犬からヒトに感染する可能性のある「人獣共通感染症」は様々ありますが、ウイルスよりもヒトに感染しやすいのが、寄生虫による感染症。
犬に寄生する寄生虫として、蚊を媒介するフィラリアはよく知られていますが、実は他にも予防しなければならない寄生虫はたくさんいます。
今回は、犬のお腹に寄生する「内部寄生虫」と、犬の皮膚に寄生する「外部寄生虫」の予防方法をご紹介します。大切な愛犬と、飼い主さんや家族の健康を守るために、しっかり寄生虫の予防をしましょう。
フィラリアの予防についてまとめた記事はこちらからご覧ください。
この記事の目次
内部寄生虫とは
内部寄生虫とは、いわゆる「お腹の寄生虫」のことです。ヒトに感染する人獣共通感染症にあたるものもあるため、服薬によりしっかり予防しましょう。
対象となるのは以下の寄生虫です。
回虫名 | 症状 | 人獣共通感染症 |
---|---|---|
犬回虫 | 消化器症状の他、重篤化すると神経症状や肺炎を起こします。 | ○ |
犬小回虫 | 犬回虫よりやや小さく、消化器症状を呈します。 | |
犬鉤虫 | 小腸粘膜に咬みつくため、消化管出血を起こします。 | ○ |
犬鞭虫 | 土壌中でかなり長い期間の感染能を有します。 | ○ |
多包条虫 | 犬やキツネでは無症状ですが、ヒトに感染すると長い潜伏期間の後、肝機能障害や神経症状呼吸器症状を呈して死亡します。 | ○ |
瓜実条虫 | ノミによって媒介され、糞便中に片節が見られます。 | ○ |
内部寄生虫の予防方法
飼い主さんの中には、「お腹の寄生虫の予防なんて今までしてこなかったけど大丈夫かな…?」と心配になった方もいるでしょう。
実は、お腹の寄生虫の駆除効果は、フィラリアのお薬の中に含まれていることがあります。
お腹の寄生虫に関してもフィラリアと同様、1ヵ月に1回体内に侵入したものを駆虫する方式となるので、各製薬会社が工夫してくれているのです。
なお、服用している薬によっては全ての寄生虫を駆虫できるわけではありません。使用している薬がどんな寄生虫に対応しているのか把握しておくことも大切です。
フィラリア薬での予防の落とし穴は「冬の予防」
フィラリア薬は蚊がいる季節を中心に投与します。では、冬の期間、お腹の寄生虫の予防はどうなっているのでしょうか。
答えは「完全に無防備」です。
フィラリアと異なり、お腹の寄生虫にシーズンはありません。冬の間は別途、駆虫薬を投与する必要があります。または、フィラリア薬を通年投与します。
万が一、冬でも室内のプランターなどの水回りから蚊が発生したとしてもフィラリア薬を飲み続けていれば安心です。また、フィラリア薬投与前の血液検査が不要になるメリットもあります。
いずれにしても、冬も忘れずに寄生虫感染のケアをしましょう。
外部寄生虫とは
外部寄生虫とは、皮膚表面などに寄生する寄生虫のことで、犬においてはノミとマダニが重要です。これらの寄生虫は刺咬によるアレルギーの他に、様々な疾患を媒介します。
ヒトにも害を及ぼす寄生虫ですので、しっかりと予防しましょう。
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
2013年、日本で初めて重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の患者が確認されました。
SFTSはウイルスを持ったマダニに刺されることで感染します。特効薬もなく、死者も出ていることからニュースでも取り上げられたことは記憶に新しいのではないでしょうか。
厚生労働省によると、現在も年に60〜90名の感染が確認されています。
西日本での発生が中心ですが、ウイルスを保有するマダニが他の地域でも確認されていることから、いつどこで発生してもおかしくない疾患です。
犬でもヒトと同様の症状を呈することがわかっており、感染しないためにもマダニに対する予防は公衆衛生上でも非常に重要と言えます。
マダニ感染症について、詳しくはこちらの記事もご参照ください。
外部寄生虫の予防方法
フィラリアやお腹の寄生虫の予防薬が経口投与なのに対し、外部寄生虫の予防薬は2種類のタイプがあります。
経口タイプ
おやつのような感覚で投与が可能。
フィラリアやお腹の寄生虫の予防も兼ねているタイプもあり、基本となる全ての寄生虫予防が一度にできるメリットがあります。
投薬してすぐにシャンプーも可能です。
スポットタイプ
首筋に垂らす液体状の薬剤。
投与後に吐き出したりする心配がなく、確実な予防が可能です。
体質にとっては基剤のアルコールに反応して皮膚炎を起こすこと、シャンプーは24時間の間隔が必要となることに注意が必要です。
医薬品と医薬部外品
動物病院以外の場所でも、ノミ・マダニ予防の商品を見かけることがあります。
含まれている有効成分によって区分されていますが、有効性と持続性において顕著に差が出るというデータもあります。
獣医師の視点から言わせると、動物病院で処方される予防薬を使用した方がよいと考えます。
医薬品と医薬部外品の効果の違いについては、こちらのサイトもご覧ください。
フロントライン プラス 概要・特徴
https://n-d-f.com/frontline/
まとめ
ウイルス疾患よりもヒトに感染することが多いのが寄生虫疾患です。
愛犬の健康を守るため、そして家族の健康を守るためにも予防できるものはしっかりと予防していきましょう。
そして一生涯服用する薬だからこそ、どんなものを飲んでいるのか正確に把握しておきたいですね。