【獣医師監修】狂犬病のワクチン接種。今年は12月31日までに打とう。

2024.07.30
【獣医師監修】狂犬病のワクチン接種。今年は12月31日までに打とう。

狂犬病は毎年1回、ワクチンの予防接種を義務付けられている感染症です。先日、海外から来日した人が狂犬病を発症し、亡くなったとニュースになったのも記憶に新しいでしょう。

ところで皆さんは、狂犬病の恐ろしさをきちんと理解しているでしょうか?

今年は新型コロナウイルスの影響で集団接種を中止した自治体も多く、「一年くらいは打たなくても大丈夫」なんて思っていませんか?本記事では、狂犬病について詳しく解説していきます。

この記事の目次

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狂犬病ってどんな病気?

狂犬病とはどんな病気なのか?
狂犬病は、狂犬病ウイルスによる致死的な灰白脳炎です。ヒトを含む全ての哺乳類に感染し、ごく一部の地域を除き世界中に分布しています。

外国の狂犬病事情と日本の狂犬病事情を比較してみましょう。

世界の狂犬病

日本の周辺を含む世界のほとんどの国・地域(150カ国以上)でいまだに発生しており、毎年約55,000人の死者がでています。そのうちアジアとアフリカが95%を占めており、ヒトの狂犬病の感染は99%が犬からという報告もあります。

狂犬病清浄国とされているのは、日本、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、スカンジナビア半島の国々などごくわずかです。

日本の狂犬病

日本では、1897年に初めて狂犬病に関する科学的な記録があります。その後、第一次世界大戦や関東大震災、太平洋戦争などの混乱期に大流行し、犬およびヒトの狂犬病が多数発生しました。

1950年に狂犬病予防法が制定され、犬の登録、ワクチン接種などが徹底され、1957年に猫が感染したのを最後に、日本で狂犬病は撲滅されました。

しかし、狂犬病はアジアを中心に流行が続いており、グローバル化によって日本への侵入リスクは常に存在している状況です。

未登録の輸入動物に対しては水際対策として輸入検疫を行い、狂犬病の国内への侵入を防止しています。しかし、ヒトにおける海外帰国者での狂犬病発症者はいまだに少数存在し、油断できない状態が続いています。

狂犬病の症状

狂犬病の症状とはどんなものか?致死率は?
実際に狂犬病の症状を見たことのある方はあまりいないでしょう。
どんな症状が現れるのか、詳しくご紹介していきます。

感染経路

狂犬病ウイルスは唾液中に排出されるため、咬傷からの唾液で直接感染します
もしくはウイルスを含んだ唾液が粘膜面に接触したり、コウモリの生息場所の洞窟では飛沫によっても感染することがあります。

潜伏期

潜伏期は2〜8週と言われていますが、1週程度のことから1年近くかかることもあり不定期です。ヒトも犬も症状は同じで、病期によって3つに分けられます。

①前駆期

この時期の症状は曖昧で、気づかれないことも多くあります。
発熱、挙動異常、眼瞼・角膜反射が緩やかになり、咬傷部をなめたりかんだりするなどの行動をとります。恐水症や恐風症はこの時期に見られます。

②狂騒期

中枢神経系の辺縁が侵されると、異常興奮、不安、吠え、突発的な攻撃、険悪な顔つき、ケージなど周囲のものに対する攻撃、異食、徘徊、運動失調、発作などの症状が見られます。

③麻痺期

四肢の不全マヒ、呼吸困難、よだれの垂れ流し、食事をのみ込めなくなるなどの症状を示し昏睡状態に陥ります。その後、呼吸麻痺により死亡します。

狂犬病の診断法

狂犬病はどのように診断されるか?治療法は?
狂犬病が疑われる場合には厳重に隔離して症状の経過を観察します。

また、咬傷事故を起こした動物は最低2週間の係留観察が義務付けられています。観察中に発症した場合は直ちに殺処分し、脳組織からウイルス抗原を検出します。

なお、犬での生前検査は検出率が低く、実用化されていません。

狂犬病の治療および予後

狂犬病 ワクチン 予防接種
ヒトでは野生動物にかまれた後は石鹸と水で傷口をよく洗い流し、できるだけ早期に狂犬病ワクチンと抗狂犬病ガンマグロブリンを投与する治療(暴露後接種)が行われます

しかし、犬においては狂犬病の治療は行いません。予後は不良で、発症後7〜10日で例外なく死亡します。

狂犬病の予防

狂犬病はワクチンを摂取することで予防が可能だが
狂犬病予防法でワクチン接種が義務付けられてから、わずか7年で日本の狂犬病が撲滅されたことを考えると、狂犬病のワクチン接種が予防に非常に効果的であることがわかります。

WHOのガイドラインでは、ウイルスの国内侵入時の蔓延を防止できる目安としてワクチン接種率70%以上という数値が設けられています。

狂犬病予防法

狂犬病のヒトへの感染源のほとんどが犬であることから、狂犬病予防法は主に犬を対象としています。

また、狂犬病予防法では以下のことが定められています。

  • 91日齢以上の犬を迎え入れたとき、30日以内に各市町村に犬を登録すること
  • 91日齢以上の犬に毎年狂犬病の予防接種を受けさせること
  • 犬に鑑札と注射済票を付けること

これらを怠ると20万円以下の罰金の対象となり、飼い犬は捕獲・抑留の対象となります。

注意
狂犬病予防法では、狂犬病予防注射の実施期間を毎年4月1日から6月30日までと定めていますが、令和2年6月11日に公布・施行された「狂犬病予防法施行規則の一部を改正する省令」により、令和2年12月31日までに予防注射を打てば法律に定めた期間内に接種したことになります。

室内飼いなのでワクチン接種しなくてもいい?

日本の法律で狂犬病のワクチン接種は義務付けられています

室内飼いであっても他の哺乳類と接する機会は十分にあります。普段は大人しくても、万が一狂犬病に感染してしまったら、意外な攻撃性が見られることもあります。
室内、屋外に関わらず、全ての犬で予防を徹底しましょう。

まとめ

狂犬病の予防接種は法律で義務づけられている
日本では60年以上、犬での狂犬病の発生がないからといって、狂犬病のワクチンを接種しなくていいわけではありません。

厚生労働省の報告では、平成30年度の狂犬病ワクチン接種率は71.3%とギリギリの数字であり、国内に侵入してしまえば、いつ蔓延してもおかしくない感染症です。

今年は新型コロナウイルスの影響で集団接種を中止している自治体もありますが、一人一人の予防意識をしっかり持ち、予防接種を忘れずに受けさせるようにしましょう。

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