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いぬ健康

老犬介護士という仕事。これからは愛犬の老後も考える時代に

シェリー編集部

ここ数年で、医療の進歩や食生活の改善などもあり、ペットの寿命はどんどん長くなりました。犬種にもよりますが、犬の場合は長生きをすれば15年以上生きることも珍しくなくなりました。

人間も同様に寿命が延びており、お年寄りが年老いたペットの介護をする老老介護も社会問題になりつつあります。人間であろうと、ペットであろうと、生き物であれば、年を重ねることに抗うことはできません。そこで注目されているのが老犬介護士という職業です。

今回、シェリー編集部では、老犬介護士の平端弘美(ひらはたひろみ)さんに老犬介護士というお仕事についてお話を伺いました。平端さんは、動物病院などでシニア犬のケアを行ったり、犬の食事や運動、自然療法についてのセミナーを開くなど、主に介護が必要なシニア犬とその飼い主さんのために精力的に活動されているドッグトレーナーです。

取材協力
今回は平端さんが普段からご活躍されている、東京都多摩市にあるこうご動物病院様で取材をさせていただきました。
こうご動物病院

筋トレから脳トレまで!意外な老犬介護の中身

老犬介護と一言に言っても、その内容は多種多様。単に年老いて、歩けなくなってしまった犬の世話をする場合もあれば、それを予防するためのトレーニングを行うこともあります。そんな老犬介護について、平端さんが実際に行われているケアの中身を見ていきたいと思います。

筋力トレーニングにより足腰の衰えを予防


筆者も初めて見る一見変わったトレーニング用品。なんと、この上に犬が乗って、バランスをとりトレーニングを行うものだそうです。

犬が落ちないように踏ん張るため、筋力トレーニングになることはもちろん、体幹を鍛えることができます。このように人間がジムに通って行うようなトレーニングをシニア犬に遊びを通して行わせることで、足腰の衰えを予防できます。
犬が年齢を重ねるにつれ、徐々に運動能力が低下していくため、普段の散歩だけではその運動能力の低下に歯止めをかけることはできません。こういった運動器具を使いながら効果的なトレーニングをすることで、運動能力の低下を防ぎ、犬が歩けなくなることを防止します。

老犬介護というと、寝たきりになってしまった犬の下の世話や、車椅子などを使って歩行のサポートをするイメージを持たれる方も多いかも知れませんが、このような運動機能を強化するようなトレーニングを普段から行うことで、寝たきりになったり、歩くことができなくなることを予防する取り組みも行われています。

認知症の予防は脳トレで


写真のカラフルでかわいらしい布は、プリーツの中におやつを細かくして隠し、嗅覚や手足を使って探させる脳トレ用知育玩具です。災害救助犬や麻薬探知犬としても活躍する犬の嗅覚は、人間のおよそ1億倍とも言われており、今ではこういった遊びはノーズワークとして、ドッグスポーツにもなっています。

犬が鼻を使うことはもちろん、犬がどうやっておやつを取れば良いのか考えるため、かなり頭を使うようで、遊び終わったあとの疲れ具合からも、それを感じることができます。雨が降っている日など、散歩の代わりにノーズワークを行い、運動不足を解消する方もいるほど。ノーズワークは犬の脳トレになるため、認知症を予防する効果も期待できます。

飼い主の方が、普段やらないような遊びをやらせることで、頭や体を使うのはもちろん、飼い犬の新たな一面が見えることもあるのだとか。

ハーブや整体、鍼を取り入れたケアも


平端さんの場合、写真のような桶を用いて犬のマッサージや整体、ハーブ温湿布、ハーブ足湯などを行います。

寝たきりになってしまった犬でも、整体を行うことで固まってしまった筋肉がほぐれ、体を動かしやすくなります。マッサージは、体の痛みを軽減するほか、全身の血の巡りを良くし、ツボを刺激することで免疫力や内臓の機能を向上させることができます。
また、犬のマッサージにハーブティを使うことが平端さん流。ハーブは、犬がもともと持っている自然治癒力に働きかける効果があり、犬の症状に合わせて、用いるハーブを変えることでより高い効果が期待できます。

他にも、平端さんが勤務されているこうご動物病院では東洋医学に基づいた治療も行っており、中でも鍼治療が人気とのこと。他の動物病院ではなかなか受けることのできない治療ですので、遠方からこうご動物病院を訪れる方も多いそうです。鍼治療はヘルニアに効果があり、痛みが緩和したり、寝たきりだった犬が立てるようになったケースもあるのだそうです。

