ふと愛犬の口が臭うと感じたことはありませんか?ヒトではオーラルケアに関心が集まり、歯周病の予防や口臭のケアに対するグッズもたくさんあります。
では、犬における口臭は普通のことなのでしょうか。実は犬の口臭もまた、見過ごしてはならない病気の徴候である可能性があります。
今回は、犬の口臭で考えられる疾患について解説します。
この記事の目次
犬の口臭で考えられる疾患とは
犬の口臭の原因は、主に口腔内疾患と内臓疾患が考えられます。
口腔内疾患
- 歯周病(歯肉炎、歯周炎など)
- 口腔内腫瘍
内臓疾患
- 胃炎
- 腎不全
- 肝不全
- 腸閉塞
それぞれの疾患について詳しく見ていきましょう。
口腔内疾患
口臭が認められた時にまず考えなければならないのは、口の中の異常です。特に歯周病は犬において非常に一般的な疾患です。
自分で歯みがきをする習慣がない犬にとって、食べたものが歯垢や歯石に変わるのは当たり前のことです。歯石の除去には全身麻酔が必要であり、愛犬にとって負担の大きい治療が必要になります。
さらに、口腔内の腫瘍も口臭の原因となり得ます。子犬の時から歯みがきを習慣づけ、口の中をしっかりと確認するクセをつけておくといいかもしれませんね。
歯周病(歯肉炎、歯周炎など)
【症状】
口の痛み、口臭、食欲不振など。カリカリのフードを食べなくなった、噛むおもちゃで遊ばなくなることも多い。
【原因】
歯に歯石が沈着し、そこで細菌が繁殖することによる。
【備考】
犬の唾液は弱アルカリ性であり、歯垢が歯石に変化するのがヒトより早い(2~3日程)。歯周ポケット(歯の付け根の隙間)に歯石が沈着していることも多いため、歯石の除去は全身麻酔を伴うことが一般的。また歯石除去後は歯の表面がザラザラになり、再び歯石が沈着しやすいため、ポリッシング処置によって磨くことも重要。
口腔内腫瘍
【症状】
口の痛み、出血、嚥下困難、口臭など。
【原因】
口の中における各種腫瘍の発生。この腫瘍が自壊、出血し周囲に炎症をもたらすことでニオイが生じる。
【備考】
口腔内腫瘍としては悪性黒色腫、扁平上皮癌、線維肉腫などが多い。腫瘍が大きくなれば肉眼的にも発見は容易だが、それよりも前に何らかの異常を感知することが重要。
内臓疾患
口の中だけでなく、消化器を始めとする各種内臓疾患においても口臭が発生することがあります。それは過度に分泌された消化液によるものであったり、解毒できない毒素が体内を巡ることによります。
口腔内に異常がない場合や、口臭以外の症状が現れている場合には注意が必要です。特に、嘔吐などの症状は、口臭よりも先だって現れることも少なくありません。
胃炎
【症状】
嘔吐、元気消失、食欲不振、吐血、腹痛など。
【原因】
微生物(細菌、ウイルス、寄生虫など)の感染、食物アレルギー、質の悪い食事、中毒など。
【備考】
嘔吐後には胃酸が口腔内に付着するため、口から酸っぱいニオイがすることがある。例えば留守中に嘔吐した後、その吐物を食べてしまった場合でも口のニオイで何かを感知することができるかもしれない。
腎不全
【症状】
元気消失、食欲不振、嘔吐、脱水、多飲多尿、貧血など。重症化すると乏尿、無尿、痙攣、体温低下、尿毒症などが見られて危険。
【原因】
細菌やウイルスの感染、腎血流量の低下(心不全、ショックなど)、免疫疾患、尿結石など。
【備考】
尿毒症ではアンモニアのような口臭が起こることがある。
肝不全
【症状】
食欲不振、嘔吐、黄疸、腹水貯留、神経症状など。
【原因】
急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変など。
【備考】
コッカー・スパニエルやラブラドール・レトリーバーは遺伝的に銅を排泄する機能が低いことがあり、慢性肝炎に罹患しやすいと言われている。口臭は肝臓で解毒されるべき毒素が体内を循環することによって起こることがある。
腸閉塞
【症状】
元気消失、食欲不振、嘔吐、下痢、腹痛など。
【原因】
異物の誤飲(プラスチック、ひも、植物の種、布など)、腫瘍、腸重積、重度の便秘など。
【備考】
腸の閉塞によって口から糞臭がすることがあるが、それよりも前に嘔吐や腹痛の症状が現れることが多い。また腸穿孔を起こすと腹膜炎やショックなど激烈な症状を呈し、非常に危険である。
フードの劣化
病気以外に口臭が現れる原因として、フードが古くなっていることが考えられます。口が臭うなと感じたときは、まずフードの賞味期限を確認しましょう。
海外で作られたフードは賞味期限の表示が「日/月/年」の順番になっているので確認の際には注意してください。フードが古いものではないのに口臭がする場合には、動物病院を受診したほうがいいかもしれません。
まとめ
口臭に関してあまり深刻に考えない方も多いと思います。しかし、やはりいつもと違うことには何か原因があり、そこには病気が隠れていることも少なくありません。
中には放置することでどんどん悪化していくような体の異常もあるかもしれません。たかが口臭と思わず、何か気になることがあれば気軽に動物病院に相談してください。