猫を飼っている方なら、「妊娠中に猫を飼ってはいけない」などという言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか。しかし、なぜこのように言われるのかよく知らないという方も多いかもしれません。
では、本当に妊娠中に猫を飼ってはいけないのでしょうか。また、猫を飼っているときに妊娠が発覚した場合はどうすればいいのでしょうか。
今回は、妊婦が猫を飼ってはいけないと言われる理由について解説していきます。
この記事の目次
原因はトキソプラズマ
トキソプラズマとは寄生性原生生物の一種で、人を含む多くの恒温動物に寄生してトキソプラズマ症を引き起こします。トキソプラズマは段階によって以下の三つの形態をとります。
- 増殖型(タキソイド)…感染初期に見られる。寄生した細胞内で分裂を繰り返し増殖する。
- シスト…慢性期に見られる。
- 腸管型(オーシスト)…猫の体内で作られ、うんちと一緒に環境中に放出される。
トキソプラズマ症の症状
トキソプラズマ症は、全人類の1/3以上が感染しているといわれるほど広く蔓延している感染症です。しかし、健康な人が感染してもほとんどが発症せず、発症しても発熱や筋肉痛、倦怠感などのインフルエンザの様な症状が出るのみです。
一方、免疫機能が低下している人が感染した場合は、脳炎や肺炎、脈絡網膜炎などの重篤な症状が現れることがあります。
妊婦はなぜ危険?
妊婦がトキソプラズマに感染してしまうと、胎児へ感染し先天性トキソプラズマ症を患う可能性があります。妊娠初期の感染ほど重症化しやすいとされており、死産、流産、水頭症、視力障害、運動機能障害が起こります。
猫はトキソプラズマの終宿主であるため、妊婦が猫を飼ってはいけないといわれるのはこのためです。
感染歴を確認しよう!
では、猫を飼っているときに妊娠が発覚したらどうすれば良いのでしょうか。基本的には医師に相談することが重要ですが、トキソプラズマの感染歴を調べることで、猫を飼っていてもまったく問題がないこともあります。
そのため、猫を飼っていて不安な方は、まず病院で感染歴があるかどうかの検査をしましょう。
猫に感染歴がある
猫のうんちからトキソプラズマのオーシストを排出するのは初めて感染してから3日〜3週間の間のみです。一度感染すれば、猫の体内にトキソプラズマの抗体が作られるため、以降はうんちの中にトキソプラズマを排出することはありません。
人に感染歴がある
健康な人がトキソプラズマに感染しても無症状で気づかないことも多く、実はすでに感染していたという人も少なくありません。猫と同様に一度でも感染したことがあれば、妊婦であっても心配する必要はありません。
どちらも感染歴がないと危険
妊婦も猫も感染歴がない場合は重症化したり、胎児に感染してしまう可能性があり危険です。すでに妊娠している場合は、トキソプラズマに感染しないようにしっかり対策をしなければいけません。
トキソプラズマ対策
人用のワクチンは存在しないため、トキソプラズマに感染したことのない妊婦は、感染しないように対策することが大切です。
1. 飼い猫のトイレ掃除はなるべく家族に任せる
猫のうんちにはトキソプラズマのオーシストが含まれている可能性があり危険です。うんちに直接触れなくても、猫砂や猫砂を浴びた猫から感染する可能性もあります。
猫のトイレ掃除はできるだけ避け、家族にお願いするようにしましょう。どうしても避けられない場合は、使い捨て手袋やマスクを着用し、終了後はしっかり手を洗うことが大切です。
なお、猫がうんちをしてから24時間以内であれば感染性はないとされているため、こまめに掃除するようにしましょう。
2. 庭や公園の砂場も要注意
庭や公園の砂場も野良猫のトイレ場になっていることが多く、感染の危険があります。こちらもできるだけ触らないようにし、どうしても触らなければいけない場合は、手袋をして、しっかり手を洗いましょう。
3. 肉はよく火を通す
トキソプラズマは生肉から感染することもあります。肉は中心部の赤みがなくなるまでしっかり火を通して食べるようにしましょう。生肉自体に触ることもあまりよくありません。
また、生肉を切った包丁やまな板はこまめに洗浄し、常に清潔に保つようにしましょう。
4. 野菜はよく洗う
野菜が収穫された土壌にトキソプラズマがいた可能性もあります。野菜を生で食べる場合はしっかり洗いましょう。
5. 猫を外に出さない
もし愛猫にトキソプラズマの感染歴がない場合、外に出した際に他の猫や砂場から感染してしまう可能性があります。室内で飼っている猫は外には出さず、脱走されないようにしっかり対策をしましょう。
まとめ
「妊婦が猫を飼っているとよくない」という話はよく聞きますが、なぜよくないのかという理由をきちんと理解していないと誤った対応をしてしまうかもしれません。
トキソプラズマに妊婦が初めて感染した場合は危険ですが、過去に感染したことがあれば問題はありません。どちらなのかわからないという方は、まずは病院で相談しましょう。
本来は問題ないのにも関わらず、猫を手放すことのないように注意してくださいね。