新型コロナウイルスにより外出自粛ムードが続く中、保護犬や保護猫の譲渡会の中止が相次いでいます。多くの保護施設では収容数が限界に近づき、経済的な危機に陥っています。譲渡会を行わずに予約制の個別見学会で対応している団体もありますが、それでも見に来てくれる人は限られるので、里親が見つかりにくいのが現状です。
そんな中、ツイッター・ライブやYouTubeなどを使い、オンラインで譲渡会を始めた団体があります。
オンライン譲渡会は、動物保護団体が新型コロナウイルスの悪影響を受けて出した苦肉の策ですが、新型コロナウイルス収束後も発展の可能性があります。
今回は、実際に行われたオンライン譲渡会の例と、メリット・デメリットや今後の可能性についてお伝えします。
この記事の目次
ツイッター・ライブを使った「オンライン譲渡会」
オンライン譲渡会をご覧いただいた皆さまありがとうございました!また、ご参加頂いた配信主の皆さまも大変お疲れさまでした。#オンライン譲渡会
▼譲渡希望受付フォームはこちら▼https://t.co/Jg65q9CXDt
— PETCAMP|オンライン譲渡会見逃し配信掲載中 (@petcamp_inc) April 12, 2020
PET CAMPが開催したオンライン譲渡会では、配信者はツイッターアプリのライブ配信機能を使って保護している動物の様子を視聴者に生配信しています。
里親になることを考えている人は、PET CAMPの譲渡会会場サイトにアクセスし、保護動物の配信一覧から興味のあるものを選んで視聴する仕組みです。その動物が家の中でのびのびと過ごしている日常の姿をリアルタイムで閲覧することができます。
見逃し配信も
PET CAMPは、当日配信を見られなかった人のために、見逃し配信も行なっています。
リアルタイムで質問をしたりすることはできませんが、基本的に当日と同じ動画を視聴することができるので、気になる方はチェックしてみてください。
PET CAMP オンライン譲渡会 見逃し配信
https://petcamp.co.jp/online2020/list#noon
YouTubeを使った「バーチャル譲渡会」
横浜市で犬猫の保護活動をしている個人のボランティアグループ「おーあみ避難所」では、「バーチャル譲渡会」と称し、YouTubeで保護した犬猫の様子を配信しています。
保護犬のバーチャル譲渡会
保護猫のバーチャル譲渡会
バーチャル譲渡会に紹介された保護犬・保護猫については、メールで問い合わせをすることができます。
おーあみ避難所バーチャル譲渡会
http://f20km-petrescue.org/satooya-kai/2624/
OMUSUBIでは里親募集中の犬猫一覧をいつでも閲覧可能
おーあみ避難所が里親を募集している保護犬・保護猫は、OMUSUBIというサイトから確認することができます。
サイトには、保護犬・保護猫の写真に加え、性格や持病の有無、ワクチン摂取や避妊手術について詳しく記載されています。気になった保護犬・保護猫がいたら、おーあみ避難所に連絡してさらに詳しい情報を得られる仕組みです。
OMUSUBI 保護犬猫と里親を結ぶ場所
https://omusubi-pet.com/groups/81
オーストラリアではコロナで保護動物の需要が300%増!?
