鳥の飼い主のみなさんは「オウム病」の対策をしっかりしていますか?
オウム病はヒトにも感染する人獣共通感染症で、鳥と触れ合ったあとに手を洗わずに食事などをすると感染してしまう可能性があります。
この記事では、鳥の飼い主さんが特に注意したいオウム病について説明し、国内での集団感染事例や予防法についてご紹介していきます。
この記事の目次
オウム病とは
オウム病は、「オウム病クラミジア」という細菌によって起こる人獣共通感染症です。感染した鳥類の排泄物中に放出され、それをヒトが吸い込むことで感染します。さらに、口移しでエサを与えたり、噛まれたりすることでも感染することがあります。
病原体が初めて分離されたのがオウムだったことからオウム病と名付けられましたが、ニワトリやアヒル、ドバトなどの鳥類だけでなく、犬や猫、牛や羊などの哺乳類からも感染が報告されています。
日本では、オウム病は、感染症法において4類感染症に定められており、診断した医師は保健所に届け出なければいけません。
オウム病の症状
オウム病の症状はヒトと鳥では異なります。それぞれ見ていきましょう。
ヒトの場合
潜伏期間は1〜2週間ほどで、発熱、咳、頭痛、倦怠感、肺炎などの風邪に似た症状が見られます。高齢者は重症になりやすく、呼吸困難や意識障害、ショック症状により死に至ることもあります。
また、科学的には明らかになっていませんが、オウム病に罹患した妊婦が亡くなった例もあることから、妊婦がオウム病クラミジアに感染すると重症化する、もしくは死亡リスクが高まる可能性があり、特に注意が必要とされています。なお、小児は比較的感染しにくいとされています。
ヒトのオウム病の感染状況(2006年4月〜2017年3月)
ヒトのオウム病は毎年感染が確認されています。
年 | ’06 | ’07 | ’08 | ’09 | ’10 | ’11 | ’12 | ’13 | ’14 | ’15 | ’16 | ’17 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
報告数 | 16 | 29 | 9 | 19 | 11 | 12 | 6 | 6 | 8 | 5 | 6 | 2 |
2006年から2017年の報告された129例のうち、動物等からの感染が確定または推定されたのは110例で、101例が鳥類から感染したと推定されています。そのうち、インコが56例、ハトが27例でした。
鳥の場合
オウム病の潜伏期間は3日から数週間です。無気力、食欲不振、体重減少、羽のけばたち、下痢などの症状が見られます。
数年経っても症状が現れない場合もありますが、オウム病に感染している動物はクラミジアを排出することから、症状が見られなくてもヒトへ感染することがあるため注意が必要です。
オウム病の感染事例
ヒトのオウム病は国内でもしばしば集団感染が起こっています。鳥類を飼育している施設だけでなく、福祉施設でも集団感染しています。
2001年の事例
2001年から2002年にかけて、花と鳥のテーマパーク「松江フォーゲルパーク」で集団感染が起こりました。
最初に従業員に症状が出て、来園者にも発症し、最終的に従業員3名、実習生2名、来園者12名の計17名が集団感染しました。
感染源は国内の他の施設から来た4羽のオウム・インコ類であると推測されたため、完全隔離・治療されました。また、当施設は約1ヶ月間完全休業、約3ヶ月半一部施設の休園をしました。
2005年の事例
2005年に神戸市の「神戸花鳥園」で従業員11名が感染した集団感染が起こりました。
この飼育施設では1000羽近い鳥を飼育していたにも関わらず、個体識別がほとんどされておらず、検疫も実施していませんでした。全鳥を検査した結果、4羽の鳥から大量のクラミジアが見つかり、死亡した1羽からもクラミジアが検出されました。
解析の結果、この5羽のうち、比較的狭い部屋で放し飼いされていたヒムネオオハシという鳥が感染源であり、その部屋で鳥の世話をした人が感染したと考えられています。
2014年の事例
2014年に川崎市にある社会福祉施設でオウム病の集団感染が発生しました。施設の職員5名と利用者7名が感染しました。
この年の2月は風が強く、大雪が降ったことから、換気扇の室外フード内にハトが避難した可能性が考えられています。そして一部の換気扇のみを作動させることで、他の換気扇から外気が吸引されてしまい、オウム病の原因菌を含むハトのフンが室内に舞い込んだことで集団感染したとされています。
オウム病の予防方法
オウム病の予防ワクチンは開発されていません。そのため、感染しない環境作りを心がけることが大切です。
- 鳥との接触を避け、むやみに触らない。特に妊婦は注意する。
- 鳥を飼うときは、ケージ内の羽や糞をこまめに掃除する。
- 鳥の世話をした後は、手洗い、うがいをする。
- 鳥の健康管理に注意する。
- 口移しでエサを与えない。
新たに鳥をお迎えした場合は、少なくとも2週間は他の鳥との接触は避けましょう。海外から輸入されてきた鳥はオウム病クラミジアを保有している可能性もあります。
また、鳥はストレスを感じたり、体調が悪くなったりすると、排泄物にオウム病クラミジアを排出しやすくなるため、ストレスの溜まらない環境を作りましょう。
オウム病に感染しないために
オウム病は鳥類を飼育している人にとっては必ず気をつけなければいけない人獣共通感染症です。動物ではあまり症状が現れないこともあるため、ペットが元気だと思って油断してしまうと感染してしまう恐れがあります。
過度に恐れる必要はありませんが、高齢者や妊婦がオウム病クラミジアに感染すると命に関わることもあります。室内を清潔に保ったり、鳥に触れたあとは必ず手を洗う習慣をつけるようにしましょう。