飼育放棄や迷子など、さまざまな理由で所有者がいない犬たちを支える保護犬活動への関心が近年高まっています。しかし、保護犬活動は犬の特性上どうしても人の手が必要になる場面が多く、保護猫活動とは異なる難しさがあります。
この記事では、犬が保護される経緯や、保護猫との活動の違い、譲渡の流れ、さらに一時預かりやボランティアなど飼う以外の関わり方まで幅広く紹介します。保護犬に関心がある方が、自分に合った一歩を踏み出せるきっかけになれば幸いです。
この記事の目次
犬たちが保護される経緯

保護犬とは、さまざまな事情で自治体や民間の保護施設、個人宅などで一時的に保護された犬のことです。保護される理由で最も多いのは、以下のような飼い主の事情による飼育放棄です。
- 飼い主の高齢、病気
- 経済的困難
- 引っ越し
- 問題行動への対応ができない
その他にも、
- 繁殖業者からの引取
- 虐待や飼育放棄の現場からの救出
- 迷い犬、野犬の保護
といった理由もあります。
保護される頭数
環境省の統計によると、令和5年度に自治体が引き取った犬は約1.9万頭ですが、これには保護団体や個人ボランティアが直接保護する犬は含まれていません。実際に保護されている犬は、この数字よりずっと多いと考えられます。
保護犬活動と保護猫活動の違い

保護犬と保護猫の活動は、どちらも「行き場を失った命を守る」という点は同じです。しかし、現場で抱えている課題には大きな違いがあります。
保護犬活動が保護猫活動と比べると広がりにくい理由は主に次の3つです。
- 保護される犬の頭数がそもそも少ない
- スペース・管理の負担が大きい
- 信頼関係の再構築に時間が必要なケースがある
それぞれ解説します。
保護される犬の頭数がそもそも少ない
野良犬や迷子犬などの所有者がわからない犬は、狂犬病予防法により行政が保護して収容しなければなりません。そのため、犬は外で自然繁殖することが少なく、猫のようには数が増えにくいという背景があります。
つまり、犬の場合は、猫のように個人やボランティアが「外にいる猫を保護して増えすぎを防ぐ」という形にはなりにくいのが現状です。
スペース・管理の負担が大きい
一般的に、犬は猫よりも体格が大きく、散歩や最低限のしつけなどの管理が必要です。このため、保護スペースの確保やボランティアの負担が大きく、個人や小規模の団体が積極的に保護を行うにはハードルが高くなります。
信頼関係の再構築に時間が必要なケースがある
保護されるまでの過程で、人を怖がったり基本的なしつけが身についていなかったりする犬もいます。そのため、譲渡に向けて、しつけの見直しやトレーニング、信頼関係を築きなおす時間が必要になることもあります。
このように、犬特有の性質や生活習慣が、保護犬活動の広がり方にも影響しています。とはいえ、行政とボランティアの協働やSNSでの啓発が進み、「保護犬を家族に迎える」という選択は確実に広がりつつあります。
保護犬を迎える方法

保護犬を迎える方法は、主に以下の3つです。
- 保護団体・シェルターからの譲渡
- 譲渡会
- 個人ボランティア経由
飼い主の負担は犬の体型や性格で大きく変わります。できれば、多くの候補から自分に合う犬を選べる保護団体や譲渡会を利用する方が、よい出会いにつながります。
譲渡に係る費用
多くの保護団体では、譲渡前に最低限の医療処置(混合ワクチン・避妊去勢・検査)を済ませています。そのため、これらの医療費は「譲渡費用」として里親が負担するのが一般的です。相場は1〜5万円です。
保護犬を迎える前に考えたいこと

保護犬を迎える際は、「保護犬ならでは」の背景や心のケアを理解することが大切です。以下のポイントをしっかり確認しておきましょう。
- 犬の過去や性格を理解する
- しつけ・生活リズムの構築は焦らずゆっくり行う
- 医療ケアは必ず確認する
それぞれ解説します。
犬の過去や性格を理解する
犬が保護された理由にはさまざまな背景があります。過去に虐待や放浪経験のある犬は、人を怖がったり、環境に慣れるまで時間がかかるケースも。
「すぐに懐かない」「吠える」といった行動も、心の傷の表れとして理解してあげることが大切です。譲渡前には保護主や団体から、それまでの経緯や性格をしっかりと聞き取っておきましょう。
しつけ・生活リズムの構築は焦らずゆっくり行う
保護犬は、これまで過ごしてきた環境や経験が1頭ずつ違います。飼い主が変わったことに戸惑い、引き取ってすぐはハウスから出てこなくなったり、粗相をしてしまうこともあります。
保護犬が新しい環境に慣れるには時間が必要です。最初は思い通りにならないことがあっても叱るのではなく、落ち着ける場所や生活の流れをゆっくり整えてあげましょう。
医療ケアは必ず確認する
譲渡前後に必要となる医療ケアには、以下のような処置が含まれます。
- 各種ワクチン接種
- 避妊・去勢手術
- フィラリア検査・予防
- ノミ・ダニの駆除
- マイクロチップ登録
これらの処置について、「誰が費用を負担するのか」「すでに済んでいるのか」を事前に確認しておきましょう。
飼う以外の方法で保護犬活動に関わる方法

保護犬活動は「飼うこと」だけではありません。時間・環境・スキルに応じて、以下のような形で支援に関わることができます。
- 一時預かりボランティア
- 施設でのボランティア
- 寄付・物資支援
それぞれ解説します。
一時預かりボランティア
譲渡前の犬を一定期間家庭に預かり、日常生活に慣れるためのサポートを行う活動です。一般家庭で生活することは、子犬や人馴れが不十分な犬に経験を積ませるために重要な役割を果たします。「飼うのは難しいが、短期間だけなら関わりたい」という人にも向いています。
施設でのボランティア
保護施設での清掃・給餌・散歩・トレーニング補助・SNS発信など、自分の得意な分野を活かして保護犬活動を支える方法です。犬と直接関われるため、保護犬活動の理解が深まるきっかけになります。
寄付・物資支援
犬を飼っていなくてもできる継続的な支援です。物資や資金はシェルター運営の大きな支えとなります。
まとめ

保護犬活動とは、さまざまな事情で行き場を失った犬を保護し、新しい家族との出会いにつなぐ取り組みです。
保護犬活動は、飼育に広いスペースが必要であることや、散歩やしつけなど日々のケアに人手が欠かせないといった理由で、保護猫活動よりも負担が大きくなりがちです。また、犬は人との信頼関係を大事にする動物なので、過去の経緯で心に傷を負い、譲渡までに時間を要するケースもあります。
保護犬を迎えるときには以下の点を意識していただきたいです。
- その犬が保護された経緯を理解する姿勢
- 焦らず犬との信頼関係を育てること
- 最期まで責任を持つ覚悟
保護犬の行動には、これまでの経験が影響していることがあります。「なぜこの行動をするのか」を考え、犬に寄り添う姿勢を見せてくれることが、犬にとって安心につながります。焦らず、その子のペースに合わせて信頼関係を築いていってください。
また、保護犬を飼えなくても、一時預かり、施設ボランティア、寄付や物資支援などで保護犬活動に参加する方法もあります。興味はあるけれど犬を迎えるのは難しいという方も、無理のない形で力を貸すことができます。
それぞれができる形で保護犬たちに手を差し伸べていただけると幸いです。






































