モルモットは、テンジクネズミ科のげっ歯類です。ずんぐりとした体につぶらな瞳がかわいらしく、穏やかな性格のためペットとして人気があります。
動物園のふれあい広場にもいるので、触ったことがある人も多いはず。とはいえ、モルモットはエキゾチックペットに含まれるため、飼い方がよくわからない方もいるでしょう。
この記事では、モルモットの基本的な情報や性格、飼い方のコツを解説します。
この記事の目次
モルモットとはどんな動物?

モルモットはげっ歯類、つまりネズミの仲間です。性格や寿命など、基本的な情報を見ていきましょう。
アンデス山脈原産のモルモット
モルモットは南米のアンデス山脈に分布するテンジクネズミの仲間を家畜化した動物です。もともとは食用として飼育されていましたが、ヨーロッパに伝わりペットとして飼われるようになりました。
おとなしくて穏やかな性格
モルモットの性格はおとなしく穏やかです。咬むことも少なく、飼いやすいペットといえるでしょう。警戒心がやや強いものの、慣れてくると人に甘えたりエサをねだったりするようになります。
実は表情も豊かで、飼っているといろいろな鳴き声で意思表示してくることがわかります。
草食動物としての食性
モルモットは草食性です。植物の葉や根、茎、果物などを食べます。
また、ウサギのように食糞(自分の糞を食べる行動)をします。植物の繊維質など難消化性の成分を盲腸で発酵させてできた盲腸便を食べ、ビタミンBなどの栄養を摂っていると考えられています。
モルモットは、体内でビタミンCを作れません。必ずフードなどから補給する必要があります。
群れで暮らす習性
野生のテンジクネズミは敵に襲われる「被食動物」であるため、5~10匹の群れで暮らしていました。モルモットも群れで暮らすほうが落ち着きます。
約6年の寿命
モルモットの寿命は、適切に飼育をすればだいたい6年です。5年から7年程度の範囲内になるでしょう。
体の特徴
三頭身で足が短く、全体的に丸みを帯びています。体重はオスが900~1200グラム、メスは700~900グラムです。ハムスターよりは大きく、ウサギより小さいサイズ感です。しっぽはほとんどありません。前足の指は4本、後ろ足は3本です。
モルモットの歯は「常生歯」で、一生涯伸び続けます。そのため、伸びすぎに注意が必要です。
モルモットのお尻周辺の皮脂腺からは、保湿のために液を分泌しています。オスのお尻にある臭腺は発情期になると、分泌液が増加するため「クサい」と言われることがあります。
ポップコーンジャンプという行動
モルモットは、「ポップコーンジャンプ」と呼ばれる独特のジャンプをします。前足と後ろ足を同時に上げ、体をくるっと回しながら跳ねるジャンプで、フライパンで熱したポップコーンが飛び跳ねる様子に似ています。
うれしいときや驚いたときなどに見られますが、どのモルモットも必ずするわけではありません。若い個体によく見られ、成体になるとほとんどジャンプしなくなります。
モルモットの種類

モルモットには多くの種類があります。ここでは代表的な品種を紹介します。毛の特徴によってお手入れの難易度が変わるので、チェックしておきましょう。
イングリッシュ

もっとも一般的な品種で、動物園のふれあい広場にもいます。毛が短くお手入れも楽なので、モルモット飼育の入門にもおすすめです。カラーはグレー単色や三毛猫のように白地に黒と茶色のスポットなど、大変豊富です。
アビシニアン(巻き毛モルモット)

体全体につむじ(ロゼット)があり、被毛はイングリッシュよりもやや長めです。そのため、毎日のブラッシングなどお手入れには手間がかかります。
クレステッド

頭の上だけにつむじがある、かわいいモルモットです。つむじが王冠(クレスト)のように見えることから「クレステッド」と呼ばれています。
被毛の長さはイングリッシュと同じくらいですが、頭のつむじ周辺のお手入れに手がかかることがあります。
ペルビアン

長毛種の美しいモルモットで、ショーにも出ることもあります。毛並みを整えたり抜け毛を取り除いたりする目的で、こまめなブラッシングが必要です。毛先が汚れやすいため、定期的なカットも行います。
テディ

