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いぬ健康

【寄生虫】犬だけでなくヒトにも病害を与える犬回虫症の恐怖

相澤 啓介
相澤 啓介 獣医師

寄生虫は犬にとって厄介な存在ですが、今回ご紹介する犬回虫や犬小回虫もその一つです。

犬回虫は、イヌ科動物の消化管に寄生する最も一般的な線虫の一つです。犬だけでなく、ヒトにも病害を与えることが知られています。

本記事では犬に寄生する回虫類、特に犬回虫について解説していきます。

犬回虫って何?

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犬回虫(いぬかいちゅう/トキソカラ症)は、成虫が4〜15㎝程の白く細長い寄生虫です。身近な環境のいろいろなところ、特に土壌中に、感染幼虫を包蔵した虫卵が潜んでいます

この虫卵は、乾燥や低温などの環境因子に強く、長期間生存できるため、容易に感染が起こります。

似た寄生虫に犬小回虫も

犬やネコ科動物に寄生する回虫類には、他にも犬小回虫(いぬしょうかいちゅう)がいます。成虫の大きさが2〜10㎝程と、犬回虫より小さいことからこのような名前が付けられました。

世界中に広く分布していますが、日本での感染の報告は少なくなっています

また、日本国内で販売されている消化管内寄生虫の予防薬の中には、犬小回虫に有効なものもあります。

回虫類の感染経路と生活環

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犬回虫と犬小回虫の主な感染経路は、感染幼虫を保有する虫卵の経口感染によります。

宿主に経口摂取された虫卵は小腸で孵化し、血流を介して肝臓、肺へと体内移行を行います肺からは気管支・気管を遡り、咽頭・食堂を経て胃へ戻り、成虫へと成長します。

これを「気管型移行」と言い、感染から成虫になるまで6〜8週間を要します。

また、犬回虫では母犬からの経胎盤感染や経乳感染といった垂直感染もあります。そのため、まだ外に出していない子犬が生まれつき犬回虫の感染を受けていることもありえるのです。

犬回虫症の症状

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犬回虫が寄生部位の小腸へ移動する際に通過する肝臓や肺に症状が出ます。

具体的には、元気消失、食欲減少、削痩、貧血、下痢、嘔吐、異食症、肺炎などの症状が見られます。

また、症状が出るのは生後6ヵ月以下の幼い犬であることが多く、成犬での成虫寄生例は少なくなります。これを「年齢抵抗性」と言います。

ヒトのトキソカラ症

犬回虫はヒト、特に幼児に感染すると重篤な症状を招くことがあります。幼児がいるご家庭の犬は、特に気をつけるべきです。

症状は犬と同様に、倦怠感、腹痛、発熱、呼吸困難、発咳が見られます。同時に、幼虫の体内移行によって眼の充血、羞明、中枢神経症状、アレルギー性皮膚炎、血管炎、リウマチ様症状が認められる場合があります。

犬と異なり、ヒトでのトキソカラ症の治療は非常に困難で、有効な治療法は確立されていません。泥遊びや砂遊び、子犬と遊んだ後はしっかり手洗いを行いましょう。

犬回虫症の診断

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では、犬回虫症はどのように診断するのでしょうか。

糞便検査

犬回虫は卵をたくさん産むので、消化管内に雌成虫が寄生していれば、単純な糞便検査で虫卵の検出が可能です。

子犬でまだ駆虫薬の投与を行っていない場合や、犬回虫の感染が疑われる犬と接触した後は、下痢をしていなくても病院に糞便を持参するといいでしょう。消化器症状がなくても、虫卵が検出できることがあります。

しかし、感染後間もなく未成熟虫体しかいない場合には虫卵検査はできません。一度の検査だけではなく、時間をおいて複数回検査を行いましょう。

試験的駆虫

子犬では糞便検査を行う前に、母犬からの胎盤感染や経乳感染があるものと仮定して、駆虫薬を投与することがあります。

これによって、その後の便中に犬回虫の成虫が排出されるかどうかを確認します。

犬回虫症の治療

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犬の場合は、駆虫薬の投与によって治療が可能です。

しかし、環境中に散らばった虫卵までは駆除することはできません。犬回虫の虫卵は環境中で長期間の生存が可能ですので、感染が疑われる場合は糞便の速やかな除去が必須です。

何回か糞便検査を行い、虫卵が検出されなくなるのを確認しながら治療を行っていく必要があります。

犬回虫症の予防

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感染源となる虫卵を居住環境中にばらまかないためにも、感染しないように予防すること、感染してしまっても虫卵産出前に駆虫することが非常に重要になってきます。

投薬による定期駆虫

犬回虫の成虫が小腸内で成熟し、虫卵を産出するようになるまでの期間は21〜42日と言われています。

この成長ペースに対応するためにも、1ヵ月に1回の定期駆虫がおすすめです。各製薬会社で販売されている予防薬は、犬回虫だけでなく、フィラリアを始めとする複数種類の寄生虫の予防が可能です。

なお、フィラリアの予防に関してはほとんどの飼い主の方が行っていると思いますが、その予防薬を与えていればある程度は予防することは可能です。しかし、中には犬回虫への効果が薄いものもありますので、気になる方はかかりつけの動物病院で相談してみましょう。

環境の清浄化

治療の項でも触れましたが、感染源となる糞便の速やかな除去が重要です。

環境中に虫卵が残ってしまうのはもちろんですが、ここで注意したいのは「異食症」です。異食症は自分の排泄物を食べてしまう症状で、これが犬回虫の濃厚な重感染を助長させる恐れがあります。

子犬は糞便を食べてしまうことがよくありますが、犬回虫の重感染を防ぐためにも、しつけを行い、早い段階でやめさせるべきです。

また、同居犬がいる場合は、気づかないうちに感染を広げてしまう場合もあるため、排便後にはお尻周りが汚れていないかも注意してください。

まとめ

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回虫類、特に犬回虫は犬にとっても厄介なだけでなく、ヒトにとっても重要視されるべき寄生虫です。ヒトが感染した場合、有効な治療法が確立されていないということも不安材料の一つです。

環境中に虫卵があることからも、散歩や他の犬との接触によって容易に感染する可能性があります。どうせ治せるから予防しないのではなく、感染しないために何ができるのか?この機会に考えてみてはいかがでしょうか。

関連リンク

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