犬の飼い主さんなら一度くらいは、「我が子の年齢、人間に換算したら何歳くらいになるんだろう」と考えたことがあるのではないでしょうか。
「犬の年齢に7をかければいいんでしょ?」「計算式は知らないけど、ネットで調べた」という方も多いと思います。しかし、この度、その計算方法を大きく変える論文が発表されました。
この記事では、今まで考えられていた計算方法と、新しく発表された計算方法についてご紹介します。
この記事の目次
これまでの犬の年齢換算の考え方
これまで考えられてきた犬の年齢換算をする際の計算式は、大きく分けて2種類あります。それぞれ見ていきましょう。
これまでの計算方法①単純に7倍する
かつて「犬はヒトの7倍のスピードで成長する」と考えられ、「ドッグイヤー」という言葉も生まれました。計算のしやすさから大まかな年齢を知る際には有効ですが、あまりに短略的すぎて正確性には欠けます。
現在では犬の年齢換算の計算式としてはほとんど使われなくなりましたが、暗算やイメージのしやすさから、いまだにこの方法で計算しているという方もいるかもしれませんね。
また、技術革新などの変化のスピードが速いことを犬の成長スピードになぞらえて、「ドッグイヤー」ということもあります。
これまでの計算方法②1歳で一気に大人になる計算式
現在では最も一般的な考え方です。基本的に、小型犬や中型犬は成長のスピードが速くて老化は遅い、逆に大型犬は、成長のスピードは遅くて老化は速いという傾向が見られます。
犬の大きさによって計算方法が異なりますので、それぞれ見ていきましょう。
小型犬・中型犬
小型犬・中型犬では、最初の1年で20歳、以降は4歳ずつ増えていきます。
小型犬・中型犬の計算式
20+(犬の年齢-1)×4
大型犬
大型犬では、最初の1年で12歳、以降は7歳ずつ増えていきます。
大型犬の計算式
12+(犬の年齢−1)×7
この計算式ですと、小型犬では5歳で36歳、大型犬では5歳で44歳という結果になり、なんとなくイメージしているものと近くなりました。計算してみると、犬の大きさに関係なく生後1,2年で一気に大人になることが分かります。
少し計算は複雑かもしれませんが、単純に7倍するよりは正確な値が出そうですね。
ちなみに、これらはあくまで目安です。犬のサイズや個体、犬種によっても大きく異なる可能性がありますので、参考程度としておくと良いでしょう。
論文の概要
2020年2月に論文を発表したアメリカ・カリフォルニア大学の研究チームは、老化に伴い変化するDNAのメチル化に着目しました。
DNAのメチル化って何?
DNAのメチル化とは、DNAの塩基配列のシトシンにメチル基が付加する化学反応です。生物の体を正確に形づくるために必須の仕組みであると考えられ、老化やガンに関連していることが分かっています。
ヒトも犬も加齢に伴いDNAのメチル化が進行するため、血液を分析することで生物学的年齢の推定が可能です。
今回は0〜16歳のラブラドールレトリーバー104匹と、1歳から103歳までの320名のヒトの血液サンプルを分析し、犬とヒトを比較しました。
上のグラフは今回示されたおおよその年齢です。その結果を表にまとめました。
犬 | ヒト | |
---|---|---|
乳幼児から思春期までの期間 | 2〜6ヶ月 | 1〜12年 |
思春期から成長が完了するまでの期間 | 6ヶ月〜2年 | 12〜25年 |
成熟期 | 2〜7歳 | 25〜50歳 |
シニア期 | 7歳以降 | 50歳以降 |
これらのグラフや表から、生まれてから数ヶ月で人間に相当する成人になり、生後1年経過した時には人間の約30歳に相当すると考えられます。
また、成長のスピードは若いほど速く、4歳を経過した頃には人間の中年に相当し、以降はなだらかに老化が進行していくことが示されました。
気になる計算式は?
さて、気になる計算式はこちらです!
16ln(犬の年齢)+31
数学に明るくない方は「???」という状態かもしれませんが、「ln」は自然対数を表しています。よく分からないという方も、分かったという方も、まずは上の式をコピーして犬の年齢を当てはめて、Googleで検索してみましょう!検索すると、電卓が起動して一瞬で計算結果が表示されます。
あなたの愛犬の年齢は人間に換算すると何歳でしたか?この計算式によると、1歳の犬は人間の年齢に換算すると31歳、5歳の犬は56.7歳という結果が出ました。
ただし、今回の調査ではラブラドールレトリーバーのみが対象とされたため、小型〜中型犬は少し計算が異なるかもしれません。今後の研究に期待しましょう。
「犬の成長と老化」から「人間の成長と老化」が見えてくる
今回ご紹介したような犬の成長と老化に関する研究は、人間の成長と老化への理解を深める役割を果たすとして注目されています。
これは、青年期・老年期の行動のほか、加齢がDNAへ与える影響などが犬と人間で似ているからです。
多くの科学者は、犬のことを、人間の加齢における「モデル」と呼んでいます。
犬も人間も同じ!?年齢と性格の関係
最近、ウィーンの研究者が犬の性格が時間と共に変化することを発見しました。
犬は年齢を重ねるごとに性格が丸く、柔らかになり、若い時ほど活動的ではなくなり、不安になることも少なくなるそうです。
中には、生まれつき成熟した性格を持つ犬もおり、その場合は、加齢による変化は少なくなるんだそうです。
人間も思い当たることが多いですよね。犬と人間は似ているということでしょうか。
犬と人間の健康長寿のために
これらの研究は、「全ての犬とその人間(飼い主)の、より長く、より健康な生活」を目標にしています。
犬と人間を比較して研究することで、犬と飼い主の双方が老化によって苦しむことが少しでもなくなれば、素晴らしいことですよね。
とはいえ、犬と人間で決定的に違うことは、犬の老化は人間よりもはるかに早いということです。
私たちより早いスピードで歳をとっていく愛犬が、より長く健康的な犬生を考えながら過ごしていきたいですね。
まとめ
今回の論文により、犬は生後数年で一気に老化が進み、その後は緩やかに老化することが示されました。今回はラブラドールレトリーバーを対象として調査されましたが、今後は小型犬や他の大型犬も研究対象になるかもしれません。
我が子の年齢を当てはめてみた方は少しショックな気持ちになったかもしれませんが、私たちが気づかないうちに愛犬の老化は確実に進んでいます。「うちの子はまだまだ若いから」と思わず、病気になってしまったり、足腰が弱ってしまう前に、早い段階からケアをしてあげるといいかもしれませんね。