新型コロナウイルス感染症が世界中で猛威を奮っています。日本でも先日、ついに全国に緊急事態宣言が発令されました。
外出自粛やソーシャル・ディスタンシングの徹底が叫ばれている中、犬や猫などのペットを飼っている人は、「ペットは感染しないの…?」「自分が感染したら、ペットはどうすればいいの…?」「今、動物病院に行っても大丈夫…?」など、いろいろ心配な事があるでしょう。
本記事では、獣医師の立場から、ペットの新型コロナウイルス感染症に関する情報や動物病院を受診する際の注意点をまとめました。
この記事の目次
海外における小動物の新型コロナウイルスの感染状況
2020年3月、香港では犬、ベルギーでは猫の新型コロナウイルスへの感染が報告されています。これらのニュースは、犬や猫と共に暮らす人たちにとって大きな衝撃だったのではないでしょうか。
動物から人への感染はあるのか?
現在、OIE(国際獣疫事務局)によれば、新型コロナウイルスの動物から人への感染の可能性は非常に低いとされています。しかし、今後、ウイルスの変異によって状況は変化するかもしれません。
新型コロナウイルスでなくても動物から人に感染する病気はありますから、平時から動物との過度のスキンシップは避け、触れ合った後は手洗いを徹底しましょう。
人から動物への感染はあるのか?
濃密な接触を長時間行うことで人から動物へ感染することはあるかもしれません。実際に、世界では数件の感染報告がされています。
ある論文には、犬より猫やフェレットの方が新型コロナウイルスに対して感受性が高いとの研究結果が報告されています。また、成猫より子猫の方が感受性が高いという報告もあります。
いずれにしても、現時点では、過度のスキンシップは避け、触れ合った後は手洗いを徹底するようにするのが最も良い対策と言えるでしょう。
動物病院受診の際に注意したいこと
外出自粛とは言っても、ペットの具合が悪いなど、動物病院を受診しなくてはならないときはあるでしょう。飼い主であるあなたが、新型コロナウイルスに感染しないために、動物病院を受診する際に注意すべき点をまとめました。
1. ワクチンなどは極力時期を遅らせる
フィラリアの予防に関しては、蚊の発生時期との兼ね合いがあるため避けられません。しかし、混合ワクチンや狂犬病ワクチンの接種は、少し時期を遅らせても効果に差はほとんどありません。
また、避妊/去勢手術や歯石の除去など健康維持を目的とした手術についても、できる限り日程を再考しましょう。
2. 公共交通機関を利用しない
自家用車で動物病院に行くことで、待合室が混雑している際、他の人との接触を避けるために車中で待つことができます。
また、ペットにとっては、いろいろな動物のにおいのする待合室より、静かな車中の方がストレス緩和になるかもしれません。車を利用できない場合は、混雑時は換気の良い動物病院の外で待つなど工夫が必要です。
3. 予約を入れる
動物病院の中には、予約制を取り入れることによって混雑緩和を行っているところも多いでしょう。普段、予約の習慣がなくても、この状況下では、出かける前に動物病院へ忘れずに連絡しましょう。
動物病院側でも病院内での濃厚接触には気を使っているところも多いため、かかりつけの動物病院と相談をしながら、避けるようにしたいですね。細かな診察の体制については、かかりつけの動物病院の方針を確認してください。
4. 入院時の面会は避ける
容態が重篤な場合を除き、入院時の面会は避けた方が無難です。
こちらも、動物病院にて対策を行っていることが多いようですので、獣医師と相談して、できるだけ電話などで様子を聞くに留めておきましょう。
もしもあなたが感染してしまったら
残念ながら、現在、新型コロナウイルスへの感染を完全に予防することはできません。万が一、あなたが感染してしまったら、一緒に暮らしているペットはどうすればよいのでしょうか。
自宅療養の場合
他の人に対するのと同様、ペットへの接触を極力控えてください。別の部屋で過ごすなどの、自宅での隔離が必要です。
もしどうしても隔離ができない、体調不良によって世話が困難などであれば、早めに頼れる知人に預ける決断をしましょう。
ペットを預ける場合
ペットの体表に付着したウイルスを落とすためにシャンプーをするのが望ましいです。その際、毛に当たった水が飛び散らないようにシャワーの水圧は弱めがいいとされています。しっかり拭いた後は、タオルは通常の洗濯用洗剤で洗濯します。
キャリーバッグや首輪などは、0.05%に薄めた家庭用塩素系漂白剤で拭きます。
アニコムのペット預かりサービスも選択肢に
アニコムホールディングス株式会社は、新型コロナウイルスに感染してしまった飼い主さんのために、隔離や入院の間ペットを無償で預かってくれるサービス「#StayAnicom プロジェクト」を行っています。
このサービスは、アニコムのペット保険に加入していない場合にも利用することができます。もし周りにペットを預けられる人が見つからなければ、こうしたサービスを利用することも考えてみましょう。
ペットの体調が悪く、周りに新型コロナ感染者がいたら
「周りに新型コロナウイルス感染者がいて、ペットが体調を崩してしまった。」これは、最も悩ましいケースです。
現在、動物において新型コロナウイルスの感染によって症状が現れるかについてはわかっていないことが多いです。しかし、新型コロナウイルス感染症でないにしても、体調不良であれば動物病院への受診が望ましいです。
予め連絡を受けていれば、動物病院側も隔離して診察を行う等、工夫ができるかもしれません。飼い主の方ができることとして、直接行かず、必ずかかりつけの動物病院に電話をかけて、相談してみてください。
東京都獣医師会が、ペットの飼い主さんに向けた新型コロナウイルスのQ&Aサイトを開設しておりますので、こちらもご参照ください。
東京都獣医師会 飼い主さんに向けて
https://www.tvma.or.jp/public/2020/04/post-66.html
まとめ
動物における新型コロナウイルスの伝播様式や病原性などは、今も世界中で研究中の段階です。しかし、自らの感染を防ぐことが、ペットへの感染を防ぐことになることは間違いありません。
ひとりひとりが感染予防を徹底し、一刻も早い終息を迎えることが重要です。自粛自粛でストレスもたまっているでしょうし、いつ終息を迎えるのかわからず、今後に対する不安は大きいと思いますが、全員で乗り越えていきましょう。