都心でタヌキを見かけることはあまりなくなりましたが、市街地などではいまだによく目にする野生動物です。
一見かわいらしいタヌキですが、毛が抜けてしまっているタヌキを見たことはあるでしょうか?筆者は先日、毛がほとんど抜けてとても痛々しいタヌキが目の前を横切っていくのを見ましたが、すぐに住宅地の中へ姿を消してしまいました。
このようなタヌキを見かけた場合、どうすればよかったのか、筆者自身が気になり調べてみました。
この記事では、毛の抜けたタヌキを見かけた場合の対応と、犬や猫などのペットに影響があるのかについて解説していきます。
この記事の目次
どうしてタヌキの毛が抜けるの?
毛が抜けたタヌキは、「疥癬症(かいせんしょう)」という病気に感染している可能性が高いと考えられます。
疥癬症は、ヒゼンダニというダニが毛根に寄生することで起こる病気で、感染した動物との接触や、感染した動物と行動圏が重なることで感染します。
疥癬症を発症しているタヌキは免疫力が落ちており、他にもさまざまな感染症をもっている可能性があります。かわいそうだからと保護しようとしたり、接触したりしようとするのはやめましょう。
疥癬症の症状
初期症状では激しいかゆみに襲われ、体を掻いたり噛んだりすることで傷がつき皮膚が化膿していきます。
かゆさゆえに食べることも寝ることも十分にできず、免疫力が低下すると他の感染症に感染してしまい、治療の受けられない野生下では死に至ります。
全身の毛が抜けてしまったり、象のような皮膚になったタヌキは、ひと目見ただけでは何の動物かわからない場合もあります。
疥癬症のタヌキを見かけたら
とても痛々しいタヌキの姿ですが、野生動物であり、地域によっては害獣と指定されていることから、基本的に疥癬症のタヌキを駆除したり、保護したりすることはありません。
もしタヌキを保護する場合には、都道府県の野生動物の担当部署に連絡して指示を仰ぎましょう。地域によっては引き取って治療してくれる場合もあります。
しかし、保護は自分でしなくてはいけませんし、保護しても受け入れてもらえない可能性があります。
犬や猫などのペットには感染する?
疥癬症は犬や猫などにも感染する可能性があります。特に、野良猫で疥癬症を患っている子は珍しくありません。
タヌキをよく見かける地域でペットを放し飼いにすると、疥癬症に感染してしまう可能性がありますので注意しましょう。
犬や猫の疥癬症の症状
犬や猫が疥癬症に感染した場合は、以下のような症状が見られます。
- 激しい皮膚のかゆみ
- 脱毛
- 掻き傷や噛み傷
- かさぶた
また、疥癬症に感染すると、激しいかゆみから生活の質が低下して免疫力が下がり、他の感染症に感染する可能性が高くなります。重症化する前に異変に気づき、早期治療をすることが肝心です。
疥癬症の予防
野生動物との接触を極力減らすことが最大の予防です。
疥癬症のタヌキをよく見る地域では、タヌキが自宅の敷地内に入らないよう対策し、ペットは屋内で飼育するようにしましょう。
また、動物病院やペットホテルなどを利用した時に感染してしまう場合もあります。
ペット同士でも容易に感染してしまうため、多頭飼いをしている場合や動物の多い場所に行く場合は、特に注意しなければなりません。
疥癬症の治療
駆虫薬の投与が効果的です。
疥癬症の治療によく用いられるイベルメクチンは、コリーなどの一部の犬種で重篤な副作用が見られることから、獣医師の指示に従って投与してください。
きちんと治療すれば、かゆみも治まり被毛も元どおりになりますので、焦らず治療を受けましょう。
野生動物には安易に近づかない
野生動物は、寄生虫や感染症に感染している可能性が高く、安易に近づくことは危険です。
また、かわいい/かわいそうだからという理由で野生動物にエサを与えるのもいけません。
一度でもエサを与えると、その味を覚えてしまいますし、人間の与えるエサは自然界のエサと比べると栄養が良すぎてしまい、自然界で生きるのが困難になります。
一時的な感情で手を差し伸べてしまうと、結局不幸になるのは動物です。動物のためを思うなら、近づかないようにしましょう。
まとめ
毛のないたぬきは疥癬症という病気にかかっており、一度かかってしまうと野生下では治癒する術はありません。助けてあげたい気持ちはとてもわかりますが、野生動物に人間が干渉してしまうと、自然界のバランスが崩れてしまう可能性がありますので、そっとしておきましょう。
自宅付近で毛のないタヌキを見かけた場合、ペットにも感染してしまう危険性があります。なるべく室内飼いにし、タヌキが自宅の敷地内に入らないよう対策をしましょう。
もし、愛犬や愛猫の被毛が抜けてきたり、かゆがっている様子が見られたら、なるべく早く動物病院を受診し、治療してあげてください。