犬の耳は、犬種や個体によって大きさや形にさまざまな違いがあります。猫は立ち耳が多数派なのに対し、犬には垂れ耳の個体や犬種が多く見られます。それはなぜなのでしょうか。
今回は、犬の垂れ耳と進化の関係性についてご紹介します。
この記事の目次
犬の垂れ耳は進化の賜物?その理由とは
犬の祖先であると言われるオオカミは立ち耳ですが、その子孫である犬にはたくさんの垂れ耳の個体や犬種がいます。このように犬の耳の形が変化した理由には、さまざまな説があります。
説1. 人間がかわいいものを好むから
オオカミが人間と共同生活を始め、犬へと進化する過程で、人間が特定の特徴を持つ犬を選んで育てることで、その特徴を持つ個体が増えていきました。
犬の顔つきが変化した理由の一つに、人間が幼さやかわいらしさを好む傾向があることが挙げられます。それによって、長く鋭かった口元が短くなり、目が大きく丸い個体が増えたと考えられています。また、耳が垂れるようになったのも、人間が幼く見える犬を好んで選んだことが原因だとされています。
実際、立ち耳の犬種でも、子犬の頃は耳が垂れていることが多く、「垂れ耳=幼い」という印象を与えることが考えられます。
説2. 人間の狩りを手伝うのに都合が良かったから
人間と共に暮らす中で、犬は飼い主の狩りの手伝いをするようになりました。その際、垂れ耳の犬は狩猟の際に銃声が響きにくいだろうと考えられ、突然変異で現れた垂れ耳の犬が選ばれて交配されたという説もあります。
ただし、現在では立ち耳でも垂れ耳でも聴力は変わらないことがわかっています。
また、水に入って獲物を追ったり、穴に潜って獲物を探すとき、水や土が耳の中に入るのを防ぐため、耳が垂れている方が都合が良かったとも考えられています。
説3. アドレナリンの分泌が少ない犬が人間と共存しやすかったから
ドイツのフンボルト大学の研究者が発表した論文によると、犬が垂れ耳になったのは、家畜化の過程でアドレナリンの分泌が少なく、攻撃性や恐怖心が低い個体が人間と暮らすのに適していたためとされています。
アドレナリンは恐怖や不安を感じたときに副腎髄質から分泌されるホルモンで、攻撃性にも関係します。アドレナリンの分泌が多すぎると、犬は人間に少しでも驚かされるとすぐに逃げてしまいます。また、攻撃性が強すぎると人間に疎まれ、共存できません。
家畜化の過程では、アドレナリンの分泌が少ない個体が選ばれました。この選択により、副腎髄質の形成に関与する神経堤細胞の活動が弱い個体が残ります。神経堤細胞は耳の結合組織にも影響を与えるため、その結果、耳の結合組織が弱くなり、犬が垂れ耳になったと考えられています。
垂れ耳にもいろいろ!垂れ耳の人気犬種8選!
トイ・プードル
トイ・プードルは抜け毛が少なく、室内犬としてもっとも人気のある犬種です。
クルクルと巻いた毛に、つぶらな瞳と垂れ耳がまるでぬいぐるみのようにかわいらしいトイ・プードルですが、好奇心旺盛で運動能力も高く、「ワンちゃんと一緒にレジャーを満喫したい!」という方にもぴったりです。
カットスタイルを変えておしゃれを楽しみたい方にもオススメの犬種です。
ビーグル
がっしりした体格の中型犬で、短い毛と大きめの垂れ耳が特徴的なビーグル。
かつては集団で獲物を追う猟犬だったため、その名残で他の犬とも上手に仲良くなれる子が多いです。
ダックスフンド
短足胴長、長いマズルと大きな耳が特徴的なダックスフンド。
かつては狩猟犬として活躍しており、獲物となる小動物が穴の中に逃げ込んだ時でも追いかけやすいように、このような体型になったと言われています。
性格は友好的で好奇心旺盛、体は比較的がっちりと引き締まっているため、小型犬のわりに多めの運動量が必要です。
ラブラドール・レトリーバー
体が大きく、優しそうな顔立ちが魅力のラブラドールレトリーバー。これほど体が大きいのにかわいらしく感じられるのは、垂れ耳のおかげかもしれませんね。
短毛なのでブラッシングは比較的楽ですが、抜け毛は多く、特に換毛期には大量に毛が抜けます。肥満になりやすい傾向があるため、適度な運動とバランスの取れた食事が必要です。
ゴールデン・レトリーバー
ラブラドール・レトリーバーは短毛犬種ですが、ゴールデン・レトリーバーは金色に輝く長毛が特徴です。子供の頃はやんちゃな子が多く見られますが、大人になると愛情深く穏やかになる傾向があります。
ただ、やはり体が大きいので、飼うことを決める前に、家に十分なスペースがあり、十分な食事量や運動量を確保してあげられるかどうかをよく考えることが必要です。
パグ
「ぶさかわ」で大人気のパグは、鼻ぺちゃでしわしわの顔、くりくりした大きな目、そして小さな垂れ耳が特徴の犬種です。筋肉質でがっちりとした体つきで、毛は短いです。
陽気な性格ですが、マイペースで頑固な一面もあります。また、無駄吠えが少ない点も人気の理由の一つです。
アメリカンコッカースパニエル
アメリカンコッカースパニエルは、ゆるふわパーマをかけたような長い垂れ耳がとてもかわいらしい中型犬です。
好奇心旺盛で人懐っこい性格をしています。毛が長いため、毎日のブラッシングなど頻繁なお手入れが必要です。
ボーダーコリー
ボーダーコリーの耳の形は、立ち耳・半立ち耳・垂れ耳と個体によって異なります。同じ犬種内でも耳の形にバリエーションがあるため、それぞれの個性を楽しめるでしょう。
作業意欲が強くスタミナがある犬種なので、ボーダーコリーの飼い主には一緒に運動できる体力と時間的余裕が求められます。
垂れ耳の犬が気をつけたい耳の病気
垂れ耳の犬はかわいらしく魅力的ですが、立ち耳の犬に比べて耳の中が蒸れやすく、中耳炎や外耳炎などにかかりやすいため注意が必要です。
- 後ろ足で耳を掻く
- 前足で耳を触ろうとする
- 頭を振ったりして耳を気にしている
- 耳から独特のにおいがしてくる
- 耳の赤みや腫れ
このような様子が見られたら、耳の病気を疑いましょう。湿気の多い梅雨や夏は耳のトラブルが特に増える季節です。「おかしいな」と思ったら、獣医師に相談するようにしましょう。
立ち耳派?垂れ耳派?
今回は、垂れ耳の犬が誕生した理由と、垂れ耳の人気犬種を8種ご紹介しました。
立ち耳だったオオカミから垂れ耳の犬へと進化した理由には、さまざまな説がありますが、いずれも野生での生活から人間との共生に変化したことが関わっています。
立ち耳の犬も垂れ耳の犬も、それぞれ違ったかわいさがあります。みなさんは立ち耳派ですか?それとも垂れ耳派ですか?