犬種によって性格の傾向があることは広く知られています。例えば、「ゴールデン・レトリーバーは穏やかで人懐こい」などといった表現を、犬種ごとに耳にするのではないでしょうか。
しかし、よく考えると、「なぜ犬種ごとに性格が異なるのだろう」と疑問を抱く方も少なくないでしょう。実は、これには深い理由があるのです。
今回は、犬種ごとに性格が似ている理由と犬種別の特徴について解説していきます。
この記事の目次
犬種で性格が違う理由とは
近年、私たちがよく目にする犬種のほとんどは、日本国内で生まれたものではありません。日本犬とは異なり、ヨーロッパでは作業犬として活躍できるように長所を伸ばすべくブリーディング(交配)をしてきました。その結果、たくさんの犬種が存在し、それぞれに固有の特徴を持っています。
性格もまた、遺伝する要素があります。もちろん、個体それぞれが持つ独自の性格もありますが、遺伝によっても性格は形成されます。例えば、ゴールデン・レトリーバーは狩猟の際に、自分が取ってきた獲物をハンターに渡すという役割をしていたため、人への攻撃性は少なく、人との交流を好む傾向があります。
犬種の特徴を理解する
遺伝によって影響を受ける性格の特徴があることを理解した上で、犬と接することはとても大切です。それにより、犬が「なぜそのような行動をとるのか」が理解できるようになるからです。
例えば、レトリーバーはもともと物を回収する仕事をしていました。その役割を果たすためにブリーディングされてきたため、レトリーバーに「物を持ってこないで」と指示する方が難しい場合もあります。これは、私たち人間が伸ばしてきた長所ですので、レトリーバーが飼い主のもとに何かを持ってくることは自然な行動です。物を持ってきて困るような場合は、物をしまう収納にするなどして、叱るよりも物を咥えられない環境を整える方が効果的です。
このように、犬の性質を理解するには、その犬種の歴史を知ることが重要です。以下に、犬種の特徴がわかりやすいように、JKCの犬種グループ分けとは異なる方法でまとめてみました。
①レトリーバー
日本では、補助犬や家庭犬のイメージが強いレトリーバーですが、本来は「Retriever」というその名前の通り、「Retrieve(取得)」してくることを目的としてブリーディングされています。狩猟の際は、人間が銃で撃ち落とした鳥獣などを拾ってくる役割を担っていたため、物を咥え、運んでくることを得意とします。
代表的なレトリーバー犬種
- フラットコーテッド・レトリーバー
- ゴールデン・レトリーバー
- ラブラドール・レトリーバー
※レトリーバーについては、こちらの記事もご覧下さい。
【犬図鑑】穏やかさと賢さが魅力!6種のレトリーバーたちをご紹介
https://cheriee.jp/dogs/37054/
②スパニエル
スパニエルは狩猟の際に、走り回りながら大声で鳴き立て、鳥を追い立てる役割を担っています。また、何かしらのチョロチョロとした動きに反応して、それを追い回す特性も持っています。運動量も多いため、しっかりと遊んであげないとストレスが溜まってしまうことがあります。
代表的なスパニエル犬種
- キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル
- アメリカン・コッカー・スパニエル
- イングリッシュ・コッカー・スパニエル
- イングリッシュ・スプリンガー・スパニエル
※スパニエルについては、こちらの記事もご覧下さい。
【犬図鑑】陽気で賢くさまざまな個性が!スパニエル5種をご紹介
https://cheriee.jp/dogs/37356/
③ハーディング
ハーディングは、牧羊犬や牧畜犬のうち、羊や牛などの家畜がはぐれないように誘導し、群れに戻す役割を担う犬たちのことを指します。彼らは家畜にそっと近づいて睨みをきかせたり、吠えたり軽く噛み付いたりしながら家畜を誘導します。
彼らにとって物を追いかけることは本来の自然な行動ですので、追いかけるような遊びを取り入れて本能を満たしてあげましょう。また、追いかけてはいけないものをしつけでしっかりと教えるなど、ハーディングたちの追いかけたい本能と上手く付き合っていくことが求められます。
