【獣医師監修】猫に寄生するノミに注意!治療と予防法

2024.09.30
【獣医師監修】猫に寄生するノミに注意!治療と予防法

猫の体表に寄生する代表的な寄生虫に、「ノミ」があります。

ノミは、世界中で一般的に見られる外部寄生虫ですが、「衛生状態が良好である日本ではノミは少ないでしょ?」と思う方もいるかもしれません。しかし、外で産まれた子猫が動物病院に来院すると、必ずと言っていいほどノミの寄生が見られます

国内においても、ノミの寄生は注意すべきなのです。

そこで本記事では、ノミの寄生によって引き起こされる直接的な病害や、ノミによって媒介される疾患などの間接的な影響も含めて、獣医師が詳しく解説していきます。

この記事の目次

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猫に寄生するノミ

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ノミは世界中で約2,000種が見つかっていますが、その中でも日本で猫に寄生するノミの多くは「ネコノミ」です。
まれに、「イヌノミ」や「ヒトノミ」の寄生もあるようですが、筆者は見たことがありません。

ネコノミの体長は1.2~2.0ミリほどで、注意深く観察すれば肉眼で見つけられるかもしれません。

ノミによる病害

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ノミの成虫は雌雄ともに吸血をしますが、この時、宿主に病害を引き起こすことがあります。
この病害には、直接的なものと間接的なものがあります。それぞれ見ていきましょう。

直接的な病害

ノミによる直接的な病害として、「ノミアレルギー性皮膚炎」があります。
ノミアレルギー性皮膚炎は、吸血の際に注入されるノミの唾液によって引き起こされる皮膚炎です。

ノミがよく寄生するのは、背中、下腹部、脇、内股部で、皮膚炎を起こした箇所は激しいかゆみを起こします
これによって、寄生部位を咬んだり引っ掻いたりする他、精神不安定、体重減少などが見られることもあります。

次いで、引っ掻き傷から被毛の破損、脱毛が生じることもあります。さらに、皮膚炎が慢性化すると、皮膚の肥厚や色素沈着が認められます。

また、子猫に多数のノミが寄生し、吸血を行うことで貧血が起こる場合もあります。

間接的な病害

ノミによって媒介される感染症で最も有名なのは、14世紀に流行したネズミノミによる「ペスト」でしょう。ペストによって当時の人口の約25%が命を落としたと言われています。

ここでは、注意すべきノミによる媒介感染症を紹介します。

ペスト
ノミの胃の中で増殖したペスト菌が、吸血の際に逆流して感染が起こります。四肢末端や鼻端が黒くなることから「黒死病」とも呼ばれています。
日本では、1926年の横浜での発生を最後に国内でのペスト患者は認められていません。
しかし、世界では今でも散発的に発生があるため、決して油断はできません。

瓜実条虫
猫の小腸に寄生する条虫です。猫での症状はほとんどなく、肛門の不快感程度です。
しかし、ヒト、特に幼児に感染すると腹痛や下痢を引き起こすため、注意が必要な寄生虫です。

猫引っ掻き病
嘘みたいな名前ですが、ヒトが猫に引っ掻かれることで発熱やリンパ節の腫脹が見られる感染症です。
ノミ体内やノミ糞に存在する細菌が創傷部位から侵入することで感染します。
高齢者では心筋炎を起こすこともあり、甘く見てはいけません。

ノミの生活環

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ノミは完全変態をする昆虫で、「卵→幼虫→蛹→成虫」へと成長していきます。

 雌によって宿主体表で産み落とされた虫卵は、床面や寝床に落下します。
卵→幼虫 孵化した幼虫は、成虫が排泄した糞や動物の垢を食べて大きくなっていきます。
幼虫→蛹→成虫 やがて蛹となり、羽化して成虫へと変態します。その後は、再び動物の体表に寄生し、吸血を始めます。

発育の期間はノミの種類によって異なりますが、卵は2~12日、幼虫は9~200日、蛹は7日~1年、成虫は20~500日となり、それぞれが長い期間生存できることがわかります。

猫のノミの診断

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猫の被毛内に寄生するノミを検出して診断を行います。

しかし、長毛種ではなかなかノミそのものを見つけにくいこともあり、その場合は皮膚表面に付着している黒いノミ糞を集めます。
湿ったティッシュなどにノミ糞を乗せておくと、血が溶血して赤く染まり、ただのゴミと区別できます。

通常ブラッシングに用いるブラシでは目が粗いため、もっと目の細かいノミ取りコームを用いるといいでしょう。

猫のノミの治療

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ノミの駆除には、殺虫作用のある薬物を投与することによって行います。
投与方法には経口タイプや首の後ろに垂らす滴下タイプなどがあるので、獣医師と相談しながら、猫の性格などによって使い分けましょう。

ノミアレルギー性皮膚炎の治療

ノミアレルギー性皮膚炎には、アレルギー反応を抑制するために短期間のステロイド治療を行います。

また、細菌の二次感染によって毛包炎が起こっている場合には、抗菌薬の投与も行います。ただし、ノミがいる限りアレルギー反応は起こり続けるため、ここでもノミの駆除は重要です。

猫のノミの予防

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ノミの駆除にも用いる薬剤を定期的に投与することで予防が可能です。

ただし、これは猫の体表にいるノミの成虫に有効であるため、虫卵や幼虫といった環境中のノミには効果がありません。

そのため、成虫の殺虫成分の他に、昆虫の発育調整薬が混合された薬剤を用います。これによって、成虫から産まれた虫卵や幼虫の発達が阻害され、ノミの生活環を断裂させることができます。

市販のノミ取り剤には、成虫にしか効果を及ぼさないなどノミ予防効果が不十分なものもあります。確実にノミを予防するには、まずは獣医さんに相談してみると良いでしょう。

まとめ

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特に外に出る可能性のある猫にとって、ノミの予防はとても重要です。ノミは猫本人に害があるだけでなく、飼い主にも病害を及ぼす可能性があります。

大切な愛猫や家族の健康を守るために、ノミの予防はしっかりと行いましょう。

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