今回のテーマは、愛猫の毛が抜ける、皮膚が赤くなるなど、猫の皮膚に関する様々なトラブルについてです。
猫の皮膚トラブルは、一時的なものなら問題ありませんが、それが何日も続き、どんどん広がっていく場合は注意が必要です。皮膚の痒みや違和感は、猫にとっても大きなストレスになります。
猫の皮膚に何が起きているのかを、獣医師と一緒に詳しく勉強していきましょう。
この記事の目次
そもそも皮膚異常とは
皮膚が赤くなっている、痒みがあるなど、皮膚全般の異常のことです。外観に異常が見られるため、一緒に生活していて見つけやすい異常でもあります。
猫で見られる皮膚異常の一例を紹介します。
- 紅斑:赤い斑で、皮膚に盛り上がりは見られない。毛細血管の充血によって起こる。
- 脱毛:猫は全身が毛で覆われているため、全身のどこでも起こり得る。
- フケ:表皮のターンオーバーの短縮、あるいは角質の剥脱阻害が考えられる。
- カサブタ:びらんや潰瘍の上に滲出物や扁平上皮が固まって形成される。
猫の皮膚異常で受診した際に聞かれること
猫の皮膚疾患は、受診時の皮膚の状態だけでは情報が不十分です。
次のような点を飼い主さんが事前に把握しておくと、診断がスムーズに進みます。
- 初発年齢:幼齢時に発生するもの、老齢で発生するものがある
- 季節性:夏場や冬場で症状に変化はあるか
- 初発部位:最初はどこから始まったのか
- 痒みの程度:強い痒みがあるか、本人が気にしている様子はあるか
- 投薬歴:過去の治療歴、投与した薬剤の反応性
- 経過:病変の拡大、いつ頃からかなど
猫の皮膚疾患で考えられる疾患9つ
皮膚疾患は命に関わることは少ないですが、痒みがあると非常にストレスです。
そのストレスによって別の病気にかかることもあるため、早めに原因を取り除き、楽にしてあげましょう。
①膿皮症(のうひしょう)
【症状】
・皮膚小環:カサブタを伴うやや隆起した発赤が、細菌感染部位から円形に広がる。背中に見られることが多い。
・深在性膿皮症:細菌感染が皮膚の深部に及んだ状態。赤く腫れ、痛みを伴う。【原因】
細菌が表皮や毛包に入って感染。皮膚にはバリア機能があるが、環境の悪化や栄養不良、他の感染症やアレルギーなどによってバリアが弱まると発症する。
②ノミアレルギー性皮膚炎
【症状】
痒みを伴う皮疹。【原因】
ノミに対するアレルギー反応。
ノミの寄生数には関係なく、一匹でもノミがいればノミアレルギー性皮膚炎を発症する可能性がある。【備考】
ノミアレルギーによって好酸球性肉芽腫などが悪化することもある。
③食物アレルギー
【症状】
痒み、脱毛、全身性粟粒(ぞくりゅう)性皮膚炎。
特に首から上(頭部、頸部、耳介)によく見られる。【原因】
食物抗原に対するアレルギー反応。
犬と異なり、猫では食物アレルギーがどのように起こるのか解明されていない。
④皮膚糸状菌症(ひふしじょうきんしょう)
【症状】
・脱毛(初期段階)。
・多量の鱗屑(りんせつ:皮が剥けてカサカサした状態)を伴う脱毛性紅斑。
・細菌の二次感染で痒みが見られることも。【原因】
皮膚糸状菌という真菌(カビの一種)による感染症。【備考】
皮膚糸状菌症はヒトにも感染することが知られており、猫はヒトへの重要な感染源として問題視されている。多頭飼育の場合は感染が蔓延する恐れがあり、早期に感染猫を隔離するのが大事。
落ちた皮膚や被毛が感染源となるため、環境の浄化も重要。
⑤舐性皮膚炎(しせいひふえん)
【症状】
脱毛、違和感。【原因】
ストレスや退屈などによって猫は自分の体を舐めるが、ザラザラの舌で舐め続けると皮膚が炎症を起こす。【備考】
元々そこに何らかの皮膚異常があったから舐めているのか、舐めた結果皮膚異常が生じているのかの判断は困難。
⑥肥満細胞腫
【症状】
悪性腫瘍が、特に頭部や頸部に発生することが多い。
小さい上に、本人が気にすることも少ないため、発見が遅れることも多い。【備考】
外科切除では広範囲の切除が望ましいとされているが、猫の肥満細胞腫では局所での攻撃性は低く、術後の予後は良好。
一方で、転移している場合の予後は悪いとされ、特に多発性(複数か所に病変が存在)の場合は要注意。
⑦扁平上皮癌(へんぺいじょうひがん)
【症状】
白い猫に発生しやすい癌で、好発部位は鼻、耳介、眼瞼、口唇。
病変部は潰瘍化して出血しやすく、顔面の変形も見られることがあるため非常に痛々しく見える。【備考】
転移速度は遅い。
⑧脂肪種
【症状】
脂肪細胞の増殖による良性腫瘍で、触るとプヨプヨしている。【備考】
単独で悪さをすることはあまりないが、発生部位と大きさによっては歩行や飲食に支障を来たすことも。
⑨表皮嚢胞(ひょうひのうほう)
【症状】
表皮にしこりができる。
表皮の角質・脂肪が皮膚内に溜まったもので、腫瘍ではない。【原因】
皮下に嚢胞(袋)ができ、そこに古くなった角質などが溜まることで腫瘤となる。【備考】
腫瘍ではないので転移することはない。
しかし、大きくなりすぎると自壊の恐れもあるため、手術によって切除する必要がある。
猫の皮膚異常は早めの受診を!
皮膚病変の診断や治療には時間がかかるものもあります。
細菌培養検査では2〜3日、アレルギー検査では1週間程、食物アレルギーの原因を調べるための除去食試験では数ヵ月かかることもあります。
痒みなどのストレスを早く取り除いてあげるためにも、早めに動物病院を受診しましょう。
まとめ
猫の皮膚異常の相談は意外と多いものです。皮膚疾患は原因がなかなか特定できないことも意外と多く、獣医師の頭をしばしば悩ませます。
愛猫の皮膚トラブルを見つけた場合は、気軽にご相談ください。一緒に愛猫の悩みを解決していきましょう。