アメリカで発見された、縮れた短めの毛が特徴のモルモットです。イングリッシュとアビシニアンの交配によって生まれた品種で、個体はどちらかの特徴が強く出ます。縮れた毛に汚れがつきやすいため、お手入れは必須です。
レックス

イギリスで発見された縮れ毛の品種です。毛はやや硬めですが、テディとの見分けが難しいといわれています。テディ同様、お手入れには手がかかります。
テクセル

レックスとシェルティの交配によって生まれた品種で、長毛の縮れた毛が特徴です。ぬいぐるみのようなかわいらしさがありますが、お手入れの難易度は高いでしょう。
ヘアレス(スキニーギニアピッグ)

被毛がないモルモットです。実験動物のヌードモルモットとして作出されました。寒さに弱いため、温度管理がポイントです。
モルモットの飼い方

モルモットが元気で健康に暮らすためには、快適な飼育環境と適切なケアが必要です。
飼育前に動物病院を探しておく
モルモットはエキゾチック動物に分類されるため、どこの動物病院でも診察してくれるとは限りません。事前に診てもらえる動物病院を見つけておくことを強くおすすめします。
定期的にエキゾチック専門の獣医師が訪問している動物病院もあります。なるべく自宅から近い動物病院を探しておきましょう。
モルモット飼育に必要なグッズ
- ケージ
- 床材
- 身を隠せる小屋やトンネル
- かじり木
- 食器(陶器がおすすめ)
- 水入れ
- 牧草フィーダー
- モルモット用フード
- 牧草
ケージ
ウサギ用などの金網タイプのケージがおすすめです。
ジャンプ力が乏しいため、浅い水槽や衣装ケースなどでも飼育できます。ただし、通気性が悪く蒸れやすいため、換気が必要です。
床材
ケージの底には床材が必要です。底がケージの付属品であるすのこや金属製のままだと、足を傷める恐れがあります。新聞紙やチップを敷いてやわらかくしておきましょう。アレルギーが出にくい、広葉樹チップがおすすめです。
筆者が飼っていたモルモットはペット用シーツを食べようとしたため、木材チップと牧草を敷き詰めていました。
身を隠せる小屋やトンネル
モルモットは大変臆病な動物です。すぐに身を隠せる小屋やトンネルを入れておきましょう。小屋があると安心して眠れるようです。モルモットはかじって歯の調整をするので、木製がおすすめです。
かじり木
伸び続ける歯を削るために、小屋以外にもかじり木を用意するとよいでしょう。
牧草でできたおもちゃもおすすめです。
食器(陶器がおすすめ)
食器はモルモットが触っても倒れない陶器製を用意しましょう。モルモットは食器の中に入ってフードを食べることがあるため、大きめのお皿がおすすめです。
水入れ
ケージに取り付けられる、ボトルタイプの水入れなどを用意します。ノズルの先が固まるときがあるので、定期的にチェックしましょう。
牧草フィーダー
モルモットが食べやすい牧草フィーダーも必要です。ケージに取り付けられるタイプが便利です。
モルモット用フード
モルモットはビタミンCを生成できないため、専用フードにはビタミンCが含まれています。必ずモルモット専用フードを与えましょう。
ホームセンターなどで販売されているケースは少ないため、ネット通販や専門店で購入する必要があります。
牧草
モルモットは草食動物なので、主食はあくまでも牧草です。モルモットにとって、牧草の繊維質を摂ることはとても重要です。伸び続ける歯を削る役割もあるので、必ず牧草をメインに与えましょう。
カルシウムを多く含むアルファルファは、過剰摂取になるため成体には与えないようにしましょう。
モルモットは群れで飼える?

モルモットは群れで暮らす社会性の高い動物です。群れでの飼育を義務づけている国もあります。多頭飼育すると、鳴き声でコミュニケーションをとる様子が観察できるでしょう。
2頭以上飼いたい場合は、メス同士の組み合わせをおすすめします。または去勢したオスとメスの組み合わせも可能です。オス同士では縄張り争いからケンカすることがあります。オス2匹を飼う場合は、ケージを隣り合わせにするなど工夫して飼育しましょう。
モルモットを飼う際のポイント

