ビーグルは活発で人懐っこい、非常にフレンドリーな犬種です。「スヌーピー」のモデルとなっていることでも有名ですよね。
元気いっぱいのビーグルですが、それゆえに体調が悪そうだと不安になります。そのため、ビーグルがかかりやすい病気について理解しておき、異変をすぐに察知できるようになることが大切です。
この記事では、ビーグルの好発疾患について、獣医師が詳しく解説していきます。
この記事の目次
ビーグルの基本情報
歴史
ビーグルの祖先は、もともとは「嗅覚ハウンド」に分類される犬種で、古代ギリシャ時代には優れた嗅覚を使ってウサギ狩りの手伝いをしていました。
その後、ヨーロッパ中で広まり、イギリスを中心に品種改良が進んで現在のビーグルの形に至りました。
身体的特徴
体の大きさはオス・メスともに、体高33~40cm、体重7~14kg程度で、筋肉質でがっしりとした体格をしています。
被色は、白色、褐色、黒色の3色が組み合わさった「ハウンドカラー」または「トライカラー」が一般的です。被毛は短めですが、しっかりと密集して生えています。
性格
ビーグルはもともと群れで狩りをしていたため、社会性や協調性があってフレンドリーな性格が特徴です。
人にも懐きやすく、子供や他の犬とも良い友達になれるでしょう。逆に、ひとりで過ごすのは苦手なので、仕事などで家を空ける時間が長い場合には向かないかもしれません。
探究心が強くて少し頑固な面もあるので、子犬の頃からしっかりとしつけをしておくことが重要です。
ビーグルの好発疾患
ビーグルは軟骨に関わる疾患、皮膚疾患、腫瘍疾患が多い犬種です。これは遺伝的な要因も関与しています。
聞き慣れない病気もあるかもしれませんが、順番に見ていきましょう。
甲状腺癌
【症状】
頸部の腫瘤として触知される。甲状腺機能低下症(元気消失、脱毛、運動失調、便秘、肥満など)や甲状腺機能亢進症(多食、体重減少、嘔吐、下痢多飲多尿、脱毛など)の症状が見られることもある。
【原因】
ビーグルは他の犬種と比較して甲状腺腫瘍の発生が多い。
【備考】
犬の甲状腺腫瘍の90%以上は悪性で、60%が両側性である。また30%ほどで転移が認められる。
気管虚脱
【症状】
ガチョウの鳴き声と表現される「ガーガー」という咳。重度になると失神、呼吸困難、発熱、運動不耐性(疲れやすい)など。
【原因】
通常は丸い気管が潰れ、そこを空気が通ることで特徴的な咳が出る。軟骨を形成するコンドロイチンなどの減少やカルシウム結合の減少などにより軟骨の固さが維持できないことによる。
【備考】
6歳以上の肥満犬にも多く見られる。
椎間板ヘルニア
【症状】
疼痛、歩様失調、四肢の不全麻痺など。
【原因】
椎間板髄核の線維様変性が進行し、若い年齢で比較的急性に発症する。
【備考】
診断にはCTやMRI検査が必要となり、これらは全身麻酔が必須となる。
特発性てんかん
【症状】
発作、痙攣、意識障害、視覚障害、感覚異常など。
【原因】
異常(脳腫瘍や外傷など)が見られない。
【備考】
特発性てんかんは犬で最も一般的に見られるてんかんである。発作が30分以上続くか、休みなしに発作が連続することを重積といい、すぐに適切な処置を行わないと脳損傷に繋がる。
ピルビン酸キナーゼ欠損症
【症状】
貧血、運動不耐性(疲れやすい)、頻脈など。
【原因】
ピルビン酸キナーゼという酵素の遺伝的欠損により、溶血性貧血が起こる。
【備考】
年齢とともに骨髄線維症に進行することもある。
壊死性脈管炎
【症状】
発熱、頸部痛、不全麻痺、発作、失明など。
【原因】
免疫介在性疾患と考えられているが、先天性の要因も示唆されている。
【備考】
若齢犬に発症し、ステロイド反応性髄膜炎のより重篤な病態と言われている。
ビーグルの飼育環境と健康チェック
これら好発疾患を踏まえて、普段の生活でどんなことに注意すべきなのかを解説します。
特に、病気の早期発見を重視した内容ですので、ぜひチェックしてみてください。
1. 首の痛みを見逃さない
頚部の椎間板ヘルニアにおける臨床徴候の一つに、首の痛みがあります。
しかし、犬は首の痛みを言葉にして訴えることはできません。首に違和感がある時には、以下のような徴候が見られます。
- 動きたがらない
- 抱っこした時にキャンと鳴く
- 首を持ち上げない(上を見ない)
ちなみに、犬にも肩こりはあります。首を動かさなくなることで肩に力が入り、上半身の血流が悪くなります。すると、肩関節の可動域が狭くなり、余計に血流が悪くなるという悪循環に陥ります。
首が痛いだけと侮ってはいけません。
2. 首輪よりもハーネスを使用する
首に負担をかけないためにも、最近では首輪よりもハーネス(胴輪)を使用する方が増えています。
ビーグルは、気管や椎間板の疾患が発生しやすい軟骨異栄養犬種に分類されるため、普段から首周りには注意しておきましょう。
3. 肥満に注意
ビーグルは脂肪が付きやすい犬種です。
過度な体重や脂肪は、関節への負担や内蔵の圧迫、さらに糖尿病などの誘発といった悪影響があります。食事管理や適度な運動によって体重をキープしましょう。
適切な体型は、上から見て腰にクビレが少しある、肋骨が軽く触れるくらいと言われています。
4. 歯茎の色をチェック
貧血や黄疸は、粘膜の色を確認することでわかることがあります。歯茎の色を見るのが一番わかりやすいでしょう。
健康な時の歯茎の色を把握しておき、色が薄くなっていないか、色がおかしくないかをチェックします。特に、何となく元気がない時、食欲がない時は歯茎を見てみることを忘れないようにしましょう。
5. 高齢になったら定期的な健康診断を
人間と同じように、犬も高齢になるにつれて病気が現れることが多くなります。
血液検査、レントゲン検査、超音波検査など、体全体をくまなくチェックしていきます。7歳以上では半年に一度の健康診断をしましょう。
まとめ
愛犬との生活は楽しいものですが、それも健康があってこそです。
病気を早くに発見することが、健康への最短距離です。何か不安なことがあれば、お気軽に動物病院までご相談ください。