども用のおもちゃなどを誤飲する恐れもあります。
子どもにとって犬と暮らすリスク
子どもにとっては、病気の感染と咬まれるリスクが主なものとして挙げられます。
病気の感染リスク
動物から人にうつる病気である人畜共通感染症には特に注意が必要です。人畜共通感染症には多くの種類があり、軽傷で済むものから中には重症化するものもあります。日本国内では以下の病気に特に注意が必要です。
- レプトスピラ症
- パスツレラ症
- カンピロバクター症
- カプノサイトファーガ・カニモルサス感染症
など
感染源は犬の糞尿や犬とキスをするなど密な接触による場合が多いです。また、犬との関わりの中で引っかかれたり、咬まれた傷から感染することもあります。
咬まれるリスク
犬が子どもを咬み、ケガや最悪の場合死亡事故が起きることもあります。
2020年には富山県で、生後11か月の乳児が祖父が飼っていた大型犬二頭に咬まれて死亡する事故が起きています。また、2017年にも都内で生後10ヵ月の乳児が大型犬に咬まれて亡くなっています。この他にも飼い犬に咬まれて子どもが亡くなったり、手術を伴う大ケガをする事故も起きています。
犬と子どもが暮らす上での注意点
感染症を予防するためには、犬の糞尿に接触しないことが大切です。大人が糞尿の処理を終えた後もよく手を洗ってから子どもと触れ合うようにしましょう。また犬のトイレやその周りなども清掃し、清潔な状態を保ちます。抜け毛が多い場合もこまめな掃除が大切です。
また、経口感染する感染症もあるため、犬の唾液が付いたものを子どもが口にしないようにすることや、犬が子どもを舐めた場合はその箇所を洗ったり、子どもがそれらを舐めないように注意しましょう。
心配な場合には、犬と子どもが接触しないように生活空間を分けてもいいでしょう。また、子どもが小さいうちは犬と子どもをふたりきりにはさせず、何かあった際にも対処ができるよう必ず大人の目が届くところで触れ合うようにしましょう。
さらに、子どもが言葉を理解できるようになったら、犬に負担のない触れ合い方や危険性などをしっかり教えることも大切です。
犬のケアやトレーニングもしっかりと
犬を飼うことは決して簡単なことではありません。多くの時間をトレーニングに費やしたりたくさんの愛情をかけて育んでいく必要があります。そのため、愛犬との時間をしっかり確保し、愛犬がエネルギーの発散不足にならないよう、おもちゃ遊びや知育玩具、トレーニング、満足度の高いお散歩などの時間を日々設けることが大切です。
また、子どもと安全に生活する上で犬のトレーニングが必要不可欠ですが、以下の項目を優先的に行うといいでしょう。
- 飼い主が愛犬の名前を呼べば様々な状況下でも飼い主に意識を向けられるようにする「アイコンタクト」
- 犬が咥えているものを離せるようにする「離して/ちょうだい」
- 飼い主のもとに来られるようにする「おいで」
- 赤ちゃんの泣き声や子ども特有の甲高い声や大きな声がしても落ち着いていられるようにする「社会化」
- 気になるものがあったり、興奮時にも飛びつかずにいられるようにするトレーニング
もし、愛犬が物への執着が強かったり、触られることが苦手、子どもが苦手、人を咬むことがあるといった場合には、子どもとの接触は控えましょう。飼い主が愛犬の性格を確実に把握することや、どんなことをすると愛犬が嫌がるか、怖がるか、どのような行動をしやすいかなども把握や予想をして、危険を回避する工夫をすることが犬と子どもが安全に過ごす上で非常に重要です。
まとめ
犬と子どもの組み合わせは非常にかわいいですが、病気の感染リスクや咬傷事故などのリスクが伴います。また、犬はどうしても後回しにされやすく、ストレスなどの精神的な負担がかかりやすくなってしまいます。犬と子どもが一緒に生活するリスクをしっかり理解し、対策もした上で犬と子どもが接触する時間を設けたり、敢えて接触されないように家の環境作りをしましょう。
また、お子さんが先にいて後から犬をお迎えする場合には、本当に犬が飼えるか、犬を育てる時間や精神的、経済的余裕があるか、お子さんが犬アレルギーを発症した場合にはどうするかなどもしっかり考えて検討しましょう。子どもができたから愛犬を手放すということはあってはならないことですし、アレルギーなど、やむを得ない場合であっても、その後のフォローができるようにしておくべきです。
愛犬と子どもが生活するとなった場合には双方に愛情を注ぎ、愛犬もしっかりと充実した生活が送れるようにトレーニングやエネルギー発散の時間を設け、子どもにも犬にも幸せを感じてもらえるようにしたいですね。きっと、それは家族全体の幸せにもつながることでしょう。