モルモットは臆病で、ストレスや暑さに弱い動物です。飼育の際は次のポイントに注意してください。
静かな環境で飼育しよう
なるべく静かな環境で飼いましょう。モルモットは聴覚が発達しているため、騒がしい環境は苦手です。大声を出して驚かせることなどは、モルモットにとって大きなストレスになります。特に家に来たばかりのときは、そっとしておきましょう。
モルモットをなつかせるコツ
モルモットはやさしく接していれば、なついてくれます。声をかけながら手からエサを与えるのを、根気よく繰り返しましょう。コミュニケーションをとるときだけ、キャベツなどの野菜を与えるのもよい方法です。
抱っこしたいときは、手のひらを上にして下からすくうようにしましょう。上からギュッとつかむのは捕食行動を連想させ、警戒されてしまいます。
モルモットに運動をさせよう
ケージに入れたままにせず、1日に1時間程度は広い場所で運動させましょう。汚れてもいいように、ペット用マットを敷いたスペースを歩かせてあげてください。
人に慣れると、あとをちょこちょこついてくるようになります。家具のすき間に入っていかないように注意しましょう。
お手入れを忘れずに
ブラッシングなどのお手入れも欠かせません。短毛のイングリッシュなら週に1回程度、長毛種は毎日ブラッシングをしましょう。長毛種のモルモットは、定期的に毛をカットしてあげてください。
基本的にお風呂は必要ありませんが、お尻周辺が汚れたときは小動物用シャンプーを使って手早く洗いましょう。
水に濡れるのを嫌がるモルモットには、ドライシャンプーやドライシャンプーをセットできるブラシもあります。
モルモット飼育の注意点

モルモットを飼う際は、次の点に注意してください。命にかかわることもあるので、飼い主さんはしっかりチェックしましょう。
暑さに弱いので温度管理に注意
アンデス山脈の高地原産のモルモットは、湿気と暑さが大の苦手。夏は冷房を入れて24℃程度に設定し、涼しい環境を保ちましょう。湿度は50%程度が適切です。
暑さに弱い一方で、真冬の10℃以下の環境もモルモットの負担になるため、ペット用ヒーターなどの保温グッズを用意するとよいでしょう。
ケージはこまめに掃除する
モルモットはトイレを決めません。ケージ内のあちこちで排泄するため、こまめな掃除が必要です。尿の匂いが強いため、床材の汚れは毎日取り除きましょう。定期的にケージ全体を掃除すると清潔に保てます。
野菜や果物はほどほどに
モルモットは生野菜や果物を喜んで食べますし、ビタミンC補給にもなります。ただし、食べ過ぎは肥満を招くため、たまのお楽しみ程度にしておきましょう。
なお、玉ねぎやニンニク、ニラなどはモルモットには与えないでください。チョコレートやクッキーなどのおやつもNGです。
ビタミンC欠乏に注意
モルモットは、自分でビタミンCを作れない動物です。モルモットの専用フードにはビタミンCが配合されているため、基本的に別途与える必要はありません。
ただし、保管状況によってはビタミンCが破壊されてしまうことがあります。封を開けて長期保存するのはNGです。ビタミンCが足りなくなると食欲不振や歯茎の出血などを引き起こします。
体調不良が見られたら、動物病院を受診しましょう。
給水ボトルの先がつまりやすい
給水ボトルの先がつまらないように、毎日チェックしましょう。モルモットは口の中でエサと水を混ぜて食べる習性があり、給水ボトルの先が汚れてつまりやすくなります。
歯の伸びすぎに注意
モルモットの歯は、生涯を通じて伸び続ける「常生歯」です。牧草やかじり木で自然に削られますが、やわらかいフードばかりだと歯が伸びすぎて不正咬合を起こします。飼い主さんだけではチェックするのが難しいため、獣医師に定期的に歯を診てもらうようにしましょう。
まとめ

アンデス山脈原産のげっ歯類、モルモットはおとなしく穏やかな性格でペットに向いています。本来は群れで暮らす動物なので、ケンカが生じにくいメス同士などの多頭飼育をおすすめします。
フードは、モルモット専用フードと牧草を用意してあげましょう。モルモットは草食動物であり、主食は牧草です。ビタミンC補給のために専用フードを与えます。
暑さには弱いため、夏は冷房を入れてあげましょう。あちこちで排泄するので、床材のこまめな掃除も必要です。
怖がりなところもありますが、やさしく接していれば人にも慣れてくれます。適切な飼育で、モルモットとの生活を楽しんでくださいね。



















































