大規模な遺伝子解析研究の結果、犬の祖先はオオカミであることがわかっていますが、オオカミからいつ、どのように犬になったかは、未だ解明されていません。
しかし、どういった犬種が遺伝子的にオオカミ近いかは研究により判明しています。そこで今回は、オオカミに近い遺伝子をもつ犬種をランキング形式でご紹介していきます。
この記事の目次
犬が持つ4つの遺伝的な要素
2004年に科学誌『サイエンス』にて、アメリカの研究チームによる85犬種のDNA分析結果が発表されました。
全ての犬は次の4つの遺伝的特徴を持っていますが、犬種によりその比率が異なるため、様々な特徴が現れていると考えられています。
1.WOLFLIKE(ウルフライク)
古くから存在しており、オオカミに最も高い類似性を持つDNAです。
2.HERDERS(ハーダー)
群れをなす習性がある、牧羊犬タイプの犬種に多いDNAです。
3.HUNTERS(ハンター)
狩りをする特性を持つ犬種に多いDNAです。猟犬の大部分がこの特性を多く持ちます。
4.MASTIFFLIKE(マスティフライク)
筋肉質で力が強く、戦闘的な犬種が持つDNAです。軍用犬や警察犬に向いているとされます。
オオカミに近い遺伝子を持つ14の犬種
先述した4つの遺伝的要素のうち、ウルフライクの割合が高いほどオオカミに近い犬種だとされています。
それでは、ウルフライクの割合が高い犬をランキング形式で見ていきましょう。
オオカミに近い遺伝子を持つ犬ランキング
順位 | 犬種 | 原産国・地域 |
---|---|---|
1位 | 柴犬 | 日本 |
2位 | チャウ・チャウ | 中国 |
3位 | 秋田犬 | 日本 |
4位 | アラスカン・マラミュート | アメリカ |
5位 | バセンジー | 中央アフリカ |
6位 | シャー・ペイ | 中国 |
7位 | シベリアン・ハスキー | アメリカ |
8位 | アフガン・ハウンド | アフガニスタン |
9位 | サルーキ | 中東 |
10位 | チベタン・テリア | チベット(中国) |
11位 | ラサ・アプソ | チベット(中国) |
12位 | サモエド | ロシア北部及びシベリア |
13位 | ペキニーズ | 中国 |
14位 | シー・ズー | チベット(中国) |
※シベリアン・ハスキーについては、ロシア原産とされることもありますが、今回はジャパン・ケネル・クラブ(JKC)の犬種情報に合わせてアメリカ原産としています。
このランキングの中でも、上位4犬種は特にオオカミに近い遺伝子を持つとされています。
かつてのDNA解析の研究では、上位9種だけがオオカミに近い犬種とされていました。その後、より精度の高い「ストラクチャー解析」により、10~14位の犬種もオオカミに近い犬種に加わります。
その結果、東アジア原産の犬種がよりオオカミに近い遺伝子を持つことが分かり、イヌの起源が東アジアであるという説も提唱されています。
性格的に似ている!東アジアの犬たち
【画像】左上:柴犬(1位)、右上:チャウ・チャウ(2位)、左下:秋田犬(3位)、右下:シャー・ペイ(6位)
1位が柴犬だった結果に驚いたかもしれませんが、柴犬や秋田犬は精悍な顔立ちですのでオオカミに近いのもうなずけます。
一方で、チャウ・チャウやシャー・ペイは独特の風貌で、オオカミに近い容姿とは言えず、意外な結果でした。
性格的には、この4犬種ともに独立心や警戒心を強く持つ傾向があるのですが、その性格こそがオオカミに近い原始的な犬の特徴を表すものなのだそうです。
また、この研究では日本犬は柴犬と秋田犬のみが対象であったため、他の日本犬も解析されればオオカミに近い遺伝子を持っている可能性があるかもしれません。
見た目は似ている!北極圏周辺の地域の犬たち
【画像】左上:アラスカン・マラミュート(4位)、右上:シベリアン・ハスキー(7位)、下:サモエド(12位)
アラスカン・マラミュートやシベリアン・ハスキーは、かなりオオカミに近い容姿をしているので、ランクインするのも納得できます。
性格的には、3犬種ともに穏やかで、優しく、フレンドリーな傾向があり、先ほどの東アジアの犬たちとは対照的な点です。
ちょっと意外な中東・アフリカ地域の犬たち
【画像】上:バセンジー(5位)、左下:アフガン・ハウンド(8位)、右下:サルーキ(9位)
「吠えない犬」として知られるバセンジー。容姿は日本犬のような原始的な犬の特徴があります。
アフガン・ハウンドとサルーキは、よく似た外見をしていますが、オオカミとは全く異なります。
どちらも「視覚ハウンド(サイトハウンド)」と呼ばれる同じグループに属しており、猟犬の中でも特に視力が優れていて、獲物を追うために素早く走れる能力を持つという特徴があります。
性格は3犬種とも落ち着きがあるタイプで、独立心に富み、頑固でマイペースな傾向があります。
ウルフライク!?東アジアの愛玩犬たち
【画像】左上:チベタン・テリア(10位)、右上:ラサ・アプソ(11位)、左下:ペキニーズ(13位)、右下:シー・ズー(14位)
中国、チベットの愛玩犬たちがランクインしていますが、どの犬も小型~中型犬で可愛らしさがあり、とてもオオカミに近いとは言えない外見をしています。
性格として、この4犬種に共通する特徴はあまりありませんが、強いて言うならば、ランキング上位の犬種の方が、警戒心が強く、吠える傾向があり、下にいく程それらが弱まる傾向が見られます。
まとめ
近年の研究によると、ヨーロッパ原産の犬種は全て同一の祖先を持つとされ、それらと違う系統に今回ご紹介したようなオオカミに近い遺伝子を持つ犬種がいます。
一説には、犬の祖先がオオカミから分かれた後、東アジアの系統に分かれ、次にバセンジーのようなアフリカの系統に分かれ、北極圏周辺の系統、中東の系統からヨーロッパへと分かれていき、今に至ったと言われています。
この辺りの歴史は、まだまだ定かではありませんが、今後研究が進むことで犬の起源の謎を解明して欲しいですね。