新型コロナウイルスによる外出制限が続くオーストラリアでは、自宅待機のお供として保護犬・保護猫の需要が急激に高まっています。
王立動物虐待防止協会(RSPCA)ニューサウスウェールズ州支部のスティーブ・コールマン最高責任者によると、同州における里親募集への問い合わせは、新型コロナウイルス以前と比べて約300%増えているそうです。
譲渡会ができずに困っている団体も多い中、オーストラリア・ニューサウスウェールズ州では、新型コロナウイルスが保護動物の里親探しにプラスに作用していることがわかります。
ファーストステップとしての一時預かり
コールマン氏によると、多くの人が保護犬・保護猫をまずは「一時預かり」で引き受けますが、愛着が湧いてそのまま里子として引き取るケースはとても多いそうです。
動物のストレスなど課題もあるものの、里親を見つけるためのファーストステップとして「一時預かり」制度は重要な役割を果たしているのです。
同様のことはニューヨークでも
動物保護団体のマディー・ポーズ・レスキューとベスト・フレンズ・アニマル・ソサエティーによると、シェルターに保護されていた犬や猫がほとんどいなくなったそうな。また、別の団体では、新型コロナウイルスの感染を防ぐため、インターネット上で面談をするなど、引き渡しのプロセスを工夫しているそうです。
新型コロナウイルスによる自宅待機や自粛が長引けば、オンライン譲渡会のような取り組みと相まって、日本でも保護動物の譲渡が加速するかもしれません。
「アフター・コロナ」にも広がる可能性
今回お伝えしたオンライン譲渡会は、新型コロナウイルスで対面の譲渡会ができずに困っている動物の保護団体たちが、苦肉の策として始めたものですが、新型コロナウイルス収束後にもオンライン譲渡会の発展の可能性はあるでしょう。
オンライン譲渡会のメリット
オンラインという特性を保護動物の譲渡会に応用することで、次に挙げられるようなメリットがあります。新型コロナウイルスが終息後も、この特性は飼い主の皆さんに受け入れられるものだと考えています。
1. 気軽に参加が可能
「保護犬・保護猫を飼うことに興味はあるけど、譲渡会に参加するのはちょっと緊張する…」「譲渡会には行ってみたいけど、なかなか時間が合わない…」と思っている人も、オンライン譲渡会なら、インターネット環境さえあれば、好きな時に好きな場所で、気軽に動画を閲覧することができます。
2. 動物の自然な様子がわかる
対面での譲渡会では、知らない人がいることで動物が緊張してしまい、普段の様子が分からないことがあります。オンライン譲渡会では、動物が慣れた環境で、リラックスして遊んだりごはんを食べたりする様子が分かり、飼ったあとの様子をイメージしやすくなるというメリットがあります。
3. より多くの人と動物が出会える
対面での譲渡会では、足を運んだところでしか保護動物に出会うことができませんが、オンライン譲渡会ならより多くの動物と出会うことができます。里親希望者の選択肢が広がるだけでなく、保護動物側もより多くの人に見てもらえることで里親決定の可能性が高くなるかもしれません。
オンライン譲渡会のデメリット
一方で、オンラインであることによるデメリットもあります。
1. 実際に触れ合えない
オンライン譲渡会では、実際に保護動物と触れ合うことができません。動画などで詳しく解説があっても、実際に触れ合ってみないと分からないこともあるでしょう。
2. 里親募集者と希望者が対面で話せない
動物も実際に触れ合ってみないと分からないことがありますが、人間同士も実際に会って話してみないとどんな人か分かりにくい場合があります。里親を募集する側にとっても、里親を希望する側にとっても、対面での会話ができないのは少し不安かもしれません。
恐らく、この問題が一番大きいところでしょう。ほとんどの保護団体は善良な活動をしていますが、ごく稀に金銭を目的とする悪徳な団体が紛れている場合があります。また、里親になる側にも問題がある場合があります。
保護動物の譲渡会、今後の展望は
まだまだオンライン譲渡会には改善の余地があるでしょう。しかし、新型コロナウイルス終息後も、オンラインと対面両方を使った譲渡の形が発展する可能性は十分にあると考えます。
例えば、オンラインで広く里親を募集し、里親希望者は気になったところとまずはメールやビデオ通話などでやり取りをし、最後に対面で実際に動物と触れ合い、里親募集者と面談をして、譲渡を確定する流れなどが考えられます。
オンライン譲渡会の可能性の広がりにより、新型コロナウイルスによる里親探しの危機が、今後の動物保護活動にプラスに転じてくれることを願います。