【獣医師監修】肥満猫は要注意!猫の肝リピドーシスとは

2026.04.18
【獣医師監修】肥満猫は要注意!猫の肝リピドーシスとは

猫で注意したい疾患の一つに肝リピドーシスという病気がありますが、皆さんはこの疾患をご存じでしょうか。横文字で難しく考えてしまいがちですが、これはいわゆる「脂肪肝」のことです。

ヒトの脂肪肝は生活習慣病のイメージがあると思いますが、猫の場合はどうでしょうか。今回は、猫の肝リピドーシスについて解説します。

この記事の目次

肝リピドーシスとは

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肝リピドーシスは様々な原因により脂質代謝が障害され、肝臓に過剰な脂肪が蓄積する疾患です。

肝臓でエネルギーとして用いられない脂肪は、超低比重リポ蛋白質(VLDL)として脂肪組織に運ばれます。蛋白質が十分に摂取できない状態では、VLDLの合成に必要なアポ蛋白質の合成障害が起こり、肝臓から脂肪組織への脂肪の運搬が障害されます。

その結果、肝臓に過度の脂肪が蓄積することになります。

なお、猫の肝リピドーシスは、胆管炎、膵炎、糖尿病などの基礎疾患が明らかな二次性肝リピドーシスと、基礎疾患が明らかでない特発性肝リピドーシスがあります。

肝リピドーシスの原因

肝リピドーシスは単一の原因による疾患ではなく、多くの症例で何らかの基礎疾患が存在します。

肝リピドーシスは肥満の猫に多く発生しますが、その肥満度に比例して脂肪組織から放出される脂肪酸は増加し、この脂肪酸の約3分の1は肝臓に取り込まれます。ここに食欲不振や栄養素の不均衡などの要因が加わると、肝臓へのさらなる脂肪の蓄積や脂肪の運搬障害が起こります。

猫の場合、胆管炎・胆管肝炎、肝外胆管閉塞、糖尿病、心筋症、炎症性腸疾患、膵炎、甲状腺機能亢進症、慢性腎不全、重度貧血などが、食欲不振の原因となることが多いです。

好発猫種

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品種による発生率の差はありませんが、メスはオスの約2倍発生率が高いという報告があります。
また、前述したように肥満猫で多く発生します。

症状

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肝リピドーシスでは、以下のような症状が見られます。

  • 急激な体重減少
  • 食欲不振
  • 元気消失
  • 嘔吐
  • 下痢
  • 流涎
  • 黄疸
  • 痙攣、発作(肝性脳症)

これらの臨床徴候は肝リピドーシスに特異的ではなく、また、原因となる基礎疾患とも症状が重なることも多くあります

診断

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肝リピドーシスの診断は、まず血液検査と画像検査を行います。その後、肝臓の数値等から細胞診や生検へと検査を進めていきます。

また、原因となっている基礎疾患が何なのかも確認します。

全血球算定(CBC)

軽度の貧血や好中球増加を示す場合があります。

血液生化学検査

ほとんどの症例で高ビリルビン血症が見られます。また、ALP活性の上昇、ALTおよびASTの上昇も見られます。

さらに、30%の症例で低カリウム血症が認められます。

画像検査

超音波検査にて肝外胆管閉塞や肝臓内腫瘍などとの鑑別を行います。

肝リピドーシスにおける超音波検査では、肝腫大および肝実質のびまん性エコーレベルの上昇が見られ、胆管壁の肥厚や胆嚢の異常は観察されません。

また、X線検査では肝腫大が確認できます。

細胞診

エコーガイド下での針生検にて、肝リピドーシスの診断が可能です。炎症細胞はなく、細胞質内に大小の脂肪滴を多量に含む腫大した肝細胞が多数認められます。

しかし、これ以外の変化が見られなくても、他の肝疾患が同時に存在している可能性は否定できないため、治療開始から1週間が経過しても状態が改善しない場合は肝生検を行い、病理組織学的検査を実施します。

治療

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肝リピドーシスの治療は、基本的に入院下にて行います。

静脈点滴や強制給餌によって全身状態を回復させ、同時に基礎疾患の治療や合併症の予防を行います。

食事療法

肝リピドーシスの治療には、適切な栄養補給と電解質および酸-塩基平衡の是正、脱水の補正が必要となります。自力での食事ができない場合は、強制給餌や鼻カテーテルの挿入が必要になることもあります。

栄養補給には良質な蛋白質が必要であり、肝性脳症の症状が現れている場合以外には、蛋白制限を行うべきではありません。

サプリメント

タウリンやL-カルニチンの添加が肝機能を補助します。

基礎疾患の治療

二次性肝リピドーシスの場合、基礎疾患に対する治療が重要となります。
輸液や投薬による内科療法を行い、食欲不振の原因となる疾患を除去します。

予後

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積極的な早期治療によって、肝リピドーシスの猫の約60%が回復します。年齢が若く、貧血や低カリウム血症が起こっていない症例で生存率が高いという報告があります。

また、二次性肝リピドーシスよりも特発性肝リピドーシスの方が予後が良いとされています。

予防

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肝リピドーシスは肥満の猫での発生が圧倒的に多いため、日頃の体重管理は肝リピドーシス発生の予防につながります。一方で、ダイエットのためとはいえ食事量を急激に減らすことは避けましょう

日常の食事量を観察し、食欲不振の徴候が現れたら動物病院を受診してください。

まとめ

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猫が食欲不振に陥ったときには、まず肝リピドーシスの発症を考える必要があります。愛猫の食欲については、少し気にかけてあげた方がいいかもしれません。

また、基礎疾患に続発しない特発性の肝リピドーシスもあるので、生活の中で何か異常があれば、すぐに動物病院まで相談してください。

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