犬や猫、鳥などの身近な動物は、昔から多くの人に親しまれてきました。
これは、有名な作曲家や、クラシック音楽を愛する人たちも例外ではありません。
歴代のクラシック音楽の中には、動物からインスピレーションを得て作られた曲や、旋律から動物のイメージが膨らむ曲などが存在します。
今回の記事では、動物と関連する有名なクラシック音楽を4つご紹介します。
みなさんも実際に、動物のイメージとリンクさせながら音楽を聴いてみてくださいね。
この記事の目次
ショパンと恋人の子犬
最初にご紹介するのは、ポーランドの作曲家フレデリック・ショパンによる『子犬のワルツ(ワルツ第6番)』。
とても有名な曲なので、クラシック音楽に馴染みのない人でも一度は耳にしたことがあるでしょう。
『子犬のワルツ』は、その短さから「Minute Waltz(1分間のワルツ、一瞬のワルツ)」とも呼ばれています。
モデルはショパンの恋人の愛犬
曲が生まれた当時、ショパンはフランス人作家のジョルジュ・サンドと交際をしていたのですが、彼女がかわいがっていた子犬がよく自分のしっぽを追いかけ回って楽しそうにしていました。
ジョルジュ・サンドはその様子を見て、「こんな風に子犬がぐるぐる回って遊ぶ様子を音楽にできない?」とショパンに尋ねたそうです。
ショパンはその場で即興的に作曲をし、あっという間に『子犬のワルツ』が生まれたといわれています。
子犬だけじゃない!ショパンの『猫のワルツ』
『子犬のワルツ』はとても有名ですが、ショパンの作品には『猫のワルツ』も存在することをご存知ですか?
『猫のワルツ』は通称
実は『猫のワルツ』は通称の呼び名で、正式タイトルは『華麗なる円舞曲』の作品34-3です。
『猫のワルツ』としては知らなくても、『華麗なる円舞曲』としてはご存知の方が多いかもしれません。
華やかな曲調が印象的なこの曲は、第11回ショパン国際ピアノコンクールでスタニスラフ・ブーニンが高速演奏したことで有名です(上の動画がその様子です)。
『猫のワルツ』と呼ばれる理由
曲中の装飾音が連続する箇所が、あたかも猫が鍵盤の上に飛び上がって走り回る様子を連想させることから、人々はこの曲を『猫のワルツ』と呼ぶようになりました。
ブーニンの高速演奏ではよく分からなかったという方は、もう少しゆったりとした演奏で聴いてみると納得できるかもしれません。
モーツァルトとムクドリ
次にご紹介するのは、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトが作曲した『ピアノ協奏曲第17番』。
この曲の第3楽章の主題を、彼が飼っていたムクドリがさえずったと言われています。
曲が先か、さえずりが先か?
1784年、モーツァルトは支出簿にムクドリを購入したという記録を残し、すぐそばにピアノ協奏曲第17番第3楽章の主題を記しました。
このエピソードには、モーツァルトがムクドリに曲を教え込んだ説と、ムクドリがさえずったメロディをモーツァルトが曲に書いた説があり、どちらが先なのかは未だに分かっていません。
また、モーツァルトがムクドリを購入する際に何度も店に通っていたという説もあります。店に通っては口笛でこの曲を口ずさみ、ムクドリが曲を覚えてくれたので購入したのではないかというものです。
たくさんの動物が登場する『動物の謝肉祭』
最後にご紹介するのは、フランスの作曲家カミーユ・サン=サーンスによる『動物の謝肉祭(Le carnaval des animaux)』です。
犬や猫などのペットは登場しませんが、ライオンや亀など動物の名前がついた全14曲から構成されています。
『動物の謝肉祭』全14曲のタイトル
【第1曲】序奏とライオンの行進曲
【第2曲】雌鶏と雄鶏
【第3曲】ロバ
【第4曲】亀
【第5曲】象
【第6曲】カンガルー
【第7曲】水族館
【第8曲】耳の長い登場人物
【第9曲】森の奥のカッコウ
【第10曲】大きな鳥籠
【第11曲】ピアニスト
【第12曲】化石
【第13曲】白鳥
【第14曲】終曲
非公式な夜会のためだけに作られた曲
もともとプライベートな夜会のために作られた曲で、他の作曲家の曲を風刺したパロディ作も含まれていたことから、サン=サーンスは自身が死ぬまで楽曲を出版したり公に演奏することを禁じていました。
現在では管弦楽曲として世界に知られ、子供向けに語り付きで演奏されることもあります。
有名な『白鳥』だけは生前に出版された
サン=サーンスは、完全にオリジナル作品として作曲した『白鳥』のみ生前に出版しました。
チェロ独奏曲として名を馳せ、現代も14曲の中で最も有名な作品となっています。
みなさんの中にも、『動物の謝肉祭』を知らなくても『白鳥』は知っていたという方が多いかもしれません。
まとめ
今回は、ペットや野生動物にまつわるクラシック音楽をご紹介しました。
すでに曲を知っていたという方は、動物と紐付けて聴き直すことでいつもと違った印象を受けられたかもしれません。
普段クラシック音楽をあまり聴かない方も、おなじみの動物を思い浮かべながら聴くことで曲を身近に感じられたのではないでしょうか。
また、同じ曲でもピアニストや楽団によって演奏の仕方がそれぞれ異なります。興味を持った方はぜひ他の動画も検索して聴き比べてみてくださいね。