愛犬と遊んでいたら、興奮した犬に咬まれてしまったという経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。甘噛み程度であれば問題ありませんが、血が出るほどのケガをした場合、きちんと対処しないと病気に感染してしまうかもしれません。
特に、海外で犬に咬まれた場合は、ワクチン接種をしなければ命に関わる可能性もあります。
そこで今回は、犬に咬まれてしまった時にやるべきことについてご紹介します。犬を飼っている方だけでなく、犬と接する機会のある方はぜひご一読ください。
この記事の目次
犬に咬まれた時に注意したい病気
犬に咬まれた場合、単純にケガをしてしまうだけでなく、さまざまな病気に感染してしまう可能性があります。場合によっては命に関わるため、「少し血が出ただけから大丈夫」と自己判断せず、必ず病院を受診しましょう。
犬に咬まれた場合、特に注意したいのが以下の疾患です。
狂犬病
狂犬病は、犬だけでなくすべての哺乳類に感染し、発症すると有効な治療法がないため、ほぼ確実に死亡してしまう人獣共通感染症です。
日本では狂犬病予防法によりワクチン接種が義務づけられており、1956年を最後に国内での感染例はありません(海外での感染は除く)。しかし、年々ワクチン接種率が低下しており、狂犬病の危険がまったくないとは言い切れません。
破傷風
破傷風菌は犬などのペットだけでなく、世界中の土壌に含まれ、死に至る可能性が非常に高い感染症です。
傷口から破傷風菌が入り込むことで感染し、体内で発生した毒素によりさまざまな神経に作用します。口が開きづらい、顎が疲れるといった症状に始まり、歩行や排尿・排便の障害などを経て、最後には全身の筋肉が固くなって息ができなくなり、亡くなることもあります。
パスツレラ症
パスツレラ菌に感染している犬に咬まれたり引っ掻かれたりすると、傷口から感染します。また、過剰なスキンシップで感染することもあります。
パスツレラ症を発症すると、腫れや痛み、発熱が見られ髄膜炎を起こすこともあります。また、免疫機能が低下している人は、重症化して死亡することもあります。
ケース①飼い犬に咬まれた
どんなにおとなしい犬であっても、何かのきっかけで人を咬んでしまうことも珍しくありません。
愛犬に咬まれてびっくりしてパニックになってしまうかもしれませんが、よっぽどの大ケガでない限りは、以下のように順を追って冷静に対処していきましょう。
なお、人を咬んだ直後の犬は興奮しているため、二次被害を出さないためにも、手を出したりせずに少し離れた場所に繋ぎ止めておくと安心です。
1. 水で洗い流す
咬まれた箇所から病原菌やウイルスが体内に侵入してしまうため、石鹸を使い、流水で5分以上かけてしっかり洗い流します。
2. 止血する
出血している場合は、清潔なガーゼやハンカチなどを当てて圧迫し、止血します。
3. 病院を受診する
ケガの程度によっては病院を受診しない方もいるかもしれません。しかし、病原菌やウイルスは目に見えず、自己判断するのは危険です。特に、出血を伴うケガを負った場合は、必ず専門家に診てもらい指示を仰ぎましょう。
病院の診療科は、外科か皮膚科がおすすめです。なお、深い傷を負ってしまった場合は、大きめな病院の救急外来を受診しましょう。
ケース②他の家の犬に咬まれた
自宅の犬に咬まれた場合は、家庭内で完結しますが、他の人が関わってくる場合は気をつけなければいけないことがあります。
ワクチン接種の有無の確認や、治療費・慰謝料の請求なども発生するため、手間はかかりますが、自身のためにも泣き寝入りにならないようにしましょう。
1.傷口の洗浄と止血、病院の受診
犬に咬まれた際は、自宅の犬に咬まれた場合と同様に傷口の洗浄をし、病院を受診します。
2.連絡先を交換する
治療費の請求や検査結果を伝えるためにも、連絡先は必ず交換しましょう。
もし、飼い主が逃げてしまった場合は、すぐに警察に連絡し相談しましょう。犬が人を傷つけたのにもかかわらず、飼い主が適切な対応をせずに逃げてしまうのは法律違反になります。
人を咬んだ犬の飼い主が行うべきこと
飼い犬が他人を咬んだりケガをさせてしまった場合、保健所に届け出たり、狂犬病の疑いがないか検査する必要があります。以下は東京都の例ですが、他の自治体も同様ですので、誠意をもって対応しましょう。
- 被害者の救護と再発防止措置を行う。
- 24時間以内に、最寄りの保健所または動物愛護センターに事故発生届出書を提出する。
- 48時間以内に狂犬病の疑いがないか、獣医師に検診してもらう。
事故発生届出書(東京都)
https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/douso//kansen/kousyou.files/jiko-hassei7.pdf
ケース③海外で犬に咬まれた
狂犬病ワクチンが普及している日本は、狂犬病清浄国とされており、犬に咬まれても狂犬病に感染することはまずありません。しかし、日本以外のほとんど国では狂犬病による死亡者が毎年出ています。
そのため、海外で犬に咬まれた場合、日本とは異なる対応が必要になります。
1. 傷口を洗う
狂犬病にかかっているおそれのある動物に咬まれてしまった場合、すぐに石鹸を使って水洗いします。この際、傷口を舐めたり、血を口で吸い出すようなことをしてはいけません。
2. 現地の医療機関を受診する
なるべく早く現地の医療機関に行きましょう。咬んだ犬が狂犬病に感染していないことが確認できない限りは、発症予防のためのワクチンを接種する必要があります。
咬まれたあとに接種する暴露後ワクチンは、事前の接種の有無により異なる場合もありますが、初回のワクチン接種日を0日として、3日、7日、14日、30日及び90日の計6回皮下に接種します。
帰国のタイミングなどの事情で、現地で接種を完了できない場合は、帰国後に必ず医療機関でワクチンを接種しなければなりません。
3. 帰国時に検疫所で相談
現地での医療機関への受診の有無に関わらず、帰国時には検疫所に相談することが推奨されています。
咬まれても慌てない
各国の日本大使館・総領事館では、日本人がよく利用する病院や日本語の通じる医者など現地の医療機関を紹介してくれますので、困ったことがあれば相談するようにしましょう。
狂犬病は大変恐ろしい感染症ですが、傷口を徹底して洗浄し、発症前にワクチン接種を完了させることで95%以上の防御効果が得られるとされています。慌てず冷静に対処しましょう。
最後に
犬を飼っている人はもちろん、飼っていない人も犬に咬まれる可能性はゼロではありません。ケガをするだけでなく、病気に感染したり、場合によっては命に関わることもあります。
正しい知識を身につけて、自分の命を守る行動を取れるようにしましょう。