老犬介護士・平端弘美さんのケアはいつ受けられるの?
こうご動物病院では毎月第一、第三火曜日と日曜日(予約制)
※ 鍼治療と一緒に受けるとより効果的。鍼治療とのセットがオススメ。
お問い合わせ
詳しくは、こうご動物病院へお問い合わせください。

実際のケアの様子

老犬介護を実際に行う様子はインターネット上の動画でも見ることができます。こちらは、平端さんの地元の新聞であるもしもししんぶんに掲載された際の動画です。平端さんが実際にシニア犬のケアを行う様子を見ることができます。

シニア犬のケアに関するセミナーも

人間の介護もそうですが、犬の介護というのは一般の方が思っているより大変なものです。特に、体が大きな大型犬の場合、その苦労は計り知れません。そのような飼い主に向けてセミナーを行い、情報発信とサポートをすることも老犬介護士の大事な役割の1つです。

大型犬は小型犬よりも早く寝たきりになりやすいと言われています。体が大きい分、体重も重いため、犬の体勢を変えてあげるのにも、人にも犬にも大きな負担がかかります。大型犬には大型犬に合った介護の仕方というものがあります。そのような愛犬を持つ飼い主さんに向けて、体に負担がかかりづらい介護の仕方を教えるセミナーも開催されています。

平端さんのセミナーは、王子、立川、世田谷、板橋など、都内を中心にさまざまな場所の商業施設や公園のイベントなどで開催されています。ランチを食べながら受けられる講座もあったりと、シニア犬のケアを楽しく学ぶことができそうです。ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。

老犬介護士、平端弘美さんとは?

ドッグトレーナーへの転身

今回、老犬介護士というお仕事について取材をさせていただいた平端弘美さんですが、もともとは動物とは関係のない仕事をしていたそうです。ある日、たまたまテレビで放送されていた、セラピードッグの活動(病院などを犬が訪問して患者さんに癒しを与え、治療効果を上げる)を見て、とても感銘を受けたことがきっかけで、犬の勉強をするようになったのだとか。

セラピードッグの育成、活動に関わりたいと思った平端さんは、セラピー活動が学べるドッグトレーナー養成校を見つけて入学。ご自身で犬を飼っていたこともあり、学んでいくうちにドッグトレーナーになりたい気持ちが強くなり、2013年に資格を取得。同年からドッグトレーナーとして、こうご動物病院で犬の仕事を始めることになりました。

自身の愛犬もシニア世代へ

平端さんがドッグトレーナーとして働くようになった頃、平端さんの飼い犬も歳を重ね、ついに歩きたがらなくなってしまいました。

犬の平均寿命も伸び、寝たきりや認知症になる犬も増えているのに対し、当時はそのようなシニア犬を飼う人が相談できる場は動物病院やネットの記事しかありません。その現状を知り、平端さんはシニア犬のケアができるドッグトレーナーを目指し、昨年4月老犬介護士の資格を取得しました。

今では、老犬のリハビリの資格や犬の整体師の資格、さらにはペット災害危機管理士の資格も取得しており、今後はペットロスという難しいテーマについて勉強している非常に勤勉なドッグトレーナーです。ペットロスの方の心が少しでも軽くなるようなセミナーも開催したいと今後の目標を語っていただきました。

編集後記

平端さんのセミナーを聞きにくる人は、シニア犬の飼い主さんだけではありません。若い犬を飼っている人や新しく犬を飼おうとしている人が、これからの介護のために聞きにきたり、残念ながら自分が飼っていた犬は亡くなってしまったけれど、自分が犬に施していたケアが良かったのかどうか確かめたくて来た、という方もいるそうです。

大切なペットが寝たきりや認知症になってしまうのは、ペットが元気だったら想像もつかないことかもしれません。しかし、ペットの老化は成長スピードが早い分、驚くべき速さで進んでいきます。私たちができるだけ後悔なく、ペットの幸せそうな最期を看取ることができるように、老犬介護士という職業があり、平端さんはそこに尽力してくださっていました。

ペットの長寿化が進んでいる今、まずはセミナーに顔を出すところから始めてみてはいかがでしょうか?

シニア犬応援サイト Hello doggie
Hello doggieひだまりシニア部
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