代表的なハーディング犬種
- ボーダー・コリー
- シェットランド・シープドッグ
- ウェルシュ・コーギー・ペンブローク
※ハーディングについては、こちらの記事もご覧下さい。
【犬図鑑】賢く活発でカッコイイ!6種のハーディング・ドッグを紹介
https://cheriee.jp/dogs/37796/
④ポインター・セター
ポインターとセターは、どちらも狩猟の際に獲物の位置をハンターに知らせる役割を担っています。
ポインターは、獲物を見つけると立ち止まり、姿勢を低くして鼻先を突き出し、片足を上げるポーズをとります。これが「ポイント姿勢」と呼ばれる、ハンターに獲物の位置を知らせるポーズです。
一方、セターは、獲物の前で伏せたりしゃがみこんだりして、獲物の位置をハンターに知らせます。獲物を前にして「伏せる(セットする)」ことが、セターという名前の由来です。
どちらもその性質から、鳥に執着する傾向が見られます。
代表的なポインター・セター犬種
- ジャーマン・ショートヘアード・ポインター
- イングリッシュ・ポインター
- アイリッシュ・セター
- イングリッシュ・セター
⑤テリア
かつてテリアは、地中に住むキツネやアナグマ、ウサギなどの巣穴に潜り込み、獲物を追い立てる狩猟犬として活躍した歴史があります。その後、農家のコンパニオン犬として愛され、害獣退治や番犬の役割を果たしてきました。
活発で気が強く、興奮しやすいといった特徴の「テリア気質」を持つ犬が多くいます。初心者が飼うのは難しいとされる一方で、他の犬種では物足りないと感じるテリア愛好家もいます。
代表的なテリア犬種
- ジャック・ラッセル・テリア
- エアデール・テリア
- ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア
※テリアについては、こちらの記事もご覧下さい。
テリア犬32種から注目の8種を厳選して紹介!
https://cheriee.jp/dogs/12258/
⑥ガーディング
その名の通り、ガードする(守る)ためにブリーディングされました。彼らはオオカミなどの外敵から家畜を守る仕事をしています。そのため、身体が大きくて体格の良い大型犬が多く、害獣から襲われても大怪我をしないように分厚い被毛を持つ犬もいます。防衛本能が強く、見知らぬ人に対して警戒心を見せることがあります。
代表的なガーディング犬種
- コモンドール
- グレート・ピレニーズ
- マレンマ・シープドッグ
⑦サイトハウンド
サイトハウンドは獣猟犬の一種で、主に視覚を頼りに狩りをします。獲物を見つけると走って追いかけていたことから、非常に足が速い犬種が多くいるのが特徴です。
獣猟犬としての本能が残っているため、動くものを見つけるとすぐさま追いかけてしまったり、走ることに夢中で飼い主の指示を聞かなかったりすることもあります。
代表的なサイトハウンド犬種
- ウィペット
- イタリアン・グレーハウンド
- ボルゾイ
- サルーキ
⑧セントハウンド
セントハウンドも獣猟犬の一種ですが、こちらは主に嗅覚を頼りに狩りをします。獲物の臭いを追跡し、居場所を特定したり、時には巣穴に入り込んで追い立てたりする役割を担っていました。
セントハウンドの外見の特徴として、垂れ耳の犬種が多くいます。これは、嗅覚を最大限に活かせるように鼻先に集中させるためや、巣穴などに入る際に耳の中に土が入らないようにするためだと言われています。
また、見つけた獲物の居場所をハンターに知らせるために吠えていたことから、吠え声が大きく、よく吠える犬が多い傾向があります。
代表的なセントハウンド犬種
- ビーグル
- バセット・ハウンド
- ブラッドハウンド
最後に
犬種の歴史など知る必要ないと思われる方もいるかもしれません。しかし、愛犬の行動や性格を理解するためには、かつてどんな役割をしていたかを知ることが重要です。
愛犬のことをより深く理解し、良い関係を築いていくためにも、犬種の歴史について学んでみてはいかがでしょうか。