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いぬ健康

【獣医師監修】キャバリアの好発疾患と予防のための飼育ポイント

相澤 啓介 獣医師

キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルは、穏やかで優しい性格の小型犬種です。怒ることが少ないので、見ていて癒されますよね。

日本でも飼育している方が多い犬種ですが、いくつかかかりやすい病気があることをご存知でしょうか。
今回の記事では、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルの好発疾患と、日常生活でできる予防方法について、獣医師が詳しく解説します。

なお、犬種の名前が長いので、以降は「キャバリア」と表記します。

キャバリアの基本情報

歴史

古くから愛犬家が多かったイギリス王室ですが、チャールズ1世、2世に愛されたことで知られるのが「キング・チャールズ・スパニエル」です。

19世紀になると、パグなどと交配して鼻の短いキング・チャールズ・スパニエルが流行しますが、チャールズ王の肖像画を見た愛犬家が、当時のタイプの犬種を復活させました。それが、「キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル」です。

「キャバリア」とは、中世の騎士のことで、チャールズ王に敬意を表して名付けられたと言われています。

身体的特徴

大きな目と大きな垂れ耳が特徴で、体重は5.4〜8.0kg程度、体高は30〜33cm程度です。
被毛は長く、色はブラック&タンルビートライカラー(赤褐色・黒・白の3色)、ブレンハイム(赤褐色・白)が代表的です。

性格 

温厚な性格で、他の人や犬に対してもフレンドリーです。
子犬の頃からお利口さんで、無駄吠えやかみ癖も少ないため、ペット初心者や子どものいる家庭にも適しています。

キャバリアの好発疾患


では、キャバリアの好発疾患には何があるのでしょうか。
かかりやすい病気を知ることで、日頃からどんなことに注意すればいいのかがわかってくるかと思います。

僧帽弁閉鎖不全症

【症状】
咳、運動不耐性(疲れやすい、易疲労性)、興奮時の呼吸速迫など。
肺水腫になると呼吸困難、チアノーゼ(舌などの粘膜が青くなる)、安静時の呼吸速迫、運動時のふらつき、失神など。
【原因】
僧帽弁(左心房と左心室を隔てる弁)に異常が生じ、血液が逆流する。すると、心臓に負荷がかかり、心拡大や肺水腫が引き起こされる。
【備考】
他犬種では5歳齢以下ではまれだが、キャバリアでは4歳齢以上で42〜59%に心雑音が聴取される。

膵炎

【症状】
嘔吐、下痢、発熱、腹痛(上半身を下げてお尻を上げる「お祈りポーズ」)など。
【原因】
高脂肪食、高脂血症。心臓病による膵臓への血液供給の減少も原因となる。
【備考】
輸液も治療の一環となるが、心臓病があると慎重に水分を調整しなければならない。

腎不全

【症状】
嘔吐、流涎、多飲多尿、薄い尿、食欲不振、脱水など。
【原因】
心臓病によって腎臓への血液供給が減少することが原因。また、心臓病治療のために用いる利尿薬によっても医原性の腎不全が起こることがある。
【備考】
長期の心臓病コントロールには、腎臓への負担も同時に考えなければならない。

脊髄空洞症

【症状】
首の痛み、四肢の麻痺、抱っこした時に「キャン」と鳴くなど
【原因】
詳しい病態の病理発生は不明で、脳脊髄液の異常な貯留が原因と考えられている。
【備考】
水頭症やキアリ奇形(後頭骨の奇形)を併発していることが多く、また頸部での発生が多い。

白内障

【症状】
水晶体の白濁、視覚障害。
【原因】
加齢、外傷、代謝性(糖尿病など)、他の眼疾患(緑内障、水晶体脱臼、進行性網膜萎縮など)から続発などによる。
【備考】
キャバリアでは先天性の白内障の報告がある。

キャバリアに適した飼育環境


キャバリアで注意したいのは、何と言っても心臓病に対するケアです。キャバリアと一緒に暮らしていく上で心臓病は避けては通れないものです。

今回は、心臓病に関するポイントを重点的にお話します。

1. 心臓病に対するケア

キャバリアは、加齢とともにほぼ確実に心臓病にかかります

しかし、だからと言って短命なわけではなく、きちんとコントロールし、心臓病と上手に付き合っていくことができれば良いのです。
心臓病が適切に管理されているかをチェックするポイントは、以下のようなものがあります。

食事

各フードメーカーで、ナトリウムを制限した心臓病食が販売されています。
手作り食を作る時も、塩分を抑える工夫が必要です。

運動

心機能が低下し、全身状態が悪くなると運動に対する意欲も落ちてしまいます。しかし、適度な運動は健康的な生活には欠かせないため、あまり長すぎない距離を散歩させてあげましょう。

投薬

心臓病のコントロールには外科的手術を行う場合を除いて、いくつかの内服薬が必要不可欠です。しかし、毎日何種類もの薬を飲ませるのは非常に大変で、中には途中で投薬に対して拒否反応を示す子もいます。

塩分の少ないおやつに紛れ込ませる、砕いて水に溶かして与える、フードに混ぜるなど、本人には負担のない投薬方法が求められます。

割ったり砕いたりしてはいけない薬もあるため、予め獣医師に相談してください。

呼吸数のチェック

心臓病、特にキャバリアでは僧帽弁閉鎖不全症が発生しますが、病態が悪化すると肺水腫になることがあります。

呼吸器の異常は、時に致命的になり、素早い対処が求められます。そんな時に確認していただきたいのが、安静時(主に睡眠時)の呼吸数です。具体的には1分間に40回を超えると、かなり苦しいと思われます。

15秒間の呼吸数を数え、4倍すると大体の呼吸数が算出できると思います。

舌の色のチェック

呼吸数と同様に確認して頂きたいのが舌粘膜の色で、青くなっていると非常に危険です。普段から色の状態をチェックしておき、異常が見られればすぐに動物病院を受診してください。

2. 肥満に注意

高血圧や過度の脂肪は心臓に負担をかけます。
また、肥満は膵炎や糖尿病といった他の病気のリスクになると同時に、ただでさえ心臓病で疲れやすい身体がさらに疲れやすくなる原因にもなります。

3. 爪切りや足裏の毛の処置を定期的に

キャバリアは足裏の毛が長くなりやすい犬種でもあります。
長い爪や足裏の毛によってブレーキが効きにくくなり、無駄な体力を使わせないためにも、これらの処置は定期的に行いましょう。

まとめ


キャバリアとの生活には、素晴らしいことがたくさんあると思います。
たくさんの思い出を作るために、愛犬には長生きして欲しいものです。
たっぷりの愛情と、健康観察を毎日行ってあげてください。

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