一般的には7才を越えた犬を「シニア犬」と呼ぶことが多く、体調や動き、睡眠時間など様々な点で変化が見られやすくなります。ペットとしての犬の平均寿命が延びていることでシニア犬のお世話をする人も増え、愛犬の変化に不安や悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、シニア犬も豊かで不安のない日々を過ごすために実践していただきたいことを5つ紹介します。
この記事の目次
伸びる犬の平均寿命
「アニコム家庭どうぶつ白書2022」のデータによると、2020年度の犬の平均寿命は14.1歳と発表されています。2019年度から変化はありませんが、同調査の結果では2009年度の13.1歳から年々平均寿命が伸び続けています。
体の大きさ別に平均寿命をみると、小型犬の方が大型犬・中型犬よりもやや寿命が長い傾向にあるようです。寿命が年々伸びている背景には、ドッグフードの質が上がったことや医療の発達、室内飼い、愛犬のケアの浸透などが大きく影響していると考えられます。
参考:一般社団法人ペットフード協会 (犬の平均寿命の推移)
シニア犬にも必要な刺激と栄養
シニアになると寝ている時間が増え、体調にも変化が見られやすくなるでしょう。しかし、寝ているばかりでは愛犬の日々は退屈で老化も進む一方です。
無理のない範囲でこれまで通りの運動や良い刺激を与え、しっかりと栄養も摂ることが心身の健康につながります。
実践したいこと①筋トレ
身体を支える足腰の運動は欠かさないようにしましょう。犬は後ろ脚から弱っていくことが多いため、後ろ脚を動かす機会を意識的に作りましょう。
①坂道ジグザグ歩き
坂道をまっすぐ歩くのではなく、ジグザグに歩きます。すると、すべての脚が均等に使われ筋肉が刺激されます。お散歩時には坂道を探して、挑戦してみましょう。
②飼い主さんの脚またぎ
飼い主さんが床に座って脚を横に開き、その上を愛犬に跨ぎながら歩いてもらいます。
跨ぐ際にしっかりと四つ脚を使うことができます。飼い主さんの脚以外にもバスタオルを巻いたものや、愛犬が跨ぎやすいものであればどんなものでもOKです。
③バランスディスク
ご自宅にバランスディスクがあれば、愛犬にも使うことができます。前脚、後脚、四つ脚すべて乗せるなど、愛犬ができる範囲でおやつを使いながら挑戦してみましょう。脚だけでなく、全身の筋肉にも良い刺激になります。
はじめはバランスディスクに乗ることを恐がる場合もありますので、少しずつ乗れるように練習をしましょう。できなかったことができるようになる経験をするのもとても大切です。
実践したいこと②動物性タンパク質の摂取
食事も非常に重要です。シニア犬用の一般的なドッグフードは、代謝が落ちることからカロリーを抑えたものが多いですが、それは要注意です。
シニアは筋肉や内臓なども衰えていくため、動物性のタンパク質をこれまで以上に摂取する必要があります。また、小麦や豆、コーン、米などが使われたドッグフードは消化に時間がかかり内臓にも負担がかかりやすくなります。
主原料の異なるフードの消化時間の比較
あるドッグフードメーカーが、主原料が異なる3種のフードの消化にかかる時間を比較しました。比較に使われたフードは以下の3種です。
- 動物性のタンパク質が90%以上使われたフード
- 主原料がグルテンのドライフード
- 増粘剤が使われた缶詰のウェットフード
結果は、1. 動物性タンパク質のフードが約4時間と一番短く、次に2.ドライフードが約12時間、3.缶詰が約16時間となりました。
この結果から、動物性のタンパク質のほうが消化時の胃腸への負担が少ないことがわかります。逆に、身近なドライフードや缶詰は消化に半日以上かかり、胃腸への負担が大きいことを意味します。胃腸への負担という点でも愛犬のフードを選ぶ際は、動物性のタンパク質の量をひとつの基準にしてもいいかもしれません。
実践したいこと③水分補給
シニアになると運動量も減り、自分で水を飲む回数も少なくなりがちですが、水分補給はシニアでも非常に重要です。摂取量の目安は、体重1kgあたり50mlと言われています。
水分が足りずにおしっこの頻度が減ると膀胱炎になったり、腎臓に負担がかかってしまいます。特にシニアは免疫力も低下しやすいため、注意が必要です。
おすすめの水分補給方法
①身体を動かす
身体をしっかり動かすと、必然的に喉も乾きやすくなります。愛犬自ら水を飲みたくなるくらいにお散歩も含めた適度な運動をする機会をしっかり作りましょう。
ただし、気温が20度を越える日は熱中症にも注意し、水分補給はもちろん日陰など涼しい場所での十分な休憩もとりましょう。
②お肉のおやつを水に浮かべる
お肉メインでできたおやつやフードを水に浮かべることでニオイが増し、水を飲みやすくなることが多いです。水に浮かんだおやつだけを食べるのではなく、水も飲めるようおやつのサイズも調整しましょう。
③ご飯に水またはぬるま湯をかける
ご飯に水分をプラスしてあげることで、食事と一緒に水分摂取が手軽にできます。ふやかす必要はありませんので、ごはんをあげる直前に水分をプラスしてあげましょう。
④飲み水をこまめにかえる
水を飲んでいないからと言ってそのまま置いておくと余計に飲みにくくなることがあります。新鮮な水が飲めるよう、意識的に取りかえましょう。
在宅中は飲んでいない時でも1時間に一回、飲んだ時はその都度かえるのがおすすめです。夏場はもっと頻繁にかえてもいいでしょう。
実践したいこと④温活
冷えにも注意しましょう。冷えると体が固まりやすく体を動かしにくくなってしまいます。
また、シニアになると体温調節も苦手になってくるため、室内の温度管理も大切です。体の大きさによって多少の違いはあるものの、気温は25℃前後、湿度は50~60%くらいが良いとされています。
冬場や夏のクーラーの中では、関節や筋肉を温めてあげましょう。ペットボトルにぬるま湯を入れ、うすいタオルで巻いて愛犬が嫌がらない範囲で脚やお腹などに当ててあげましょう。
冬場はペット用の電気毛布を使ったり、飲み水もぬるま湯にするのもおすすめです。内臓も温めましょう。
実践したいこと⑤ノーズワーク
ノーズワークとは、嗅覚を使って決められたニオイやおやつを見つける仕事や遊びです。最近日本でも流行っており、手軽にできるノーズワークマットなども売っています。
ノーズワークのメリットはたくさんありますが、シニア犬は脳を活性化されることによる認知症予防と、おやつを探し、見つけて食べられた時に得られる精神的な充足感の二点が特に大きなメリットになるでしょう。
ノーズワークのやり方
ノーズワークマットを使用するのももちろん良いですし、愛犬が見ていない時に空き箱におやつを何個か入れておいて嗅覚を使って探してもらうこともノーズワークになります。
愛犬のレベルに合わせることがとても大切です。もしうまく見つけられない場合は、愛犬が見ていない時に床に何個か置いて探してもらっても良いでしょう。
まとめ
シニア犬は寝てる時間が増えますが、寝たままでは老いが進む一方です。「もうシニアだからやらない」のではなく、これまで通り愛犬に無理のない範囲で体をちゃんと動かし、嗅覚や頭を活性化し、水をしっかり飲んで、動物性のタンパク質をしっかりと摂取することがおすすめです。
愛犬も飼い主さんも不安や痛みが少なく、充実したシニア期を過ごせるよう、できることから少しずつ日々に取り入れてみてはいかがでしょうか。